第8話「休日のデートと、それぞれの想い」
――日曜日。
都内では珍しく、柔らかな陽光が朝から降り注いでいた。
この日は、美紅も瑞稀も、それぞれの“特別な一日”を過ごしていた。
◇
午前10時、某シネコン前。
待ち合わせに現れたのは瑞稀と、外部スタッフの**桐山尚吾(31歳)**だった。
「……ごめん、待った?」
「いや、俺もさっき来たとこ」
いつもは職場で会うふたり。
こうして休日に“私服”で会うのは、これが初めてだった。
瑞稀はデニムジャケットに白のワンピースというシンプルな装い、
尚吾は落ち着いた色合いのシャツに、ベージュのカーディガン。
どこか“等身大”の空気が、二人の間に流れていた。
「観たいって言ってた映画、まだやってて良かった」
「ね。ああいう実話ベースの作品って、泣けるよね」
映画が終わった後、美術館へ。
現代アートの展示室では、静かな空間で言葉よりも視線を交わしながら、
互いの感性を少しずつ確かめていった。
館内のカフェで休憩中――
「……なんか不思議。こうやって尚吾くんと話すと、
“背伸びしなくてもいい”って思える」
「俺も。瑞稀さんって、意外と感情表現が苦手なのかなって思ってたけど……。
今日の君は、すごく自然体で素敵だよ」
瑞稀は照れ隠しにコーヒーを一口飲んで、微笑んだ。
「……それ、素直に嬉しいかも」
◇
一方その頃、大学では悠真が講義に出席していた。
(姉貴、今日は確かデートって言ってたっけ……)
講義内容に集中していたつもりでも、
ノートにペンを走らせる手がふと止まり、
心の片隅で瑞稀の“恋愛”に想いを馳せる。
――姉ちゃんも、俺と同じように「誰かと家族になる」道を選ぶのか。
そんな未来が、もうすぐそこまで来てる気がした。
◇
また、別の場所――都内のスタジオ。
CMと雑誌撮影の“ダブルブッキング現場”に美紅の姿があった。
撮影は滞りなく進行していたが、
控室でメイク直しをしていた美紅の表情は、どこか上の空だった。
(……瑞稀さん、朝すごく丁寧にメイクしてたな。
やっぱり今日は、大切な人と会うんだ)
美紅はふと、鏡越しに自分の顔を見つめ直す。
綺麗に仕上げられたその顔に、自信と、少しの不安が映っていた。
(私たちは“交際0日婚”だったけど――
瑞稀さんはちゃんと「恋」を始めてる。
……それって、すごく素敵だな)
◇
夜――
瑞稀は自宅のベランダで、今日撮った写真をスマホで見返していた。
隣の部屋では、美紅がシャワーを浴びている音。
悠真はまだ講義レポートをまとめていて、リビングには静寂が広がっていた。
(“少しずつ”って、案外いいかもしれない)
そうつぶやいた瑞稀の口元には、これまでにない温かい笑みがあった。
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