2話
「スペースシティの国家独立」とならぶ「桑間の停学・中退」という、生徒達の関心によせられた人物……
この桑間という人物とはいったい何者なのであろうか?
桑間ジョウジ。彼は資立ルシム学園はじまって以来の問題児であった。
学校の先生の授業を聞き、黒板を見ることよりも……携帯でゲームをすることに熱意をかたむけ……体育で相手チームに勝つことよりも……学校をぬけだしてゲーセンに通うことに青春をかけた男であった。
学校を休んで家でゲームをしたり、外で遊んでいることも多かった。
授業そっちのけ、学校にこないでは……
当然、落第は間違いない……
はずなのだが、彼のやっかいなところは、授業をろくに受けなくても、ちょっと勉強しただけで、ソコソコの点数をとり、しっかり単位を逃さない程度に学校に顔を出している所である。
これでは、先生方は、いい加減な態度をとる桑間に文句を言いづらい……
なぜなら、桑間ジョウジよりテストの点数が悪い生徒や、桑間より出席数が少ない生徒は他にいっぱいいるからだ。
じじつ、多くの先生は文句を言うのもバカバカしくなり、桑間を無視するようになったという。
しかし、ここで新たな問題が起きた!
なんと、出席数ギリギリだった桑間が最近、学校にきていないというのである。
いったいどうするつもりなのだろう?あと数日学校にこないだけで、出席数不足となり、桑間ジョウジは資立ルシム学園を停学もしくわ退学になってしまうというのだ。
2年バナナ組の教室では学校の有名人・桑間ジョウジが「今日は学校にくるだろうか?」と生徒のほとんどが話題にしていた。
そして、授業開始5分前……
桑間をのぞく生徒たちが自分たちの席につきはじめた。しかも私語がいっさいなかった。……マジメな生徒たちである。
そして、2分前、生徒たちの視線が天井の時計に集中する。
ここで多くの生徒たちが『桑間は今日も学校に来なかったぞ……』とクチにだした。
ところが……
”ガラガラ”と教室の扉を開く音が聞こえた。
「ちぃーす」
とのんきな声を出して教室に入ってきたのは桑間ジョウジだった。
彼は他の生徒たちの好奇な視線もきにしない素ぶりで自分の席に座り、席につくなり、カバンから携帯機をとりだし、いきなりゲームをしはじめた。
ゲームに熱中する桑間の集中力と精神力はすさまじい!
この後、担任の先生が教室に入ってきて桑間を注意するのだが、桑間は動じず、視線はゲームの画面を向け、指はキーボードを押し続けていた。
それから、見かねた隣の席の女子が桑間に注意したのだが、桑間は無視してゲームをし続けていた。
そのまま二時限目の国語が始まったが、それでもゲームをしたままだった。
そして二時限目の国語が終わると、国語の先生が他の先生3人を呼んできて、4人がかりで桑間を注意した……
が効果なし。そのまま3時限目が終了してしまった。
次はお昼休みだ。
皆が弁当や購買のパンを食べる中、桑間は立ち上がりトイレに行って用をたすと、自分の席に座り、カバンからマクドルナルドのハンバーガーをとりだし、慣れた手付きで袋あけて、左手でハンバーガーをかじりながら、右手で携帯機でゲームをはじめだした。
そして、お昼休みが終わり、四時限目にはいると生徒たちは更衣室で運動着にきがえてサッカーをやるはずだったが、桑間は学生服のまま教室の自分の席に座りゲームを続けていた。
そのありえねえ、ふざけた態度に、体育コーチがブチ切れた!
「おい、桑間ぁ!いい加減、ゲームする手を止めろぉっ!こっち見ろ!」
その体育コーチは木製バットを握って教室でゲームを続けていた桑間を怒鳴りながら注意したが……効果なし。
「ざけんな!この野郎!」
とうとう本格的にブチ切れてしまった体育コーチは、握っていた木製バットを桑間の頭部めがけてふりおろしてしまった。
”ガツゥっ!”
というにぶい音が桑間の頭部から聞こえた。
……が頭を木製バットでかち割られ、皮膚から血を流して、強い打撲傷をおっても……桑間はゲームをし続けていた。
その体育コーチは「コイツはバカなんじゃねーか……」とあきらめた表情をしながら、教室を出ていってしまった。
そして、とうとう、6時限目の授業も終わり、結局、桑間ジョウジは全科目のすべての授業をゲームした状態で終わらせてしまった。
全授業が終わったので桑間はゲームをする指をとめ、携帯機をカバンの中にしまいこんだ。
さっさと、学校から家に帰るしたくをしだした。
それを見ていた隣の席の女子、橋本ヒトミが桑間に注意した。
「ちょっと、桑間くん!」
いきなり大声でヒトミに呼ばれた桑間は、
「ああん?」
と不機嫌におうじた。
今の彼は長時間のゲームによって精神的に疲れていて、ちょっとぷち切れぎみだった。
すさんだ桑間の視線に、おじけ気味になった橋本ヒトミだったが、責任感と面倒見のいい彼女は桑間を注意せずにはいられなかった。
「桑間くんさあ……ちゃんと、授業をうけなよ!」
ヒトミが勇気をふりしぼって桑間に注意すると、桑間は、
「なにお前?俺が自分の席に座って、授業にさんかしてたの見てなかったの?」
いけしゃあしゃあと桑間が真顔でヒトミに言った。
その態は、『オレはいっさい間違ったことはしてねえ!お前がおかしいんだよ!』と心の底から思い切っている風であったそうな。
このいい加減な桑間の言いぐさに、ヒトミは腹をたてた。
「席に座って、授業をうけたってさあ、先生たちが教えてくれてるんだからさあ……ゲームしないで、ちゃんと話を聞いて、黒板に書いてあること、ノートに写さなきゃダメじゃん!」
ヒトミが声をはりあげて桑間に言うと……
これまで桑間に恐怖を感じていた他の生徒たちもヒトミの勇気に同調して、ヒトミに加勢しはじめた。そして、みんなで桑間のいい加減な授業態度に文句を言い始めた。
「桑間くん。ちゃんと授業をうけなよ」
「そうだよ。先生たちが授業してんだからさ、ちゃんと聞かないと失礼じゃん!」
「桑間くん。これから学校に携帯もちこんでゲームすんのやめてよ。ボクたち、授業に集中したいのにさ、桑間くんが授業中にゲームしてると気が散るんだよ!」
「そうだ、そうだ」
「そうよ、そうよ」
とうとう、ここにいる2年バナナ組の生徒全員が桑間に注意した。
ここにいる生徒たちは、お父さんお母さんが働いてお金を出してくれているから、自分達は学校に通えて勉強することができ、先生達が一生懸命に授業をしてくれているから、自分たちは学園生活を満喫できることを知っていた。
そんなお父さん、お母さん、先生方が用意してくれた、ありがたい学校に、携帯機を持ちこんで授業中にゲームをしまくっている桑間に生徒たちはムカついていた。
そんな生徒たちの熱意が……桑間には通じなかった!
彼は言われのない非難をあびた被害者のようにふるまいだし……
「なに君たち、俺の授業態度に文句あんの?オレ、普通に授業うけてるじゃん!ちゃんと席に座ってさあ、居眠りもしてないしさあ、よけいなこと言って私語もしてないよねえ?ちゃんと画面見て指でキーボードおしながらゲームして、授業うけてたじゃん。みんな見てたよねええ!なんで俺を悪モンにすんだぁ!?」
桑間が自らの正当性を主張するように高々と(桑間が思っている)正論を皆にアピールした。
他の生徒たちは、
(授業中にゲームをすること自体がオカピいじゃん……)
と小声で文句を言い返したが、桑間に迫力負けしてしまったせいか、正面きって文句を言うことができなくなってしまった。
実はこの桑間ジョウジという少年は近年まれに見るKOJ(キング・オブ・自己ちゅー)として名をはせていた。
だから、授業中にゲームをする自分の行為が他の生徒たちや先生方に迷惑をかけているとは……微塵も思いもしなかったし、アリの息ほど感じてもいなかった。
まさに桑間ジョウジはKOJ(キング・オブ・自己ちゅー)であった。
生徒たちをKOJ(キング・オブ・自己ちゅー)ぶりで黙らせてしまった桑間ジョウジは、
「まったく、とんだ言いがかりだっつうの!」
と言われのない非難をあびた被害者意識を持ち続けて、不快な目にあっちゃったと言わんばかりに、小腹を立てながら教室を出ていった。
他の生徒たちは、
(なんなんだ?あいつは!)
と訳のわかんない未知の領域に迷い込んだ冒険者のような心地で、教室を出ていった桑間をながめていた。
それはまるで他国の文化にふれ……はたして自分達が今まで信じてきたやり方や考え方が正しかったのか?じつは間違っていたのではないか?と思ってしまう懐疑心に近いものがあったそうな。
君たちは間違っていない!
バナナ組の生徒たちは、これまで通りお父さん、お母さん、先生方に感謝をし、充実した学園生活を送れることに感謝して青春を謳歌すべきだ!
そんなこんなで、被害者づらで小腹をたてながらぷち切れぎみになった桑間は、
「ちっ、腹たつなあ〜、こんな時はあれを使って遊ぶかあ♪」
何かを思いだした彼は、学校をでると市街地から離れた工業地帯をぬけ、やがて、スペースシティの最端にある軍事基地方面へと歩いて行った。
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