第15話 ネイリーの料理
リリア 「あ!その依頼、私も受けようかなって悩んでたんだ!」
ライト (た、助かった!何とか話を切り替えられた!リリアありがとう!!)
ライトは安堵する。リリアが神々しく見え目を輝かせながら手を合わせる。
リリア (何かライトが目を輝かせながらこっちを見てる…)
ライトの奇妙な行動にリリアは首を傾ける。
ライト 「リリア!この依頼はシルバー1以上が条件だぞ!」
冒険者ランクバッジをライトに見せつけられるリリアだがニヤッとする。リリアは腰にある袋から冒険者ランクのバッジを取り出し、ライトの前へ突き出す。
リリア 「ふふーん!私だってこの前シルバー1に昇格したんだー!」
ネイリー 「庶民校の能力平均がどれ程なのか私にも予想が出来ないな…」
あっさりと魔物を倒す程の能力所持者が、貴族ならばすぐに理解出来るが庶民で2人も存在すると目の当たりにしたネイリーは言葉を失う。
ライト 「そういや先生が俺らの学年は庶民校を設立してから一番優秀だ~って言ってたなぁー!」
リリア 「うん。そんな事を話していた気がする。ワイワイ楽しんでいただけなんだけどねー!」
2人は顔を合わせ話すと学園生活の話に花を咲かせ互いに笑う。
ネイリー (貴族校は真面目だったのだがな…)
笑う2人を傍目から見ていたネイリーは、貴族校での学園生活の記憶を思い出す。だが、ライト達のように良い思い出など無く、気が重くなった所でため息を吐き思考を止める。
ライト 「それより、リリア!その依頼の報酬で何か欲しい物があったのか?」
リリア 「私、料理好きだからその魚の秘伝レシピが欲しいなって!」
ライトは手を叩く。
ライト 「あぁ!リリアは庶民校の寮施設で料理を作って俺にもくれたよな?」
リリア 「うん!皆にクッキー作って配ったよね!ライトは料理下手くそだから夏休みと冬休みにはたまに、ブロンズ街で集合して私の作ったシチューを分けてたっけ。料理は学校で長期休暇の時、実家に帰った時にお母さんと一緒に作ってたんだ~」
笑顔で話すリリアだが、どことなく寂しい目をする。
ライト 「リリアは料理、得意だもんな」
料理の話題で盛り上がっている最中だが、料理が苦手なライトはふと考え込む。
ライト (そういや他国とか長い旅になるとやっぱ野宿とかする時あるよな。そんな時には料理を作らないと…正直、俺は苦手なんだよな。ネイリーは料理どうなんだろう?)
隣に立つネイリーの方へ振り返る。
ライト 「なぁ。ネイリーは料理した事あるのか?」
ネイリー 「あるぞ。料理長と一緒に作った事があるのだが毒を盛られてしまってな」
ライト 「ど…毒!?」
生々しい話にライトとリリアは驚愕する。
ネイリー 「料理が完成して料理長に味見をしてもらったのだが急に倒れてしまってな。まぁ、治療をして幸いな事に命の危険は無かったのだが3日間は寝込んでいたな。私を妬んで誰か毒でも入れたのだろう。全く」
リリア 「へ~!王宮内で料理に毒を盛られるって話、本当にあるんですね~」
毒を盛られた話をリリアは真に受けていたが、ライトはハンカチの件でもしや…と考え込む。
ライト (あの刺繍の出来から予想すると、料理もそこまで酷いのか!!やばい、このまま他国に行くと…!!)
ライトは目を上に向け妄想する。
———【妄想】
依頼を受けた2人は歩き続けるが、辺りは段々と暗くなりライトは足を止める。
ライト 「暗くなってきたな…。今日はここで野宿するか」
ネイリー 「ああ。そうだな」
2人は安全地帯で足を止め野宿の支度をする。
ライト 「はぁ、お腹空いた…」
ネイリー 「しょうがない、ここは女の私にまかせろ」
ネイリーは立ち上がると予め購入していた食材を取り出し調理をする。
———30分後
ネイリー 「ライト。出来たぞ」
仕上がった料理を底の深い器に移し、ライトに手渡す。
ライト 「おー!ネイリー、ありがとうな!どれどれ…」
器を受け取ったライトはスプーンで料理をすくい何の躊躇も無く口の中へと運ぶ。
ライト 「グッ……グハッッ!!!」
ライト・フォーレン
ネイリーの料理を食し16歳で死亡。
—————————
妄想を終えるとライトは頭を抱え、汗をダラダラと流す。
ライト (うわああああああ!!!ダメだダメだ!俺の人生、刺繍と言い次はネイリーの料理に殺される!!料理出来る人を誰か連れていかないと…誰か…!)
頭を抱え必死に打開策を考えているライト。ふと顔をあげると、呆然とこちら側を見つめるリリアが視界に入りライトは力強く両手を掴む。
ライト 「リリア!この依頼一緒に受けようぜ!!」
リリア 「え、良いの??」
急に提案され、リリアは思わず気の抜けた声を出す。
リリア (何かライトの顔が凄い必死なんだけど……)
目の前でライトは汗をダラダラと流しながら、まるで何者かに命を狙われているかのように必死な顔で何かを訴えている事に疑問を抱く。
ネイリー 「私は『色々な種類の貝殻セット』が貰えるのであれば構わない」
リリア 「私は『魚の秘伝レシピ』を貰えるのなら良いよ!」
ライト 「イヤイヤ!普通そこは金だろ!!」
依頼の報酬分配で話しが纏まり、3人は共同で依頼を受ける事となった。
ネイリー 「ブルー村まで少々距離があるな…。何日かは掛かるだろうから、準備は万全の方が良いだろう」
リリア 「そうですね。準備万全にしてからまた後程、集合しませんか?」
ネイリー 「リリア、私は王族だが身分は気にせず普段の対応で構わない」
言葉を失うリリアだが、口角が徐々に上がり笑顔になる。
リリア 「は、はい…。ううん。ネイリー!わかった!」
笑顔で返事をするリリアにネイリーは微笑む。
ライト 「んじゃ…今は11時過ぎだから15時に冒険者ギルド集合で良いか?」
ネイリー 「わかった」
リリア 「おっけー!」
3人は集合場所と時刻を約束すると冒険者ギルドを後にする。一時的な別れを告げると各々、依頼の支度を進める。
———【ブルー村】
青く輝く海が広がるブルー村。そんな海の上で1人の男性は船の上に綱を上げるが、収穫は僅か。
「今日も不漁…か。ついこの間まで大量だったのになぁ…。このままじゃ、生きていけるのかどうか」
漁師は青い空を見つめながら呟く。




