第2話「将来への一歩と、それぞれの選択」
春の風が心地よく吹く午後――。
悠真は大学の講義を終えたあと、学生ホールの窓際に座っていた。
ノートパソコンの画面には、いくつもの求人サイトが並び、
「自己PR」や「エントリーシート」の文字が並ぶ画面を前に、眉をひそめる。
「……そろそろ、ちゃんと考えなきゃな」
就職活動。
大学4年生という現実は、日常の背中にじわじわと迫っていた。
「夢とか、将来とか……何が向いてるのかなんて、今もよく分かんないや」
ふと、美紅の顔が思い浮かぶ。
彼女のように確かな仕事と信念を持って生きる姿は、悠真にとって大きな支えであり、プレッシャーでもあった。
◇
帰宅すると、リビングには香ばしい匂いが広がっていた。
「おかえりー、今日は早かったね」
キッチンから瑞稀の明るい声が響く。
「お姉ちゃん、今日も美味しそうだね」
「今日はね、美紅ちゃんのリクエストで“春野菜とチキンのクリーム煮”にしてみたんだよ」
ソファに座ると、奥の部屋から美紅が出てきた。
ラフなニットにまとめ髪というオフの姿。それでも洗練されていて、悠真の目にはいつも眩しく映る。
「おかえり、悠真くん。……疲れてる?」
「うん、まぁ……就活、ちょっとずつ始めようかなと思って」
すると美紅は、そっと彼の隣に腰を下ろして、手を握った。
「ねえ、悠真くんは“何になりたい”って、あるの?」
「……正直、ない。だけど、誰かを支えられるような仕事がいいなって思ってる」
「ふふ、それ、悠真くんらしい」
その声に、少し肩の力が抜けた気がした。
◇
食後――
瑞稀は後片付けをしながら、ふとリビングを振り返る。
「そういえば、美紅ちゃん、今度のCM撮影って……また悠真も一緒なの?」
「ううん、今回は私だけ。でも……次の企画で“夫婦出演”の話が来てるの」
「それって……また、世間から騒がれそうじゃない?」
「でも、もう覚悟はできてる。
“モデル・篠原美紅”としてじゃなくて――“悠真くんの妻・美紅”としても、見てもらいたいの」
その言葉に、悠真も頷いた。
「一緒に歩むって、そういうことだよな」
◇
夜――
ベッドに入り、照明を落としたあとの静寂のなか。
「ねぇ、悠真くん」
「ん?」
「……もし、就職決まったら……そのとき、ちゃんと“子ども”のこと、話そう?」
「……うん。必ず、そのときは覚悟決めて言うよ。
俺が“父親になる”って、ちゃんと決めたときに」
「……楽しみにしてるね」
布団のなかで手を重ねながら、
ふたりの時間は静かに、未来へと伸びていった。
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