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ヒトの時に学んだ、やりがい。というやつかな、一番近いのは

 学科を受け、運転の実習を行い、加害者・被害者体験を受ける3点セットを繰り返し、ついに第一段階をクリアするための修了検定に突入する。


 入校した霊は、7割は最初の地獄しみゅれーしょんたいけんで消滅してしまう。それを見て生き残ったのんびり霊は、必死になって授業を受けるようになる。

 なるほど、これが「杀一儆百」、一人を殺して百人に警告するというやつか。

 初日を乗り越えた精鋭は、みな質が高く、卒業の意思が強い。というより、無事生き残って呪いを解いてほしい一心なのだろう。


 修了検定の前、ウリエル校長に行って聞いてみた。


「ウリエルさん、この教習所ってチキュウニホンに似てますよね。何か参考にしました?」


 ウリエル「おお! そこを質問してくれた学生霊は初めてだ。どこから話そうか…」


 ウリエル「2022年1月…5日だろうか。チキュウニホンでとある霊が天界に来たんだ」


 ウリエル「トチギという地方で4つの自動車教習所を創設して運営した会長って言っていた。名前は聞いていない」


 ウリエル「我は昔、ひょんなことから下界の人の子に転移することがあり、そこで通ったのが岡本台自動車学校だった。会長はその創設者であった」


「ほう、奇遇ですね」


 ウリエル「その話を聞いて、我も卒業までの経緯をはなしたら、意気投合してな。教習所のノウハウを教えてくれたのだ。そこから、我は天界に交通事故を減らすための転生向け教習所を提案した」


 ウリエル「今までは、重症者だけ神が直々に教訓と矯正を行ってきたが、ここ200年でチキュウの異世界では車の運転が急増してな。裁ききれない数の霊が押し掛けるようになった」


 ウリエル「指導のキャパを超えた神は、民間の一般天使でも違反者たちを収容、講習できるように教習場を増やした」


 ウリエル「そこで我は、下界の経験と会長の助言を元に、この天界教習所を作ったわけだ」


「この教習所がなかったときは、やはり転生後に交通事故は多かったですか?」


 ウリエル「まだ母数は少ないが、重大違反者の直転生と、教習後転生では再犯死率は2割まで減った。かなりの成果は出ている」


「なるほど。天界も苦労しているのですね」


 ウリエル「なあに、これは我の道楽よ。天使は神の使者であり、掟に従っていれば後は自由に暮らしたり、下界に転生する事ができる」


 ウリエル「何百体卒業させたって、我に直接の恩恵はない。ただの自己満足である。一般魂なら、こんな無駄に霊力を使うくらいなら、好きなことをやるだろうな」


 ウリエル「だが我はヒトのカンジョウとやらに感化されたらしく、事故死を減らす使命を感じて行動するようになった」


 ウリエル「ヒトの時に学んだ、やりがい。というやつかな、一番近いのは」


「すばらしい…。見てきた知人や友人より、崇高な思想んの持ち主ですよ」


 ウリエル「君が卒業できた後が、とても楽しみであるな。そろそろ我は行くぞ」


「はい」


 このウリエル会長は、地上の教習所でどのような経験をしてきたのか興味を持った。俺がやるべきは、直近の修了検定を合格して、第二段階にいく事である。



 修了検定の教室に集まったのは4体、俺と幸恵さん、強面のおっさんと陰鬱な少女である。




 寮長ルシファー「おっし。これから修了検定を始めるぞ。席をくっつけて2体のペアを作れ」


 ルシファー「っていっても4体しかいないからな。適当にペア組んでさっさと始めんぞ、おらぁ!」


 (まさかのゴリマッチョ寮長!?)


 天界運転講習合宿卒業まで、あと7日。

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