1話
地球から月の間をつなぐルートを”ムーン・ロード”と呼んだのは、宇宙開発が本格化して20年たったときからだという……
そのムーン・ロードの地球と月のちょうど真ん中をみると……暗黒空間をただよう隕石に1つの町があった。それがスペースシティ・F号である。
スペースシティは隕石の地下に……重力制御装置を設置し、水道や下水、ゴミを捨てるホール、電線、商業用ゲートや工業ゲートをほり……
さらに、そのうえに人が住む町を作り、川や森など自然を作り、天井には空気を逃がさない特殊フィルタをおおい、その上に紫外線を調整するガラスユニットを設置したものである
スペースシティはその名がしめす通り、宇宙にただよう、一つの町であるが、最近ではスペースシティを1つの国家として独立させようとする動きがある。
その理由の1つとしてスペースシティの大きさがあげられる。スペースシティの面積は41000平方メートルでオランダと同じ大きさである、その町中には約100,000,000人の人々が住んでいる。
宇宙開発当初はスペースシティの面積は小さく、1000人たらずしか住んでいなかったが、宇宙開発から20年足らずで10000倍以上も増えたことになる。
「スペースシティはもう宇宙の町ではない。宇宙都市国家である」
これはスペースシティ・F号、初の市長・M内田の言葉である。
彼は2年前にスペースシティ初の市長となると同時に、今年の春から地球の国連にスペースシティの独立をうったえたという。
そもそもスペースシティによる宇宙経済は地球の先進国にせまる勢いがあり……
スペースシティでは、隕石からとれるスペース・メタル産業をはじめ、宇宙工学産業、宇宙航空産業をはじめとする大きな仕事があるし、仕事をする場所もある。あと数年したら地球からの旅行が本格化して観光だって育つはずだ。それにスペースシティ独自のルールもきちんと整えはじめてきた。
ここまで発展したら一つの町から都市国家を名乗りたくなるのも無理がないではないか。
じじつ、このスペースシティ・F号に住む多くの人々が……
自分たちの努力が地球の人々に認められ……スペースシティの国家独立によって、人類の歴史に新たな1ページを書きしるすことに、期待を胸にふくらませながら、勉強や仕事の合間にニュースをチェックしながら吉報(良い知らせ)を待ち望んでいた。
スペースシティ・F号では、お父さんが働いている職場や、お母さんが集まる公園、オジイちゃん・オバアちゃんが養成するホーム、お子さんがお勉強をする学校などで、「スペースシティの国家独立を、地球の国連が認めるだろう」と期待する意見がかわされていた。
それはスペースシティF号の最北区に位置する資立ルシム学園でも同じであった。
ルシム学園の2年バナナ組の教室で生徒達の話題に上がっていることと言えば、
「スペースシティの国家独立が地球の国連に認められるだろう」
ということと、
「桑間ジョウジがとうとう停学・退学になるか?」
の二つであった。