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第292話 共同戦線


 ザッ


 ザザッ


 ザザザザザザザザッ


 「ぐっ……」


 突然のノイズに頭を抑える。

 いつかこの痛みが原因で命を落とすかもしれないとは思っていた。

 だが、まさかここまで絶望的なタイミングなんて……


 グレイは俺の異変に躊躇することなく、拳を振り下ろす。

 避けられない。

 避けられるはずがない。

 直撃すれば確実に即死の攻撃だった。


 なぁ、どうして今なんだ……?


 「輝剣斬(こうけんざん)!!」


 死を覚悟したその時、閃光が走った。

 その拍子にグレイの身体が大きく揺らめく。

 現状を把握する余裕もない俺は、その様子を唖然として見ていた。


 「へっ?」


 すると、身体がふっと宙に浮かんだ。

 そして、そのままグレイとの距離が開く。


 「ふぅ、間に合って良かったよ」


 いけ好かない顔でそう言葉にしたのはラグラだった。

 その手には光り輝く剣が握られている。

 こいつが助けてくれたのか、と思うのと同時に、自分の置かれている状況を把握して、言葉が口をついて出る。


 「離せよ」


 窮地を救ってくれたことには感謝している。

 だが、こいつに抱えられているのは(しゃく)でしかない。

 俺の圧に負けたラグラは、やれやれといった表情で素直に手を離す。


 く、屈辱だ。

 これで俺がレオンだと気づけば、きっとこいつは一生笑いものにしてくるだろう。

 絶対にこのローブだけは死守しなければ。


 「やっぱり君も来てくれたんだ?」

 「あぁ、全然解決しなそうだからな」

 「ははっ、手厳しいね。グレイ相手に奮闘していたんだけど……それより、ベルティーと戦っていた者たちは?」

 「……ほとんど死んだよ」

 「そうか……二手に別れるべきじゃなかったか……」


 ラグラは沈痛な面持ちで顔を俯かせる。

 こいつはグレイと戦っていた。

 戦力を一手に集中させても、相手は血濡れだ。

 結果は変わらなかったかもしれない。


 「責任を感じるのは厚かましいな」

 「えっ?」

 「みんな誰かを守るために戦った。きっとそこには同情されたいなんて気持ちは一切ない。今、俺たちがやれるのは、その想いを受け継いでこいつらを倒すことだろ」

 「……そうだね、その通りだ。まさか君に慰められるとは」

 「うるさい、ちなみに会議で話したあの女の子だけは救えたから」

 「あのベルティー相手に……? ふっ、僕の目に狂いはなかったね」


 頭が軋んでいる感覚はまだする。

 だが、黒い感情はきれいさっぱりと消えていた。

 ラグラが助けに来てくれたから?

 いいや、多分違う。きっとあの子が俺を呼んでくれたからだ。


 「ねぇ~、いつまで話しているつもり?」


 少し苛立ちながら、そう口にするベルティー。

 ラグラの攻撃を受けたグレイも、ピンピンとしている。


 「ラグラ、お前呪術の耐性は?」

 「多分ないね、君はあるの?」

 「なかったら、今頃死んでる。俺にとってベルティーはただのカモだ、問題はグレイの方なんだけど……」

 「……俺?」


 ま、まずっ!!

 つい、いつも通りに話してしまった!!


 「き、気にするな。たまに出るだけだから」

 「そ、そうか。グレイは厄介な相手だよ。一般的な剣では、傷一つつかない。有効なのは魔法だが……」

 「使えないね」


 今はだけど。


 「まぁ、なんとかなるでしょ。無理だったらラグラが殺して」

 「女の子らしくない物騒な言い方だ」

 「物騒でも何でもいいけど、足だけは引っ張るなよ」

 「はいはい」


 こいつと共同戦線なんて反吐が出そうになるが、まぁ、四の五も言ってられない状況だ。

 使える手は全て使う。

 そして、いち早くこの戦いを終わらそう。

 シャルにも会いたいし。


 「じゃあ、行くぞっ!」


 地面を蹴って駆け出す。

 ラグラは俺の初動に置いてかれずに、隣にぴったりと張り付いていた。

 さすがに王都の騎士団長に任命されているだけはある。

 ルキースもこのくらい……いや、多分なかったな。


 「呪毒(カースポイズン)


 グレイの後ろから瘴気が放たれた。

 ラグラはその瘴気を光剣で払う。

 対する俺はそのまま一直線にグレイへと飛び掛かった。


 「ふっ」


 俺の攻撃をグレイはもろともせずに、腕で受け止める。

 やはり断ち切れないか。

 空気を断絶する反撃を躱して、懐に忍び込む。

 そして、人間の急所である心臓を貫こうとした。


 「なっ!?」


 グレイの硬い皮膚に耐え切れず、剣が折れる。

 普通の剣では傷つかないとラグラが言っていたが、まさかここまでとは。


 「だから、言っただろう!」


 いや、言ったけどさ~。


 加勢に入ったラグラのおかげで、俺はその場を脱出することができた。

 ただ、武器が無ければ応戦することさえできない。

 騎士たちが残していった剣はそこら中にあるが……


 「魂砕き(ソウルクラッシャー)

 「くっ」


 堪らず、ラグラも後退した。

 やはりベルティーの魔法は驚異に思っているらしい。

 全てを完璧に捌いて、相手を見据えている。


 あっ、そういえば……


 魔法鞄(マジックポーチ)をごそごそと探って、ある物を手に取った。


 「ん? それは……」

 「これなら折れることもないでしょ」


 手に取ったそれは、以前リリーナから報酬として受け取った剣だ。

 べベッドウェポンよりも勝る強度。

 奴を傷つけられるかは置いておいて、この戦闘で一番適した代物だろう。


 「君は本当に謎の多い子だな。そんな代物を持っているとは」

 「まぁね。それより、まず先にベルティーの方を殺るか。呪術が厄介なんだろ?」

 「あぁ、そうだね」

 「じゃあ、グレイの足止めは頼むぞ」


 と、言っておきながら、先に走り出す。

 グレイの攻撃は避けられない速さではない。

 だが、油断すれば致命傷をもらう可能性がある。

 相手の動きをしっかりと見て、対処しなければ。


 目の前に来た俺に、グレイが一撃を放つ。

 先程の攻防で俺は相手ではないと感じたのだろう。

 見るからに大ぶりだ。


 戦闘でなめられるなんて、久しぶりだな。


 少しだけ高揚感が高まりながら、攻撃を躱した俺はベルティーの元へ──


 「って、行くわけないだろ!」


 無防備なグレイに全力の一太刀を浴びせた。


 「っ!?」


 き、斬れた!

 皮膚が分厚くて、致命傷とはいかないが、これなら十分にやれる。


 「まったく凄いな、君は」


 背後から現れたラグラもグレイに一閃を浴びせる。


 「ぐっ」

 「何やってんの、グレイ?  屍縛の手(アンデッドバインド)


 敵の行動を止めることしかできない奴が、何言ってんだか。


 「……っ。こんな魔法もあるのか」


 そんな楽観的に考える俺とは別に、亡者の手に足を掴まれたラグラは苦悶の表情を浮かべる。


 呪術ってそんなにきついのか。

 なら、ちゃんとベルティーを狙いに行った方がよかったな。


 拘束している手を消している間に、怯んでいたグレイは後方へと退いていた。


 「ふむ、油断できぬ相手だな」

 「戦いを楽しむの止めてくれない? ベルティーちゃんの命が掛かってるんだけど?」

 「貴君は死なぬだろ」

 「死んでるから。あの感覚お前も味わってみる?」

 「ほう? 味わえるのか?」

 「……黙れ。さっさとこいつら殺して、計画を実行する」


 なるほど、蘇りはベルティーだけね。

 まぁ、他人を蘇らせるのはさすがに厳しいか。


 「ラグラまだやれる? 休んでもいいけど」

 「ふっ、冗談を言うね。まだ始まったばかりだよ」


 顔色も悪くはないし、そこまで重症ではないみたいだ。

 ラグラのことを考えれば、やはりベルティーを処理するのが優先ではあるが、確実にグレイの警戒は高まっている。

 さて、どうするか。


 「グレイ、暴れろ」


 ぽつりっとベルティーが呟く。

 そして、


 「呪力の源(べベッドオリジン)


 再度口を開いた。

 その瞬間、視界一杯に黒い何かが広がったのだった。

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