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『姉の同期が“推しモデル”でした。――交際0日婚…君に憧れて、君と結婚することになった夜。』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『姉の同期が“推しモデル”でした。――交際0日婚から始まった日々と、姉の恋が動き出した朝』
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第4話「瑞稀と尚吾、ふたりだけの夜景デート」



その日、撮影の終わりに尚吾がぽつりと訊ねた。


「……ちょっと夜、空いてる?」


瑞稀は一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに口元をゆるめた。


「別に予定はないけど?」


「じゃあ、行きたい場所があるんだ。ついてきてくれる?」


「……まさか、いきなりプロポーズじゃないでしょうね?」


「それはさすがに早すぎるでしょ」


ふたりはそう言って笑いながら、車に乗り込んだ。



尚吾が運転する車で到着したのは、都内から少し離れた高台の展望台だった。

季節は初秋、少し冷たい風が吹く丘の上。眼下には宝石を散りばめたような夜景が広がっていた。


瑞稀はしばらく黙ったまま、その景色を見つめた。

そして、ふと尚吾の横顔に目をやる。


「……ねぇ、どうして私をここに?」


「君に、“余白”を感じてほしくて。

瑞稀さんって、いつも完璧で真っ直ぐで、自分のことを後回しにしてる気がして……。

だから、たまには“何も考えなくていい場所”をプレゼントしたかった」


その言葉に、瑞稀の心がほんの少し、ほどけていくのが分かった。


「……ありがと。そんなふうに言われたの、初めてかも」


「ほんとは、もっと手前で告白しようかと思ってた」


「は?」


尚吾は、少し照れたようにポケットから小さな箱を取り出した。


開けるとそこには、ペアのシルバーリング。

宝石ではなく、きらめきも控えめな、日常に馴染む細身のデザイン。


「これ、まだ“指輪”じゃないよ。ただのアクセサリー。

でも、いつか指輪になるかもしれない――その“途中”の気持ちを、持っていてくれない?」


瑞稀は数秒だけ黙ったあと、笑った。


「交際0日婚は嫌って、ちゃんと言ったわよね?」


「もちろん、覚えてる。だからこれは、“恋の途中”の証」


「……ふふっ。そうね。もらっておくわ」


リングを指に通した瑞稀の横顔は、これまでに見せたことのないような、柔らかい表情だった。



帰りの車内。


ラジオから流れる音楽に耳を傾けながら、尚吾がぽつりとつぶやいた。


「俺さ、最初は君のこと“怖い”と思ってたんだ。

でも今は――一緒にいると、すごく落ち着く」


「ふふ、私も。

こんな夜景を見て、“きれい”って素直に思えるようになったの、たぶん……あなたの隣だからだと思う」


小さな“恋の前提”が、ふたりの間に確かに生まれていた。



その夜、自宅に戻った瑞稀は、悠真と美紅に言った。


「……私ね、今、誰かを“好きになる途中”なんだと思う。

でも、きっとこれ、ちゃんと本物になる気がする」


悠真は微笑み、美紅は優しく頷いた。


「……きっとね、瑞稀さん。今のあなたなら、ちゃんとその恋を育てられるよ」


瑞稀はリングに触れながら、静かに――けれど確かに微笑んだ。



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