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お題シリーズ4

顔がすべて

作者: リィズ・ブランディシュカ



 私は自分の部屋で鏡を見つめる。


 そこにうつったものを見て、大きなため息が出た。


 鏡は嫌いだ。


 自分の嫌いなものを、隠さずうつしだしてくるから。


 大して可愛くもない自分の顔を見つめる。


 どうしてこんな顔にうまれついてしまったのだろう。


 どうして自分の体は好きに選べないのだろう。


 それは親だってそうだ。


 私の親も、正直あんまり可愛くない。


 自分の顔にコンプレックスを持っていて、人前にあまりでたがらない。


 きっと遺伝してしまったんだ。


 自分の顔が、可愛くて美人だったら、どんなにいいか。


 そうしたら、悩みごとなんて抱かずにすんだのに。


 勤めている会社で、顔をからかわれたり、笑われたりする事なんてなかったのに。


 そう思った私は、がっかりした気持ちで、鏡の前から離れた。





 あんな事を考えていたからなのか、私はよくあるなりゆきで異世界転生をして、美人へと生まれ変わった。


 そこにいたる経緯は色々あったけれど、関係ないし、特に面白くないし、美人でもなかった頃の私がただ狼狽していただけなので省く。


 第二の人生で可愛くなった私は、様々な人にモテモテだ。


「○○ちゃん、一緒に遊ぼう」


「だめだ! ○○ちゃんは、俺と遊ぶんだ」


「いーや、俺だよね。○○ちゃん」


 様々なというか、主に男性にだけど。


 私は幸せだった。


 前々から思っていたけどやっぱり顔が全てなんだと思った。


 顔さえよければ、みんな親切にしてくれるのだ。


 そんな私は、以前の自分のような少女を見かけた時、残酷な一言を言っていた。


 周りの子にイジメられて、石をなげられてふさぎ込む少女。


 普通の正しい人間なら、その肩を抱いてなぐさめる所だけど。


「不細工な顔でうまれたんだから、そうなるのは当然よ。恨むなら運命を恨む事ね」


 それはどうしようもならない事で、ずっとそういう環境に置かれ続けるものだと、その少女に向けて言ったのだった。


 すると、その少女は私に対して怒った。


「そんな事分かってるわよ! 言わなくてもいいでしょ!」


 なきながら走り去っていく少女。


 その涙にぬれた顔は、以前の私にそっくりだった。


「分かるわよ。分かるから。私がそうだったから、そう言ったんでしょ。早く諦めなさいよ。大人になっても希望なんて実りはしないんだから」


 私はそれ以上、彼女を助けない。


 だって、不細工だった私に誰も手を差し伸べてくれなかったから。


 私は遠くなる少女へ背中を向けて、その場から去っていった。



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