第54話 白馬の王子様
―――3人は冒険者ギルドの目の前に到着し、早々と中へと入っていった。
ライト 「ただいまー!!」
ネイリー 「戻ったぞ」
リリア 「只今戻りました!」
ライトが勢いよく冒険者ギルドのドアを開けると周囲にいる人々と受付嬢のメルが喜びながら騒ぎ始める。
「ライトが戻ったぞ!!」
「俺はライトなら絶対に依頼を達成すると思っていたぜ!」
「いやいや!王族のネイリー姫や、回復能力所持しているリリアの嬢ちゃんだっているんだぜ?負けるはずがねーだろ!」
「ライト…無事で…無事でよかったなぁああ!!」
「ネイリー姫がサファイアローメン国の王族で良かったよなぁ!」
「リリアの嬢ちゃんも女神様のように回復でフォローしたんだよ!」
「やっぱりライト達はすげーな!」
メル 「ライト様!ネイリー様!リリア様!お帰りなさいませ!!ご無事でよかったです…本当に本当に…」
メルはライト達が中々帰ってくる事が無い日が続き余程、心配だったようで無事な姿を見た途端に安心し嬉し泣きしていた。周囲の人々は泣きながら喜んでいたり併設されている飲食店から酒や食べ物を頼み始めたりまさにお祭り状態だった。
3人は受付のメルに依頼達成を報告しようとしたが周囲の人々が飲み物や食べ物を勧めてくるのでとりあえずその場に合わせ飲んだり食べたり仲良く騒いでいた。
周囲の人々はブルー村はどんな所だったのか、そして食べ物はどんな物があったのか…など聞かれ3人は土産話としてブルー村の魅力を競う合うように話していた。
「ライト、今回の依頼は無事に達成出来たんだろ?」
ライト 「あぁ。ただ…俺達だけの力で達成出来た訳じゃないけどな」
「ん?お前より強い人が助けてくれたのか?」
ライトは回答に困惑していた。それは―――
―――【ブルー村滞在中の時】
ライディール 「3人共、今回の依頼を達成した事について私達12聖将の力を借りた…というのは伏せてくれ」
ライト 「え…?なんでだ?です?」
ライトの問いにライディールとスレンは深刻な表情で答える。
スレン 「12聖将が戦う程の相手…というのは『魔王軍』の敵だからです」
ライディール 「『魔王軍』が動き始めている情報などは一切ないのに、それ程の敵が存在する…と民が知れ渡ると恐怖と不安に怯える日々を送る事になってしまうのだ」
ライディールとスレンの返答にネイリーは頷きながら同意見だったようで王族の立場として賛同した。
ネイリー 「叔父上の意見に賛同です。中には恐怖と不安に耐え切れず自ら命を絶ってしまう人も増えてしまいますしね。それだけは避けたいです」
リリア 「聞かれた時はどう対処すればよろしいでしょうか…?」
リリアは困った表情をしながら質問をするとライディールは笑顔の表情で堂々と返答した。
ライディール 「白馬の王子様が助けに来てくれたと言えばいい!まっ!実際に私はネイリーの白馬の王子様だがな!ははは!!」
ライディールは表情がニヤニヤし笑いながら声を発していたが、スレンは一気に冷めた表情になり心の中で呟いていた。
スレン (先輩、歳を考えてから発言して下さい…。ネイリー姫に対しての発言は本当にドン引きの嵐です)
ライト、ネイリー、リリアは2人の意見を聞き入れ他の人には言わないよう約束をした。
―――【現在】
ネイリー 「白馬の王子様が助けてくれたんだ」
ネイリーはライトと冒険者との会話の間に割り込み話した。
「ネイリー姫の白馬の王子様!?…なんて素敵な話何ですか!!」
「ライトとは正反対の正義感溢れるイケメン青年なんだろうなぁ!」
ネイリーの話を聞いた周りの冒険者は『正義感溢れるイケメン青年』を想像しながら楽しんでいたが一方、ライトとリリアは無表情になりながら思わず内心で呟く。
ライト (ネイリーの叔父さんだけどな…)
リリア (ネイリー大好きの叔父さんなんだけどね…。ネイリーが話すと美化されるみたい…)
冒険者ギルドにいる人々は全員、3人の依頼達成を祝い飲んだり食事をし数時間が経ち土産話を済ましそろそろ受付のメルに報告しようとしていた。
ライト 「さて…メルさん、そろそろ依頼の報告をしたいんだけど…」
受付嬢のメルは冒険者ギルドの雰囲気に釣られ一緒にお祭りの気分を味わい、勤務時間の途中だった事を忘れていた。しかし、ライトに声を掛けられた瞬間にふと我に返り通常業務に切り替えた。
メル 「は、はい!こちらが依頼達成した報酬です!」
メルはあたふたと焦りながら急いで3人の前に今回の依頼達成の報酬を差し出し、ライトは30万シル、ネイリーは色々な種類の貝殻、リリアは魚の秘伝レシピを受け取ったと同時にブルー村での調査依頼の紙は任務完了と書かれた。
ライト 「30万シル!これで当分は生活が出来そうだ…」
ネイリー 「綺麗な貝殻だ…見た事のない物もあるな」
リリア 「これが魚の秘伝レシピ…!!…ふむふむ」
3人は今回の依頼報酬を契約魔法通りに分配し、目を輝かせながら心は満たされていたようだった。
ライト 「次はダイヤスファ国に行くんだよな?」
ネイリー 「ああ。当分はサファイアローメン国に帰れないと思った方が良い」
リリア 「じゃあ、一旦家に帰って後日出発した方が良いよね?」
ネイリー 「そうだな。明後日、朝の10時に集合しないか?私は一度、王宮内に戻り父上に挨拶を済ませる」
ライトは今までネイリーは王宮内から冒険者ギルドまでわざわざ通っていると思っていたようで首を傾け不思議な表情をしながら質問をした。
ライト 「ネイリーって王宮内からここまで通っているんじゃないのか?」
ライトの問いにネイリーは首を横に振り答える。
ネイリー 「いや、ここのすぐ近くの別荘から通っている。さすがに王宮内から頻繁に出入りをすると毎日遊んでいるのではないか…と王族の品格を疑われるからな」
リリア 「王族って何をするのにも窮屈なんだね…」
ライト 「俺も一度、家に帰って旅に向けて準備するか」
リリア 「私も家に帰って準備するかなぁ。ブルー村に結構滞在してたから久しぶりだし!」
3人は明後日の朝10時に冒険者ギルドに集合と約束を交わしそれぞれ久しぶりの家へと帰宅した。




