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『姉の同期が“推しモデル”でした。――交際0日婚…君に憧れて、君と結婚することになった夜。』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『交際0日婚ですが、姉の同期が“推しモデル”でした。―ふたりの未来と、演じる恋じゃない愛のかたち。』
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第5話「“演技”のはずだが、何故か分からないが… 鼓動が止まらないのである」



「……演技、だよな?」


帰宅後の寝室。

照明を落とした部屋の中、ベッドに背中を預けながら、悠真がぽつりと呟いた。


「うん……でも、私は正直、途中から“役”ってこと、忘れてたかも」


美紅が、髪をほどきながら素直に答える。

その声はかすかに震えていた。


ドラマ撮影は折り返しを迎え、ふたりの関係は“恋人”から“婚約者”へと進展。

脚本上でも、キスや抱擁のシーンは徐々に増えていた。


撮影が進むたびに、悠真は気づき始めていた。

自分の胸の鼓動が、撮影中のほうが早くなっていることに。


「これ以上、もっと激しいシーンが来たら、俺……ちゃんと演技で済ませられるかな」


「……いいんじゃない? 済ませなくても」


ベッドの隣、美紅がそっと言葉を落とした。


「スタッフさんたちも、気づいてると思うよ。私たちのキスが、演技じゃないって」


「……やっぱり?」


「うん。でも、誰も止めない。むしろ、求められてる。リアルな“愛”が、画面に映ってるって」


悠真は深く息を吐いた。


「俺、今ならわかる気がする。“演じる恋”と、“本当に愛してる人と交わすキス”は、全然違うんだなって」


「私も……知った。あのキスで、私、ちゃんと女優としてだけじゃなく、ひとりの妻として愛されてるって思えた」


ふたりは言葉を止めて、しばらく静かに見つめ合った。

そこには、何の照れも、演出も、演技もなかった。

ただ、心が重なっていた。



数日後、ドラマの“山場”となる回の撮影が行われた。


婚約直後、恋人たちが将来を語り合いながら、ベッドの上で想いを確かめ合う――そんなシーン。


監督は、特に詳細な指示を出さなかった。

ふたりにすべてを委ねる形で、カメラが回される。


「……ずっと、一緒にいようね」


「……うん、約束する」


そう言って、美紅がそっと頬に触れ、キスをする。

やがて、悠真も彼女の肩を抱き寄せ、静かに背中へ手を回す。


キスは、長く。

深く。

自然と呼吸が重なり合い、肌が触れ合うたびに、ふたりの間から“役”という存在が消えていった。


現場のスタッフたちは息を飲み、誰ひとり言葉を発しなかった。


「……カット、入れられないな……これ、“リアルすぎる”」


カメラの後ろから、誰かがつぶやく。


演技とは思えない。

むしろ“そこにあったのは愛そのもの”だと、誰もが感じていた。



その夜。


帰宅後のバスルームで、メイクを落とした美紅が鏡越しにふと口にした。


「ねえ……私たち、俳優と女優っていうより、“恋を演じる夫婦”じゃなくて、“恋を重ねる夫婦”になってる気がする」


「……いいじゃん、それ。最高の形だと思う」


「演技じゃなくて、愛してるからこそ、伝えられるキスがある。そう思うようになったよ」


「俺も。……君じゃなきゃ、できない」


ふたりはタオルに包まれたまま、リビングのソファで寄り添い、

今日の撮影で交わした“キス”の続きを――演技ではない、本当のキスで確かめ合った。


鼓動は、止まらなかった。

むしろ、恋の始まりのように速く、熱く――


そして、その夜。

ふたりは脚本にないキスを、幾度となく重ね合った。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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