宇宙の古事…記
色々ごめんなさい。今ならまだ時間を無駄にしなくてすみます。
世代移民宇宙船が母なる地球を飛び立って数世紀。閉鎖された船内で、あるはずのない疫病が猛威をふるった。初代の人々の体に潜んでいた無害なウイルスは地味な変異を重ね、突然牙を剥いたのだ。
世代を経ても維持していた高度な医療を持ってしても成すすべはなく、人々は命を落としていった。人種的特性から感染を免れた最後の二人ーーー極東の島国(言葉の意味は歴史を学んでいた二人にも概念としてしか理解できなかったが)の血を引く男と女は、遥か過去の人々から見れば新たなるアダムとイヴか、あるいは。
伊邪那岐命と伊邪那美命……
そう呼ばれるのがふさわしいかもしれない。
これから語られる物語は、彼らが子をなし再び人口を増やし、やがて辿り着いた地球型植民惑星で「宇宙の古事記」として知られることになるだろう。
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