朝日和
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トントンッ トントントンッ トントンッ
「ン、、、、」
心地よい包丁の音と太陽の日差しで目が覚め、机に置いてあったスマホを見れば、午前9時半だった。いつもより、目覚めも良いし、長く寝れたな。すぐさま、起き上がりキッチンに向かえばそこには。
「あ、奏馬さん、おはようございます」
「、、、、優月?何してるの?」
「朝ごはん作ってるんですよ。お味噌汁は昨日のが残ってますしウインナーそろそろ使わないといけないですから」
「そーなんだ。その長ネギは?」
「これは、お味噌汁に入れようかなって、あ、卵焼きとウインナーと玉ねぎと後、ほうれん草を炒めたのを作りましたので」
「後は炊き終わったご飯をよそってくれませんか?」
「、、、、ぅ、うん!了解」
そう言いながら、切った長ネギをお味噌汁に入れる優月は何処か、綺麗で美しいなって思えてしまってったし、優月の格好を見てしまって驚いてしまった。
「!!ゆ、優月、そのエプロンどこにあったの?」
「え?、、、、昨日片付けてた時に見つけましたよ?」
「マジで、、、、」
「まるで、奥さんじゃん(小声)
「何か言いましたか?」
「いえ!何でもありませんが!?」
ヤバ!と思い、瞬時にそんな考えをなくすために炊飯器にしゃもじとお茶碗を持ち手をかける。自分のご飯を大盛りに盛った後、優月の分のお茶碗を持って優月に問いかける。
「優月はどれぐらい食べる?」
「奏馬さんと同じぐらいで良いですよ?僕、結構食べるんで」
「そう?分かった」
優月がそう言ったので俺と同じぐらいに盛り、優月に見せた。
「どう?これでも」
「、、、、奏馬さん、大盛りって知ってます?」
「そんな量は僕、食べれませんが?」
「?」
「貴方って細身なのに結構食べるんですねって、意味ですよ」
呆れ口調で言いながらお味噌汁を皿に注ぐ優月の顔は妹がいつもしている顔に似ていた。
「さ、洗濯機もそろそろ終わるので、食べますよ」
「えっ、洗濯機かけてくれたの!?」
「えぇ、殆どそのままにしてたYシャツとか服やタオル、靴下など干しますから」
「別に良いのに」
「そう言いますけど、奏馬さんみたいなタイプって、「時間がなくて〜、や、やろうと思ってたんだけど〜」とか、言い訳とかしそうですよね」
「、、、、こっち見なさい」
笑顔で言いながら椅子に座る優月は結構怖くてやっぱり、美人って怒ると怖いって本当なんだって分かってしまったのと、図星だったので顔を背けてしまった。
「では、いただきます」
「いただきます」
2人でご飯を一緒にご飯を食べる。最初に卵焼きに手を付ける。卵焼きの一切れを箸で一口大にし、口に入れる。その瞬間、卵の甘みを感じ後に塩胡椒のしょっぱさが感じた。口の中に旨味が広がった。
「う、美味!今まで食べた卵焼きで1番美味いかも!」
「えへへ、卵焼きは1番作ってきたので結構自信作なんです」
「これだけで、ご飯一杯食べれるかも!」
「それは辞めて下さい」
そう、嬉しそうに言いながらお味噌汁を口に入れる優月。次にウインナー炒めに箸を伸ばし、ウインナーと玉ねぎとほうれん草を取り口に入れた。
瞬時にウインナーを噛めば汁が口の中に広がり、玉ねぎの甘みとほうれん草の良い苦味が感じ、これもご飯が進むな。そしてご飯を口に掻き込む。
「ちゃんとした朝食、久しぶり食べたかもしれない」
「いつも何食べてるんですかね?」
「、、、、コンビニのおにぎりとかサンドイッチ、後は菓子パン、惣菜パンとか」
「はぁぁ(深いため息) 奏馬さん。そんなんじゃ、栄養の偏りで倒れたりしますよ?」
「分かっています。これから、もっと気を付けたいと思います」
「それなら、良いんですけどね」
そう言い水を口に入れる優月。そして、そのままご飯を食べ進める。
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「じゃ、僕、洗濯物干してくるんで、奏馬さんはお皿を洗っといて下さい」
大量の洗濯物が入ったカゴを持ちながら、言う優月にスポンジを持つ俺。
「本当、何から何までありがとうね」
「いえ、何か姉に似てるので、こーゆうのって慣れてるんで」
「へぇ、優月ってお姉さん居るんだ」
「はい、9歳上と7歳上と5歳上の姉、18歳上と4歳上の兄が居ます」
「へぇ、6人兄弟なんだ。俺は5人兄弟なんだ〜」
「奏馬さんは何番目なんですか?」
「俺は4番目、12上の姉と8歳、4歳上の兄貴に6歳下の妹が居るんだ」
「優月は末っ子なんだ。確かに末っ子ぽい!」
「あぁ〜、確かに奏馬さんって4番目っぽいですね」
「それ良く言われるんですけど何でですかね?」
不思議そうな顔をしながら、ベランダに出て、ハンガーなどに洗濯物をかける優月。そして俺は滑って落とさないように気を付けながらお皿を洗いながらタオルで拭く。
「、、、、あ、僕、これ干し終わったら出て行きますね」
「えっ、、、、そっか。分かった」
そう干しながら思い出したかの様に言う優月。そう言われて、少し落ち込んだ。そっか、昨日と今日だけの関係なんだもんな。ちょっと寂しいなって思いながら答える。
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「よし、終わりましたよ。奏馬さんも洗い物、ちゃんと洗えましたか?」
「俺だってちゃんと洗えますからね?優月君は俺のことどう思ってるのかな?」
「え?ポンコツ男子じゃないんですか?」
「確かにそうかもしれないけどね」
あっけらかんと悪気のなく言う優月に怒れる気は出なかった。
「では、僕はこれで失礼しますね」
そう言ってリュックを背負い、玄関に向かう優月の背中は何処か寂しそうだった。
「、、、、ちょっと待って!」
「!?、何ですか?」
「その、連絡先交換しない?」
咄嗟に声をかけてしまい、瞬時にそう言ってしまった俺。
「連絡先ですか?」
「あ、いや、その、もしかしたら、用があるかもだし、念の為っていうか?」
「、、、、、、、、、、、、」
焦りながら言ってしまい、俺は大混乱してるし、優月は無言のまま俯いている。
俺は馬鹿なのか!?確かにちょと、俺は寂しかったけど、急に「連絡先交換しない」とか言うとか、俺ヤバすぎんだろ!?
それに、たった一晩家に泊めた男にそう言われる優月だって怖いに決まってるだろ!!
「ごめん、優月!また、俺変な事言ったわ!この事は忘れて!!」
「いえ、連絡先交換しても良いですよ?」
「だよね!そうだよね!連絡先交換しても良い、よ、、ね!!???」
「えっ!!良いの!!?」
「はい。僕もしたかったですし、奏馬さんが言ってくれて良かったです」
「ではすぐにしますか。、、、、奏馬さん??」
そうあっけらかんと言いながらスマホを出す優月と驚きのあまり固まってしまった俺。
「いや、その、良いよって言われるとは思わなくて、さ」
「僕が断ると思ったんですか?確かに、見ず知らずで何も知らない人にそう言われたら、すぐに断りますけど」
「奏馬さんのこと、何も知らない訳ではないじゃないですか?」
「、、、、何か、嬉しいな笑」
「そうですか?てか、そもそも一晩泊まった相手は見ず知らずの相手ではないですよね笑」
「だね笑」
そう一緒に笑いあい、俺もスマホを出し連絡先を交換した。LINEと電話をどっちも交換した。
「では、これで本当に失礼しますね」
「あぁ、何かあったら連絡してきてな」
「奏馬さんこそ、僕が居なくてもちゃんと掃除するんですよ。後、僕が居ないとダメにならないように」
「覚悟はしてますよ」
「じゃ、さようなら」
そう言ってドアを開けて出て行く優月を見送る俺。そして、ドアが閉まり、俺の鍵を閉めた。それで、俺達の関係は殆ど無くなったと変わらなく、それぞれの日常に戻る____________________________
はずだった。まさか、この関係が深くそして濃密で俺が優月が居ないとダメな人間になるなんて、優月の事があんなに大切になるなんて、家事の事があんなに楽しくそして出来る様になるなんてこの時の俺と優月は思いもしなかったし、その時の俺はパソコンを開いていたのだから。