第9話「家族会議と、ふたりの未来設計」
土曜の午後。
都内の落ち着いた住宅街にある、神谷家の実家リビングには、久々に全員が顔を揃えていた。
父・誠一と母・静香、悠真と美紅、そして瑞希。
ダイニングテーブルの中央には、手作りの煮込み料理と香ばしいバゲットが並び、湯気の向こうにふたりの若い夫婦の姿が見える。
「じゃあ……始めようか」
悠真が小さくうなずき、口を開いた。
「今日は、大事な話があって。僕たち、ふたりで真剣に未来のことを考えました。仕事のこと、生活のこと、そして――家族のことも」
誠一がゆっくり頷く。
「……つまり、“次のステージ”ってことだな」
美紅は一呼吸おいて、真っ直ぐに顔を上げた。
「はい。正直、まだ確定ではありません。でも、将来的に子どもを授かったとき、どんなふうに支え合って生きていくか……今から家族として、きちんと話しておきたいと思ってます」
静香が口元をやわらかくほころばせる。
「ふふっ……素敵ね。その“考える時間”を大切にしようとする姿勢、すごく好きよ、美紅さん」
瑞希は腕を組んで、やや真剣な顔で言った。
「とはいえ、悠真。大学はまだ4年ある。美紅も女優として上昇中。正直、いろんなリスクがあるってわかってる?」
「……うん。だからこそ、“完璧なタイミング”を待つんじゃなくて、“準備ができているか”を今のうちから確認したいんだ」
「……なるほどね。じゃあ逆に聞くわ。もし今すぐ妊娠が発覚したら、仕事も学業も全部守れる?」
悠真は少しだけ黙ったあと、視線を真っ直ぐに向けて答えた。
「守る。必ず。
仕事も、学業も、家庭も――全部ひとりで抱えるんじゃなくて、**“ふたりで背負う”**って決めたから」
その力強い言葉に、父の誠一が思わず唸る。
「……お前、変わったな」
「変わりましたねぇ、ほんとに」
静香が、ほほえみながら続けた。
「でもね。ふたりで作る家庭は、何が起きても“愛で支えられるか”がいちばん大切なのよ。忙しさも不安も、全部、分け合って初めて“家族”になるの」
美紅はその言葉に、目元を潤ませて深く頷いた。
「……本当に、そうですね。私……仕事でいつも“完璧じゃなきゃいけない”って思ってました。でも、家族には“完璧じゃなくていい”って、思えるようになりました」
瑞希がにやりと笑って、言う。
「そっか。“姉として”はまだまだ負けてられないけどね?」
美紅は笑いながら首を振った。
「姉としても、先輩としても……瑞希さんには、一生敵わないですよ」
場がやわらかい笑いに包まれた。
◇
その帰り道。
夜の街を歩くふたり。
夕食後にコーヒーを飲んで、手をつないで帰るだけの、なんでもない時間。
でも今夜は――
“家族”という言葉の意味が、より深く心に染みていた。
「……俺、今日すごく実感した」
「何を?」
「誰かと生きていくって、“会話”なんだって。
伝え合って、ぶつかって、それでも一緒にいたいって思い続けること……それが家族になるってことなんだなって」
美紅は頷いて、静かに言った。
「……ねえ、悠真くん。
これから何があっても、ちゃんと全部話してね。嬉しいことも、苦しいことも。
私、あなたの“一番近くの味方”でいたいから」
「……うん。
君となら、どんな未来も怖くない。
――“家族になる”って、そういうことだよな」
ふたりは歩道の片隅で立ち止まり、
やがて深く、やさしく、長いキスを交わした。
それは誓いでもなく、演技でもなく、未来に向けた約束そのものだった。
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