特別編2話「夜の誓いと、ふたりの未来へ」
夜――。
甘く深いキスを交わしたあと、美紅と悠真は、ゆっくりと顔を離した。
照明を落としたリビングには、ふたりの吐息だけが静かに漂っている。
ソファに並んで腰かけたまま、美紅は恥ずかしそうに髪をかきあげながら言った。
「……あのCM、本当に放送されたんだね」
「うん。しかもニュース番組で紹介までされるなんて思ってなかったよ」
「私、ちょっとだけ不安だったんだ。ふたりの空気が“作りもの”だって思われたらどうしようって」
「でもさ」
悠真はそっと美紅の手を取る。
「俺たちは、本当に夫婦で、本当に……君のこと、誰よりも見てきた。だからきっと、伝わったんだよ。作りものじゃないって」
「……悠真くん」
その言葉に、胸が熱くなる。
いつもは照れた顔をする彼が、こうして真正面から思いを口にするたびに、美紅の中で“恋”が“愛”へと形を変えていくのを感じていた。
「私ね、今すごく幸せだよ」
「俺も」
ふたりは、手を繋いだままソファに寄りかかり、夜が更けるまで静かに寄り添っていた。
◇
翌日、大学の帰り道。
悠真は駅までの道でスマホを確認すると、美紅からのLINEに気づいた。
「今日、少しだけ遅くなるかも。撮影終わったら連絡するね」
「大丈夫、無理しないで。帰ったら、ちゃんとご飯食べような」
返信を送り、悠真はふっと笑う。
ふたりで交わす日常の連絡も、今ではあたりまえになった。
だが――
“芸能人の妻”と“大学生の夫”という関係性は、やはり少しずつ“現実とのギャップ”も生んでいた。
このまま、美紅はもっと有名になっていく。
そして自分は、ただの一般人。
それでも隣にいたいと思うほど、彼女を好きになってしまったから――
離れられないし、手放したくなかった。
◇
夜、帰宅した美紅は、疲れた様子ながらも柔らかく微笑んでいた。
「ただいま」
「おかえり」
テーブルには、悠真が作ったシチューとサラダ。
器の温もりに、美紅の表情が少しほどける。
「嬉しいな……こういうの」
「ただいまって言える人がいて、出迎えてくれる人がいて……本当に、幸せなんだよ」
そう言って、少しだけ泣きそうな目で美紅が微笑んだ。
悠真は、黙って彼女の手を取った。
「じゃあ、約束しよう」
「え?」
「どんな仕事が来ても、どんな状況になっても――俺は、君の隣で生きる」
「……うん。私も」
「“推し”とか“モデル”とかじゃなくて、“妻”として、ずっとそばにいて」
「いるよ。……ずっと」
その夜、ふたりは再び、深く唇を重ねた。
言葉では表せないほどの想いを――
ただ、キスという形で、何度も確かめ合っていた。
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