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お二人、おつかれさまでした! 生存率は6割、とても優秀な組ですよ

 ガブリエル「はい。一限目はこれで終わりです。10分の休憩が終わったら、また席についてください」


 「近藤三郎こんどうさぶろうさん、まだ消滅していませんよ。おきてくださーい!」 ペシペシ



 三郎「はっ、ワシは…。ああ、ここは天界か」


 三郎「…。もういやじゃ」


 幸恵「なかなか、苦しいものだねぇ…」


「無理無理、かたつむり! もう下界に転生したい! 運転なんかもうどうでもいい!」


 カシエルは消えていた。あと10分もすると、悪魔が返ってくる。逃げたら終わり、逃げなきゃ地獄の50分。選択肢がない。


 残った時間は、ひたすら精神を落ち着かせて霊力を復活させることにした。マラソンで走り切った後に、またすぐ走らされる感覚だ。ただ、次の苦痛を乗り切れるだけのスタミナがほしかった。




 10分後、三郎さんは戻ってこなかった。残り2人。

 残り二人の運転事故疑似体験をギリギリで耐え、生存できた。激痛と死のタイミングが分かっていると、心構えができるので多少緩和された。

 死んだらループする漫画が好きだったが、アレは発狂レベルである。へらへら異世界を楽しんでいるが、死の都度コレをやらされたら俺は廃霊になってしまう。





 ガブリエル「お二人、おつかれさまでした! 生存率は6割、とても優秀な組ですよ」


 (えっ、もっと消滅しちゃうの?)



 ガブリエル「酷い時は10人くらいで疑似体験して、残ったのは一人だったこともあるのです」


 (安全運転のためじゃなくて、ただの殺戮マシーンじゃねぇか!)


 カシエル「うーん。この装置は、耐性テストでもあるのです。弱くて折れちゃう霊を訓練しても、最後の卒検で抹消するので、ふるいに落とすのです」 (ニッコリ)


 天使のような、悪魔の笑顔だ。


「幸恵さん、疑似体験大丈夫でした?」


 対面して間もないが、地獄の二時間を共に乗り切ったことで、戦士としての共感が芽生えた。

 まだ80の老婆にしか見えないが、ウリエルが言った「本人の心もちで若返る」という言葉を思い出して、なんとかヒロインにできないかと模索した。


 幸恵「痛みには慣れっこですから。佐藤さん、お若いのにねぇ。前世は大変でした?」


「ええ。ちょっとトラックで二人ひいちゃいまして」


 幸恵「私は75の時にアクセルとブレーキを間違って、家族パーティの場に突っ込んでしまって。可愛い孫や娘他たちを全て失いました」


 幸恵「死んでも償いきれません。病院で私は飛び降りて幕を下ろしました」


 (めっちゃ重くね? ここに来てる人、全員こんな惨状を経験した魂たちなのか)


「そうでしたか。この教習所で一緒に卒業して、来世では安全運転をしましょう」



 幸恵「ええ。そうですね(涙目ほろり)」



 天界には昼夜の概念はなく、地球の24時間体制を慣例として使っている。そのほうが、死んだ霊たちが馴染みやすく、理解しやすいのだ。実際は時間は高度な意識行動をとれば過去にも未来にも行ける便利な能力だが、死後すぐに転生する「優良転生者」は時間超越をおぼえることなく下界に戻って転生してしまう。

 悪質で違反を続けた「違反悪霊転生者」は俺たちのような、講習を受けさせて改善させているわけだ。

 世界の運転免許と再犯防止システムとそっくりではないか。



「今日の実技と学科は終わったので、寮に戻りましょうか」


 幸恵「はい。いきましょうか」


 手を握る意識をすると、相手にもその好意は自然と伝わる。手と手のぬくもりはないが、意識を共有しているという安心感は、人間界にはない心地よさがあった。



 「えっ、相部屋?」


 ついた先は、3つのベッドが横に並んだ質素な和風の部屋だった。時間はまだ19時。身支度は一切ないので、ぽつりと真ん中のベッドを隔てて座り込る二体。


 幸恵「…」


 天界運転講習合宿卒業まで、あと12日

こんな展開があったらいいな! と思いながら書いてましたが、

コレって人々がイメージする地獄に近いのでは? と疑うようになりました。


悪いことしたら地獄、助けた良い人は天国、果たして正解はどうなっているのでしょうか?

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