何のためにここにいるのか
暗い。
何だろう。
女性の姿が見える。
誰だろうか。
見たことある気がするが、思い出せない。
小柄で可愛く魅力的な女性だ。
思い出させない。でも、何故か何回も見た光景だ。
途切れた。暗い。
俺は今何をしていたのか。寝ていたのか。これは夢だったのか。
いや、光が見えてきた。光が大きくなる。まぶしい。
「どうしたんだい?そんな顔をしてさ。」
光の中から少しずつ見えてくる。綺麗な女性?の姿。
「誰なんですか。」
綺麗な女性の顔は笑っていた。
ここはどこだ。
見たことない場所だ。
自然の中にいる。花が咲き、1本の木が僕の後ろに。
草原の中に1本の木、当たりは花だらけ。
すごく神秘的な場所に感じる。ここは現実世界ではないのか。
夢の中か、それとも死んだのか俺は。
「私は道先案内人の小悪魔、あなたを案内するためにここに呼ばれたの。」
「案内人?」
どこからどう見ても人ではない。長い耳。人間にはない尻尾。少し長い爪。
人間のようにも見えるが、人間ではない。人がイメージする女性の悪魔、小悪魔のようだ。
「そう、あなたを案内するために生まれた存在。」
「案内人って言っているが、あなたは人ではないだろう?」
意外に俺は冷静だ。現実ではない世界。ここは夢の中・異世界・死んだ後の世界。そんなところだろう。現実では考えられない気がする。
「うーん、人ではないけどわかりやすい言葉を使ったの。それとあなたが考えていることは半分当たりかな。」
「半分あたり?どういうことだ?!」
まさかこの悪魔俺の心が読めているのだろうか。現実ではないなら不思議ではないが。
「そうそう。心は読めます。ここは死んだ後の世界。でも天国でも地獄でもありません。」
やはり現実世界ではないのか。この状況も納得だ。俺は死んでしまったのか。
「悪魔、いや小悪魔のようなお姉さんが出てきたということは、地獄に案内かい?」
「それは違うね。厳密にいうとここは現実と天国、地獄の間の世界。」
間の世界、死んだ後にこんな世界が。
「そう、現実へ戻るか天国へ行くのか、地獄へ行くのか選択できる世界。」
「選択できる世界?それは違うだろ?」
「よくわかったね、状況次第でどこへ行くか変わるということ。」
やはりそうか。選択できるなら地獄へは行かないよな。
「じゃあ、現実に戻る手段もあるということだね?」
「そうなります。」
死んだ後に第2のチャンスがあるとは。想像したことはあったが。
「ルールは説明してもわかりにくいだろうし、実際に感じてみると良いよ!ほら行くよ!」
小悪魔は小さな羽を広げ、僕の腕をつかんだ。
勢いよく飛び上がった。風が心地よく感じた。どうしてだろうか。
その後、花が散っていくのを眺めながら空を飛んだ。