第5話「妹と弟との再会、美紅の“もうひとつの家族”」
午後の大学。
悠真は親友の航、圭吾、憲剛と共に、次週のゼミ発表に向けて資料を整理していた。
「ここの論点、もう少し深掘りしたほうがいいよな」
「いや、それより事例を加えた方が説得力あるかも」
真面目なやりとりが続く中、悠真のスマートフォンが振動した。
画面には、美紅からのLINE通知。
《今日終わったら時間ある?妹と弟に会わせたいんだけど…》
悠真の顔が少し緩んだのを見て、航がニヤリとする。
「また奥さん? 既婚者ってやっぱ違うなぁ」
ちょうどそのとき、教壇に立っていた教授がやんわりと声をかけてきた。
「神谷くん。電話が必要なら席を外しても構わないよ」
その瞬間、教室内は小さな笑いとざわめきに包まれた。
「ヒューヒュー!」
「悠真、また奥さんとラブラブか?」
「そうだよなぁ…だって奥さん、あの篠原美紅さんだもんな」
「後でノート見せるから、ゆっくり話してきな」
悠真は苦笑しながら教室を出た。
扉の外で電話をかけると、美紅の明るい声がすぐに聞こえてきた。
「もしもし、悠真くん。LINE見てくれたよね?」
「ああ、見た。今日、終わったら連絡するよ」
「うん。実はね、妹と弟と約束してて……今日、悠真くんに会わせたいって。
お姉ちゃんの旦那さんを見てみたいんだって」
「了解。授業終わったらすぐ向かうよ」
電話を切り、教室に戻ろうとした悠真だったが、ちょうどそのタイミングで授業は終了していた。
航が教室の外で手を振っていた。
「終わったぞー。…で、デートか?」
「いや、ちょっと美紅の妹と弟に会いに」
「おお、ついに“義理のきょうだい”初対面か。
俺、今日の飲み会パスしとくって幹事に言っといてやるから、しっかり挨拶してこい」
さらに他の男子たちからも、
「ノート、あとで写メ送ってやるよ!」
「任せろ、講義内容バッチリだ!」
と頼もしい言葉が続々と届き、悠真は感謝しながら大学を後にした。
◇
待ち合わせ場所の駅前ベンチには、美紅と、その隣に並ぶふたりの子どもがいた。
中学生の妹、紬。
そして小学生の弟、光。
ふたりは、少し照れたような顔で悠真を見上げる。
「この人が……お姉ちゃんの旦那さん?」
「……普通だね」
「テレビで見たときの方がかっこよかったような……」
その言葉に、思わず悠真は苦笑し、美紅がすかさずツッコミを入れた。
「ちょっと、あんたたち! そんなこと言っちゃダメでしょ」
「えーだって本当のことだもん」
「でも、優しそうではあるよね」
悠真は膝を折ってふたりの目線に合わせた。
「はじめまして。神谷悠真です。お姉ちゃんを、これからも大切にします。
……ふたりとも、お兄ちゃんって呼んでくれるとうれしいな」
すると、紬と光は顔を見合わせて、少し照れたようにお辞儀をした。
「よろしくお願いします、お兄ちゃん」
「……ま、悪い人ではなさそうだし、いいよ」
そのやりとりを見ながら、美紅はほっと息をつき、少しだけ目を潤ませていた。
父親とはもう暮らせない。
それでもこうして、愛する夫と、別の場所で育った妹と弟が「家族」として繋がり始めている――
それが、彼女にとって何よりも温かな奇跡だった。
「ありがとう、悠真くん。今日、会わせてよかった」
悠真は、そっと美紅の手を握り返した。
「こっちこそ。紬ちゃんも、光くんも、すごくいい子たちだね」
「……うん。大切な家族だから。あなたにも知ってほしかった」
その帰り道、4人は並んで歩いた。
まるで、“もう一つの家族”がそこに、自然と形作られていくように。
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