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『姉の同期が“推しモデル”でした。――交際0日婚…君に憧れて、君と結婚することになった夜。』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『姉の同期が“推しモデル”でした。――交際0日婚から始まった日々と、姉の恋が動き出した朝』
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第2話「桐山さんと手をつないだ日」



事務所の撮影が一区切りついた休日の午後。

瑞稀は、約束していたとおり、桐山尚吾と都内の静かなカフェで待ち合わせをしていた。


彼とふたりで会うのは、これで3回目。

けれど、まだ“デート”と呼ぶにはお互い少しだけ気恥ずかしくて、それでもどこか、心地よい緊張感があった。


「今日は……このあとどうする?」

桐山がアイスコーヒーを飲みながら訊ねる。


「そうね……人の少ないところ、歩きたいかな。最近、現場か家の往復ばっかりだったから」


「じゃあ、公園でも行ってみる?」


「うん、いいね」


それだけで、小さな冒険が始まったような気がした。



初秋の木漏れ日が降り注ぐ並木道。

平日の午後だからか、ベンチには老夫婦がぽつりぽつりと座っているだけで、道は静かだった。


瑞稀と尚吾は、何も言わずに歩きながら、ゆっくりと時間を重ねていた。


「……瑞稀さん、最初は正直怖かったよ」


「え? なによ、いきなり」


「いや……君、完璧すぎてさ。現場でも無駄がなくて、誰にでも的確に指示を出してて。

なんていうか……“人の弱さを許さない人”なんじゃないかって、勝手に思ってた」


瑞稀は少し驚いた表情を浮かべ、立ち止まった。


「私……そんなふうに見えてたんだ」


「うん。でも、全然違った。今日みたいに笑う瑞稀さんとか……人の話を真剣に聞いて、うんってうなずく瑞稀さんとか。

見れば見るほど、“すごく普通に、優しい人”なんだって思える」


瑞稀は、口元にそっと手を当てて笑った。


「……あんたって、ほんと不器用よね。

でも、そういうところ……嫌いじゃないわ」


そしてふと、ふたりの手がすれ違った瞬間。

瑞稀が一歩だけ、彼のほうへ近づいた。


桐山も、何かを察したように、静かに手を差し出す。


その手を、瑞稀が握った。


恋人のように、ではなく。

けれど確かに、「今、少しずつ歩いている」という実感と共に。


「こうやって手をつないで歩くの、久しぶりかも」


「……俺も。けっこう緊張してる」


「……私もよ。こう見えて」


ふたりは歩幅を合わせながら、ゆっくりと歩いた。



その夜。

帰宅した瑞稀は、ソファで寛ぐ悠真と美紅に報告した。


「……あんたたちに、ひとつだけ報告。

今日、初めて手、つないだのよ」


「ええっ⁉︎」


「マジで!?」


美紅と悠真が同時に驚くと、瑞稀はちょっとだけ誇らしげに微笑んだ。


「だから言ったでしょ。私は“徐々に”進めたいの。

焦らずに、でも確かに。ひとつずつ積み重ねていく恋を、ちゃんとやってみたいって」


「……すごく、瑞稀さんらしいです」

美紅が優しく言った。


「でも、よかったね。

その手が、“未来につながってる”って信じられるなら、きっとその恋は正解だと思うよ」


瑞稀は頷いた。

そして、心の中でそっとつぶやいた。


――いつか、“あの人と一緒に未来を語れる日”がくるのなら。

私はちゃんと、自分の歩幅でそこへたどり着きたい。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。


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