第9話「将来を見つめて、語られた願い」
大学3年の冬――。
進級に必要な単位取得の最終期間が迫る中、悠真は昼も夜も必死に授業に出席し、課題と向き合っていた。
「神谷くん、レポート、だいぶ詰めてきたね。あと少しだ」
「ありがとうございます。あと3科目……絶対に落とせませんから」
悠真は静かに気合を込めて答えた。
すでに彼の頭の中では、3月末の“修了判定”の日を何度もシミュレーションしていた。
その間、美紅も同じように、日々の撮影に忙殺されていた。
そんな中、偶然にも瑞稀と美紅が同じ撮影現場で一緒になる日があった。
◇
控え室。照明機材が調整される間、二人は珍しく“姉妹だけの時間”を過ごしていた。
瑞稀がふと、美紅に尋ねた。
「……ねえ、美紅さん。
悠真の“将来”って、どんな風になってほしいと思ってる?」
美紅は、一瞬驚いたような顔をした後、そっとカップを手に取った。
「うーん……俳優でも、会社員でも、どんな道でもいい。
ただ、悠真くんが“自分で選んだ道”を歩んでほしいなって思ってる」
「“自分で選んだ道”か……」
瑞稀はその言葉を、何度も頭の中で反芻した。
弟として、そして、夫として――悠真はこれからどう生きていくのか。
「でも、私としては、できれば……この業界で頑張ってほしいな。
たとえば、CMとか、映画とか。
私と一緒にお仕事ができたら、それってすごく嬉しいことだから」
「……なるほどね。
悠真のこと、ちゃんと見てるんだね」
美紅は少しだけ微笑んだが、その視線の奥には確かな“真剣さ”があった。
「それに、きっと、悠真くんって――
『家族』を守る人になっていくと思うの。
一緒にいて、そう思えるから」
◇
その夜。
悠真が課題を終えて部屋でくたびれていたところ、
そっと扉をノックして入ってきたのは、瑞稀だった。
「お疲れ。……ちょっと、いい?」
「うん。何かあった?」
瑞稀は部屋の椅子に腰を下ろし、真剣な眼差しで悠真を見つめた。
「今日ね、美紅さんと一緒の現場だったの。
それで、あの子が言ってたよ――
“悠真くんには、自分で選んだ道を歩んでほしい”って」
「……」
「俳優でも、違う仕事でもいいって。
でも、できれば一緒にCMや映画に出られたら嬉しいとも言ってた」
悠真は、ゆっくりと息を吐いた。
「……美紅さん、そんなことまで考えてくれてたんだ」
「そう。ちゃんと、悠真の“人生”を考えてくれてる。
だから私も、心配してる反面、安心したの。
あんた、いい奥さん持ったね」
悠真は恥ずかしそうに笑って、深く頷いた。
「ありがとう、姉ちゃん。
俺……進級して、ちゃんと自分の道を見つけるよ」
◇
美紅の部屋では――
鏡の前でメイクを落としながら、
彼女もまた、今日の瑞稀との会話を思い返していた。
(“家族を守る人”か……悠真くんなら、きっと大丈夫)
そう心の中でつぶやきながら、
手のひらをそっと自分の胸に当てた。
悠真と歩む未来。
それは、まだ始まったばかりの、ふたりだけの物語だった。
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