第7話「飲み会とガールズナイト、それぞれの夜」
大学の期末レポートが終わった打ち上げとして、
都内の居酒屋には100人を超える学生たちが集まっていた。
男子も女子も、3年生から1年生まで。
悠真の通う文学部では毎年恒例となっている、“全学年合同飲み会”。
副幹事を務める親友・航は大忙しで、あちこちを動き回っていた。
悠真はというと、入口付近で落ち着いた席に腰を下ろし、
頼んだのはレモンサワー一杯だけ。
麦酒や日本酒、強いアルコールにはあえて手を出さなかった。
航に耳打ちしていた。
「……悪い。幹事の景さんに、“無理に飲ませないで”って伝えてもらえる?」
「もちろん。あいつ、そういうとこちゃんとしてるから安心しな」
◇
飲み会が始まって30分ほど経った頃――
幹事の**景**が声を張り上げた。
「えーっと、ちょっとみんな聞いてくれー!
今日の主役の一人でもある、俺たちの後輩・神谷悠真くん!」
注目が集まる中、悠真は少しだけ恥ずかしそうに立ち上がった。
「実はこの悠真、なんと……既婚者なんです!」
ざわっ……と場内が揺れる。
「えっ?」
「まじで? 誰と?」
「え、嘘だろ?」
「相手は……なんと、あのトップモデルで今話題の女優!
篠原美紅さんです!」
再びどよめき。グラスを落としそうになる者、口をあんぐり開ける者。
歓声と驚きの声が飛び交う中、悠真は少しだけ頭を下げた。
◇
少し離れた席では、同級生の**一樹**が腕を組みながら黙っていた。
(……まだ、納得いかない)
彼の背中をバシン、と叩いたのは千帆。
隣には叶恵もいた。
「もう、流石に理解しなよ。一樹」
「テレビで見る美紅さんを、どうやって奪うつもり? 現実見なきゃ」
「だいたいさ、悠真くんはちゃんと彼女を守ってるじゃん。見てて分かるよ」
それでも一樹は黙ったまま、視線をグラスの中へ落とした。
――だが、彼の目元には、どこか吹っ切れたような陰も見えていた。
ちなみにこの3人、三つ子の兄妹だということが、今日初めて周囲に知られたのだった。
◇
会場の他の席でも――
後輩の祐太、悠馬、悠輔、祐希たちは驚きを隠せないでいた。
特に蓮、冬夜、和也の三人は、まったく事情を知らなかったらしく、ただただ「マジで!?」と連呼していた。
「あの神谷さんが、あの人と……」
「え、ちょっと待って……結婚って、マジの結婚!?」
「うちの部の伝説になるぞこれは」
一方、女の子たちは比較的落ち着いていた。
茜、灯里、詩織、栞は、すでに知っていた組。
他にも、アルバイトで来られなかった稚華、千佳、千歌も後から知ることになる。
菜穂と奈緒は遅れて参加する予定だったが――
今この瞬間、店の入口前で驚きながらグループLINEの通知に目を通していた。
「えっ、悠真くんが結婚してるって!?」
「うそ……私、知らなかった……!」
◇
その頃、自宅では――
瑞稀と美紅、ふたりきりの**“ガールズナイト”**が進行していた。
テーブルには簡単なおつまみ。
グラスには梅酒のロックと、ジンジャーエール。
リビングのテレビでは、流行の韓国ドラマが映し出されている。
「……これ、すごいね。なんでこんなに胸キュンするんだろ」
「韓国ドラマの演出力って、本当にすごいんだよ。キスシーンの溜めとか、もうずるいもん」
「ふふ、確かに。でも……お姉さんは、リアルでもそろそろ進展ありそう?」
瑞稀はドラマから視線を外して、少しだけ口元をゆるめた。
「うーん……結婚はまだ先かな。デートはもう少し、積み重ねてから。
でも、あの人となら――ありかも、って最近は思う」
美紅は嬉しそうに頷き、ワインのグラスを掲げた。
「じゃあ、それを祝って……乾杯?」
「いいね。じゃ、“恋の途中”に乾杯」
「“恋の途中”に、乾杯」
グラスが優しく鳴り響く音は、まるでふたりの夜を祝福する鐘のようだった。
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