第6話「ふたりの夢、CM撮影と未来のすれ違い」
日差しが少しだけ和らぎ始めた秋の午後。
とある都内の撮影スタジオでは、美紅と悠真が並んで立っていた。
今回の仕事は、“夫婦役として共演するCM”。
スーツ姿の悠真が、美紅の肩を抱き、優しく微笑むというワンカット。
元々は美紅単独の仕事だったが、事務所社長の提案で、
「ご主人にも出演していただけたら“話題性”にもなるわよ」
という流れから、夫婦そろっての出演が決まったのだ。
「……ねぇ、悠真くん。肩、力入りすぎ」
「ご、ごめん……慣れてなくてさ。カメラの前に立つのって、やっぱ緊張する」
「ふふ、大丈夫。私の顔だけ見てれば、いいんだから」
そう言って微笑む美紅の笑顔は、まるでプロの女優のように柔らかで、美しくて。
悠真はふと、“この人は、きっともっと上に行く人なんだ”と思った。
◇
休憩中。ふたりはメイクルームで並んで座っていた。
「悠真くん、最近……大学どう?」
「うん。講義もサークルも忙しいけど、楽しいよ。
でも……たまにちょっとだけ、不安になることがある」
「不安?」
「美紅さんと比べたら、俺ってまだ“何者でもない”じゃん。
美紅さんは、モデルであり、女優としても認められてる。
俺は、大学生で、演技経験もCMと学園祭の演劇ぐらい。
このまま君の隣にいていいのかな、って」
美紅は、鏡越しに悠真の目を見た。
「……何者かでいることが、大事だとは思わないよ。
私はね、悠真くんが“誰かの真似じゃない自分”でいてくれることが、いちばん嬉しいの」
そして、美紅はそっと自分の指を重ねた。
「でも……不安を抱えながらでも、私の隣にいたいって思ってくれるなら。
その気持ちだけで、私は十分だよ」
◇
撮影は無事に終わった。
CMの最後のカット、悠真が美紅の額にキスをする瞬間――
撮影スタッフが思わず「おお……」とため息をもらすほど、自然で、そして愛が溢れていた。
だが、撮影後。
帰りの電車の中で、悠真は小さくつぶやいた。
「……やっぱり、もっと頑張らなきゃな。
“美紅の夫”じゃなく、“神谷悠真”として認められるように」
その声に、美紅はそっと頷いた。
彼の努力を、誰よりも近くで知っているからこそ、
“支えたい”と思えるのだと、あらためて思いながら。
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