第4話「カメラやスタッフの前で、恋人じゃない“恋”をする」
CM放送からわずか数日――
悠真と美紅の“夫婦共演”は、ネットを中心に爆発的な反響を呼んでいた。
「こんなに自然な夫婦感、他にある?」
「交際0日婚から、ここまで来るなんて……!」
「モデルとしても女優としても一流の美紅さんが、リアル旦那と共演してるの尊すぎる」
SNSは連日賑わい、テレビでも「今もっとも話題のリアル夫婦」としてニュースやワイドショーに取り上げられた。
それを受けて、次に事務所から舞い込んだのは――
連続ドラマでの恋人役としての共演依頼だった。
「……ドラマ……か」
自宅のダイニング。
台本に目を通しながら、悠真はそっと眉をひそめた。
「うん。でも、この内容なら……」
美紅が頷きながら言葉を継ぐ。
「ちゃんと恋人役。でも……相手が悠真くんだから、大丈夫。私、誰にも見せたことないくらい“本物の恋”を演じられるかもしれない」
脚本は、若いカップルが出会いから結婚までを描くラブストーリー。
リアル夫婦が演じるという“実験的企画”に、監督も気合いを入れていた。
◇
ドラマ撮影初日――
シーン1は、駅前での偶然の出会いから始まる。
通り過ぎたふたりが振り返り、目が合い、歩き出す瞬間。
「……カット! 悠真くん、表情ナチュラルでいいよ! 美紅さんも、その照れ笑い最高!」
順調な滑り出しに、現場はあたたかい空気に包まれていた。
続くカットでは、ふたりが初めて手を繋ぐシーン。
演出上は「ぎこちない初恋のような緊張感」が求められていたが、監督が声をかける前に、ふたりの間には自然な間合いと温度差が生まれていた。
「……さすがだな、このふたり。まるで本物の初恋」
「いや、“本物”なんだよ、きっと」
スタッフたちが目を細める中、次に控えていたのは――
ラブシーンだった。
ベッドに横たわるふたり。
設定上は付き合って半年、心が通い合った夜の描写。
カットを繋ぎながら、キスシーンを撮る必要がある。
リハーサルの前、控室で美紅が言った。
「……もし、私が本気でキスしちゃったら、ごめんね」
「ううん。むしろ、演技だと思わないでくれたほうが……嬉しいかも」
「……じゃあ、長くても、嫌がらないでね」
「君のキスなら、いくらでも」
──
カメラが回り始めた。
ベッドの上、互いに顔を見つめ合いながら、悠真がそっと髪に触れる。
美紅が目を伏せると、その唇に、そっと――
キス。
最初は軽く。
次第に深く。
やがて、長く、熱を帯びたそれは、スタッフさえも息を呑むほどに“真に迫った愛”を感じさせた。
「……カ、カット……」
カメラマンが手を止め、スタジオが静まり返る。
「……これ、もう恋人役じゃなくて、“夫婦の愛”だよな……」
「うん。演技超えてる。あれはもう、本物の夫婦のキスだった」
監督さえも言葉を失い、現場は異様なほどの静けさに包まれた。
やがて監督が小さく拍手しながら言った。
「OK、素晴らしかった……今日の収録、これで終わり。もう充分だよ」
◇
帰り道。
夜風の中、車に揺られながら、悠真は美紅の手を握った。
「ねえ、さっきの……演技じゃないよな」
「……うん。私も。ちゃんと、悠真くんに“好き”って伝えながら、キスしてた」
「……このまま、ずっと君と一緒に、物語をつくっていきたい」
「うん。私も、カメラの前でも、プライベートでも、悠真くんとなら、どんな恋も演じられる」
そしてふたりは、もう一度静かにキスを交わした。
それはドラマの一場面ではなく――
ふたりの、現実に刻まれる“愛の記録”だった。
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