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第35話 緊急会議


 「さて、みんなに集まってもらったのは他でもない今回の依頼の内容についてだ」


 俺の招集によってダイニングに集まったみんな。

 メンバーは俺、カルロス、レティナ、ミリカの四人。

 マリーはリーガル王国に行ったきり、まだ帰ってこない。


 「まず、<迷いの森>にカルロスと二人で行ってきた。これは前にマスターが言っていた内容だ」

 「あぁ。人が消えるっていう?」

 「そう。あれはレティナの言っていた通り、転移魔法だったよ」

 「え!?」


 レティナは俺の言葉に驚いた顔を見せる。


 「それと転移魔法の先には、邪龍とエルフの子供二人が居た」

 「ごしゅじん、邪龍とエルフって?」

 「あー、ミリカには教えてなかったね。邪龍はまぁ悪い龍の事だ。そして、エルフは人が嫌っている種族って感じかな」


 俺の要約した内容にミリカは、すっと表情を暗くする。


 「処理……?」

 「いや、今回はしない。邪龍は黒絶病を患っていてね。もう歩くこともできなそうだから」


 そう。

 恐らくだが、ブラックの体力は底をつきかけている。

 俺の絶重力(グラビリュート)も、邪龍であるならば、避けようと思えば避けれるほどの魔法だ。

 それを無抵抗で受けたところを見ると……


 「それで方針はどうする?」


 カルロスが俺にそう促す。


 「うん、それなんだけど、放置していられる件じゃないから、しばらくの間あっちにいようかなって」

 「え……? どのくらい?」

 「ん~正直まだ未定かな。色々と聞きたいことがあるし、それに……」


 言葉の途中で、レティナとミリカが俯く。

 二人は今、個々に依頼を受けている最中だ。

 伝魔鳩(アラート)で緊急に呼び出される以外は、基本的にその依頼を投げ出すことができない。

 だからだろうか、少しの間離れ離れになることを知って、二人は寂しそうな顔をしている。


 「そんな暗い顔しないで二人とも。そうだな……これが終わったらみんなで旅行にでも行こうか」

 「え!?」

 「旅行!」


 レティナとミリカは表情を変え、ぱっと俯いていた顔を上げる。

 すると、カルロスがそんな二人よりも先に口を開いた。


 「いいなそれ。レオン。行き先はもちろんアーラ王国だよな? 闘技会はパーティー戦もあんだ。結局一対一は変わらねぇが、一回でも負けた奴は罰ゲーム。どうだ、これ楽しそうだろ?」

 「カルロスさん闘技会ばっかり。今回こそはマリン王国に行ってみんなで羽を伸ばそうよ」

 「ごしゅじん。ミリカ。旅行行ったことない。楽しみ」


 カルロスとレティナが言い合いをして、ミリカが俺をキラキラした瞳で見つめる。

 なんて平和な世界だ。


 「まぁ、行き先についてはまた話し合おう。カルロスは明日も行くよね?」

 「あぁ。レオン一人じゃ何するか分かったもんじゃねえしな」

 「……」


 それ、カルロスにだけは一番言われたくないな。

 心の中でため息をつきつつ、俺は席を立ちあがる。


 「よし、じゃあそういうことで、俺は少し疲れたからもう寝るよ。もしマリーが帰ってきたら、二人の口から伝えといて」

 「うん! レンくんおやすみ」

 「把握した。おやすみ、ごしゅじん」


 俺はみんなと解散してから自室に入り、まだ寝るには早い時間だったが迷わずベッドに潜り込んだ。

 暗闇の中、瞼を閉じる。


 それにしても、今日はまた一段と驚いたな。


 邪龍。エルフ。転移魔法。黒絶病。


 ていうか、転移魔法って魔方陣あってのものなんだろうか?

 詠唱だけで済むならわざわざ魔方陣を描く意味はないし……

 ん~、まだ俺が知らない事情とかいろいろありそうだな。

 まぁ明日詳しく聞けば、分かる話……か……


 ふかふかのベッドの中、思考を放棄してそのまま眠りにつく……はずだった。


 キィィっと静かに部屋の扉が開かれ、足音を立てないようにベッドに歩み寄る二人の者。

 殺気はなく、一人は完璧に気配を消している。


 なるほど。いつもこんな感じで入ってきてるのか。


 俺の布団がもこもこと膨れ上がり、両手が繋がれる。


 「あの……レティナとミリカ何してるの?」

 「レティナねーね。気づかれた」

 「ミリカちゃん。大丈夫だよ。ただの寝言だから」


 二人は俺の言葉を無視して、くすくすと布団の中で笑い合う。


 「二人とも自分の部屋で寝なさい」


 俺の心臓は少しドキドキとしているが、こういう事はちゃんと言わなければならない。

 動揺を察することができないように、つい冷たい口調になってしまった俺に、


 「ごしゅじん。怒った?」

 

 と、ミリカは繋いでいた手を離し、不安そうに顔だけを覗かせる。


 「レンくん明日から会えなくなるでしょ? 寂しいよ……」


 レティナのその言葉と共に右手がぎゅっと強く握られ、つい狼狽えてしまう俺。


 「そう。補給。ごしゅじん、言ってた。人生には補給も大事って」

 「はぁ……俺も一応男なんだけど?」


 正直眠ってて気づかないのならいいが、理性があるうちは辛い。

 何が辛いかって聞かれるとそれは言えないが。


 「レンくん……私はいつでもいいから」


 レティナもミリカと同様に顔だけを出し、頬を赤くさせて俺を見つめた。

 ミリカの方は何の話か分からないみたいで、


 「??」


 と首を傾けるだけ。

 そんなミリカの頭を優しく撫でる。


 どういう意味? って聞かれなくてよかった~。


 「あっ、ミリカちゃんだけずるい! 私も!」

 「いやだって、レティナは俺の手握ってるでしょ」


 むぅ、と頬を膨らませて俺を睨むレティナ。

 それでも俺の手を放そうとはしなかった。


 はぁ……まぁ俺が耐えれば問題ないか。


 「今日だけだからね」

 「うん!」

 「把握した」


 二人は嬉しそうに俺に身を預ける。

 両腕にふにゅっとした感覚を感じて、俺は無心を装った。



 大丈夫、これは柔らかい布団だ。




 これは柔らかい布団。





 これは……布団。







 これは…………む……ふとんだ。









 これは……む、胸だ。



 無理に決まっていた。


 こんなの拷問でしかない。

 もし俺に理性がなかったら、二人一緒に襲っているところだぞ?

 なぁ、分かってるの? 二人とも?


 俺は二人の顔を覗く。


 「すぅーすぅー」


 うんうん、もう寝ちゃってるね。

 凄い気持ちよさそうに寝て、何よりです。

 俺は当分寝られそうにありません。


 母さん、父さん俺頑張るよ。

 頑張ってこの拷問に耐えてみせるよ。


 そう誓った俺は、覚めた目を無理やり閉じるのであった。

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