第19話 回復能力
ライト 「何かいるな」
3人は歩き続ける中、ライトだけその場で急に立ち止まり辺りを警戒するように見渡した。
ネイリー 「ん?どのあたりだ?」
ネイリーも周辺を警戒するように見渡し、2人が探してる間にリリアが大きな声で叫ぶ。
リリア 「ネイリー!!魔物が横からくるよ!!」
ライトとネイリーは戦闘態勢で身構えリリアが叫んだ方向に振り向くと亀のような姿をした魔物がネイリーに向って走り出していた。
ライトとネイリーが魔物に攻撃するも硬いせいか、中々ダメージが通らず2人は魔物から攻撃を受け身体にかすり傷のように残る。
ライト 「この魔物、硬すぎる!!」
ネイリー 「ああ!リリアの聖魔法で攻撃をしてもらおう!」
リリア 「今、魔物に聖魔法を詠唱するよ!『光の線!』」
詠唱すると光る線が一直線に魔物の方に放たれると、魔物に直撃し横たわる。その後は動く気配は無かったのですぐに治療に取り組むため、リリアはかすり傷が残っている2人の側に駆け寄る。
リリア 「ライト、ネイリー!今、傷を手当するよ!」
ライト 「回復能力はやっぱりいると安心するな」
ネイリー 「ああ。本当に助かるよ」
リリアは治療魔法を2人に詠唱し、傷口が塞がれる。
リリア 「ただ回復能力を使うと結構、私の身体に負荷がかかるからあまり使えないからね?」
治癒魔法を使ったせいか、リリアは少し疲れた表情をしていた。
ライト 「そうだったのか!?あまりリリアに負担をかけない戦い方をするよ」
ネイリー 「今日はもう日が暮れて夜になってきたから、近くの集落があるみたいだからそこで休まないか?」
ネイリーが指を差した方角には集落には家が数軒しかなくこじんまりとした場所だった。3人は集落の長と見える人に事情を話し、宿屋などが無いため安全そうな場所で野宿をする事にした。
辺りは既に日が落ち集落のたいまつが唯一の灯りの中、ライトは火をおこす。そしてリリアはマジックバッグから調理器具と食材を取り出し慣れた手付きで調理を始める。
ライト 「今日の夕食は何かな~♪」
ネイリー 「リリア、調理を任せてしまって悪いな。本当は私が作っても良いのだぞ?」
ライトはリリアの料理が待ちきれない表情で調理の工程を眺めていたが、ネイリーの発言を聞いた途端に表情は笑顔を保っていたが冷や汗を流していた。そして、リリアは調理の手を動かしながら口を開く。
リリア 「ネイリーは王族だから料理慣れてないでしょ?私は平民育ちで小さい頃から料理していたから慣れてるし、あんまり疲れる事も無いから大丈夫だよ。気にしないで」
ネイリー 「そうか。悪いな」
ライト 「……ホッ」
ライトは小声だが安心仕切った様子で思わず声が漏れる。そしてリリアが鍋でぐつぐつと何かを煮ている工程をネイリーは不思議に眺めながら質問をする。
ネイリー 「リリア、これは何を作ってるんだ?」
リリア 「今日わね、クリームシチューを作ってるよ!さっきここに住んでる人からバターと牛乳を売ってくれたんだ~」
ライト 「おおおお!!パンにつけたらうまいやつ!!」
ネイリー 「ほう…?ビーフシチューなら食べたことあるが…」
リリア 「まぁまぁ、出来てからのお楽しみで!」
鼻歌を歌いながらリリアは調理をしている工程の様子を2人は眺めていた。そして眺めながらライトは口を開く。
ライト 「なあ、ネイリー。聞きたい事があるんだけど…」
ネイリー 「ん?どうした?」
ライト 「さっきの敵って『魔物』って言ってたよな?」
ネイリー 「ああ、アレは魔物だな」
ライト 「俺がシルバー1に昇格したとき、魔物討伐で昇格したんだけど」
ネイリーはライトの発言を理解出来ず首を傾げながら返答する。
ネイリー 「…?シルバー1に昇格は魔物討伐が条件だな」
ライト 「俺が討伐した魔物って、グリーン村で倒した魔獣ゴブリンみたいに話していたんだ。でっかいイノシシだけど…」
ネイリー 「それは魔物ではない。魔獣だ…」
ネイリー (実際に見ていないが、大きいイノシシが話していたとすると獣人族のオーク族が魔獣化したのだろうな…。魔獣ゴブリンの時に『ゴブ』と変な語尾を付けていたのは魔獣化したオーク族と戦った事があるからか…。ライトの発言を予測すると恐らく語尾に『ブヒ』と付けながら話していたのだろうな)
ネイリーはライトから大きいイノシシとやらの話を聞き納得した様子だったが、リリアは調理をしていた手が止まる程、驚いた表情で2人の会話に追い付かない様子でいた。
リリア 「え!?待って待って!!魔獣を倒したってどういう事!?魔獣って倒せるの12聖将の特殊能力が無いと倒せないはずだよ!?」
ネイリー 「リリア、よく私もわからないがライトには特殊能力を持っているみたいだ。」
リリアは庶民校の授業で教わった事も無い知識なので余計に頭が困惑し、次から次へと問いただすように質問を投げる。
リリア 「12聖将以外に特殊能力扱えるだなんて話、今まで聞いたこともないよ!?12聖将に任命されてようやく扱える能力じゃなかったの?」
ネイリー 「私も驚いた。王宮内の書物にも記載されていない程の無い出来事だ」
ライト 「俺の持ってる能力はそんなに珍しい能力なのか?」
リリア 「その能力無しでは魔王軍に対抗出来ない程の力だもの。しかも12人しか使えない貴重な能力だよ?本当に使えるの?」
ネイリー 「昨日、私は実際にライトと共に魔獣を倒せたのだから確実と言っていい程の特殊能力だろう」
リリアは疑うような目で質問をするが、ネイリーは確信を付いた表情で返答する。そしてライトは疑問を抱いてた点について質問をする。
ライト 「魔物と魔獣の違いって何なんだ?」
先程まで冷静さを保っていたネイリーだったがライトの問いに深刻な表情に変わり説明をした。
ネイリー 「魔物は昨日、魔獣ゴブリンが周辺のゴブリンに微量の闇を纏わせただろう?微量の闇だと触れてもそこまで害は無いんだ。長時間触れ続けると話は違うがな。まぁ、魔物は簡単に言うと短時間で力でねじ伏せれば別に大した事は無い。魔獣は人間の言葉も話せて自分の意思があり知力も高いんだ。そして闇の力を使いこなせて強い」
深刻な表情でネイリーが説明をするとライトも真剣な表情で聞き、更に質問をする。
ライト 「魔獣の闇に触れるとどうなるんだ?」
ネイリー 「12聖将の『特殊能力』と『回復能力』で治療が出来るとも聞いたことがあるがな。ただ12聖将もいちいち治療の相手にする暇はないらしい…。大抵、寝たきりのままになりほぼ命はなくなるな。たまに死体すら消えてしまう人もいるらしい」
ネイリーが魔物と魔獣の違いを説明をしていると、リリアは暗い表情になり無言になる。
リリア 「……」
ライト 「リリア、どうしたんだ?暗い顔をしてるぞ?」
リリアはライトに声を掛けられた途端、我に返りいつもの明るい表情に戻る。
リリア 「ううん、気にしないで。クリームシチュー出来たから食べよ!!」
リリアはクリームシチューを器に移し、2人に器とパンを渡す。3人はクリームシチューが入った器とパンを目の前に置くと揃って挨拶をする。
ライト 「美味しそうだ!いっただきまーす!」
ネイリー 「本当に美味しそうだ。いただきます」
リリア 「いただきます!沢山作ったから、おかわりあるよ!!」
ライトとネイリーは『クリームシチュー』を口の中へと運び至福な表情で食べていた。リリアも口の中へと運び表向きの表情は微笑んでいたが、昔の記憶を思い出していた様子で心の中で呟く。
リリア (私のお父さんとお母さんはあの時、本当は……)




