スピンオフ第2話「恋をする勇気、愛を選んだ夜」
あの夜から、ふたりの関係は少しずつ変化していた。
撮影終わりに連絡を取り合い、
スケジュールが空いたときには、静かなカフェで本を読んだり、街を歩いたり。
瑞稀にとって、そんな“普通の時間”がこんなにも尊く感じる日が来るとは思っていなかった。
そして――ある金曜日の夜。
「……ごめん、遅れた」
桐山尚吾が息を切らして店に入ってきたのは、待ち合わせの時間から15分過ぎた頃だった。
「いいの、私もちょうど着いたところだから」
本当は10分前に着いていたけれど、そんな嘘も自然につけるようになっていた。
今夜は、美紅と悠真のCM撮影が無事に終わったお祝いも兼ねて、ふたりで少し特別な食事に来ていた。
グラスを重ね、乾杯の後。
「神谷さん。……今日、ちょっと言いたいことがあって」
「……うん?」
桐山は、いつものように控えめなトーンで、しかし真っすぐに見つめてきた。
「俺……瑞稀さんのこと、本気で好きになりました」
瑞稀の胸が、一瞬止まった気がした。
「最初は、美紅さんのスケジュール管理のやりとりで、ただ“仕事ができる人”って印象だったけど……
でも、話していくうちに、優しさも、芯の強さも、言葉にしない思いやりも――全部、好きになったんです」
「……そんなに、私のこと、見てたの?」
「はい。ずっと、見てました」
言葉のひとつひとつが、瑞稀の中に降り積もっていった。
そして――自分でも驚くくらい、自然に返していた。
「……私も。
“もう恋なんてこない”って思ってたのに……いつの間にか、貴方の言葉を待ってたのかもしれない」
静かなレストランの片隅で、ふたりはゆっくりと手を重ねた。
◇
その夜。
家に帰った瑞稀は、美紅と悠真に報告した。
「……実は、私にも……好きな人が、できました」
驚きと笑顔が重なったふたりに、瑞稀は少し照れながら続けた。
「私もね、いつか“交際0日婚”みたいな奇跡を起こしてみたいって思ってたのかも。
でも私の恋は、ゆっくり育てていきたい。――“この人となら、未来がつくれる”って思える人だから」
美紅は瑞稀の手を取り、そっと囁いた。
「瑞稀さんが笑ってるだけで、私たち、嬉しいよ」
悠真も頷く。
「姉貴……ずっと、応援する。俺たち夫婦より、先に子どもできたら報告よろしくね」
「……それはちょっと考えさせて」
笑い合いながら、瑞稀は心から思った。
――恋はいつだって、思いがけないタイミングでやってくる。
でも、それを受け止められるように、自分を信じて生きていれば――きっと、届く。
そして今、彼女はまた一歩踏み出す。
“神谷瑞稀”としての人生を、自分の愛と選択で。
この恋は、静かに確かに、未来へ向かっていた。
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