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『姉の同期が“推しモデル”でした。――交際0日婚…君に憧れて、君と結婚することになった夜。』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『交際0日婚ですが、姉の同期が“推しモデル”でした。―ふたりの未来と、演じる恋じゃない愛のかたち。』
20/51

特別編6話「カメラの前で、恋人じゃない“恋”をする」



――撮影2日目。


ドラマのセットが組まれたスタジオの一角。

スタッフたちが照明を調整し、助監督が段取りを確認する中、悠真と美紅は静かにリハーサルの位置についた。


今日のシーンは、恋人役としての“初めてのキス”。

それも――感情がぶつかり合ったあとの、“涙交じりのキス”という重たいシーンだった。


監督の意図は明確だった。


「君たちの実際の関係性には、もちろん重みがある。でもこの作品の中では、“恋人未満”から“恋に落ちていくふたり”を見せてほしい」


つまり、“夫婦としてのぬくもり”ではなく、

“恋に気づいた瞬間”の一度きりの、とびきり甘くて、切ないキス。


カメラの前で、恋人じゃない“恋”を演じろ――

それは、ある意味で、最も高度で、最も難しい演技だった。



「悠真くん、大丈夫?」


リハーサル前、控室で並んで座った美紅が声をかけてきた。


「うん、たぶん……でも、俺、やっぱり“演技として”キスするの、ちょっとだけ怖い」


「……うん、分かるよ。私も」


「本番で本気になりすぎたらどうしようって、思う」


「でも、もしそうなっても――それは、“お芝居”としてじゃなくて、“あなたが私を想ってくれてる証拠”だって思うよ」


「……そっか」


悠真は、彼女の目を見て、深く頷いた。


「じゃあ……俺は、演じてるふりをして、本当に君を好きになってるようにキスする」


「ふふ、ずるい。でも……それが正解かも」



本番。


カメラのスイッチが入り、

静まり返ったスタジオに、ふたりの呼吸だけが微かに聞こえる。


――シーンは、静かな夜の廊下。


美紅演じるヒロインが、想いを隠して悠真演じる男に背を向ける。

その背中を、ふいに引き寄せて、

振り返らせ、涙をぬぐって、そして――キス。


セリフはない。


けれど、ふたりの目が合った瞬間、

空気が変わった。


悠真の手が、美紅の頬に触れた。

美紅は、目を閉じる寸前に小さく震え――

そのまま、ゆっくりと唇が重なる。


一秒。

二秒。

三秒。


ふたりは、深く、ゆっくりと、

“演技ではない感情”を、確かめるようにキスを続けていた。


スタッフが固唾を飲む中、

誰もが息を飲んで見つめていた。


「……カット」


監督の声が響いたのは、10秒以上経ったあとだった。


ふたりは、そっと顔を離した。

お互いに何も言わないまま、少しだけ照れくさそうに、でも満足そうに微笑んだ。


「……リアルすぎて、セリフ要らなかったな」


助監督がぽつりと呟き、スタッフの間に小さなどよめきが走る。


「本物の恋人が、今恋に落ちたみたいだった」

「演技じゃないだろ、あれ……」



撮影後の控室。


ふたりはソファに並んで座り、互いに顔を見合わせた。


「……ごめん、ちょっとだけ本気だった」


「私も。……でも、それでいいよね?」


「うん。演技を超えてしまうくらい、君のことが好きなんだって、改めて気づいたから」


ふたりは、静かに手を取り合う。


カメラの前で演じた“恋”は、

誰よりも本物に近かった。


それは、“交際0日婚”という形から始まったふたりが、

今もなお――“恋”をし続けている証だった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


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その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。


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