表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/40

第三十二話 奴隷と元同僚と女店員に囲まれて生きた心地がしない

悪夢の三者会談に巻き込まれたカール。

多勢に無勢な上に女性が苦手なカールに、勝ち目など欠片もないのであった。


どうぞお楽しみください。

「……」

「あ、師匠、着終わりました?」

「あ、あぁ、まぁ……」


 リビングの入口から顔だけを出したカールは、気まずそうにリビングを見回す。


「カール殿。顔色が優れないようで何よりだ」

「お、おうメジク、一カ月振り……」


 メジクの不穏な挨拶にも、ツッコむ余裕すらない。


「カール先生」

「ど、ドレシーさん……!」

「私のお持ちした服、着てくださったの?」

「は、はぁ、まぁ……」

「まぁ嬉しい! 見せていただけます?」

「……はい……」


 ドレシーの観念したカールは、その姿を見せた。


「まぁ! 思った通り、フリルとリボンがいい感じに映えてます!」

「奥歯を噛み締め、必死に耐える表情がたまらなく良いな!」

「うわキツ」

「ケミィ……! 聞こえてるぞ……!」

「まぁまぁ師匠。褒められても微妙でしょうから、率直な感想を受け止めておくのも大事ですよ。ドレシーさん、カツラとかお化粧とかはしないんですか?」

「うーん、してもいいんだけど、そうすると普通に女の人に着せてるのと変わらなくなっちゃうでしょ? 私は『男の人が女性の服を着る』っていうミスマッチの先を見たいの」

「た、探求者ぁ……!」


 小声で呟くのが精一杯のカールの袖を、てててっと駆け寄ったケミィが小さく引く。


「どうしたんですか? いつもだったら『業が深いなおい!』とかツッコみますのに」

「……いや、ドレシーさんの性癖に頭がついていかない……。それと慣れない服着てる心細さが……」

「着替えたいですか?」

「……当たり前だろ……。一刻も早く着替えてぇよ……」

「わかりました! 新しい服をお持ちしますね!」

「ちょ、違」

「ドレシーさん! 師匠がお召替えをご希望です!」

「まぁ! 嬉しいです! カール先生は細身だから女性向けの服でも似合うってケミィちゃんが教えてくれたから、たくさん持って来てるんです!」


 ドレシーの言葉に、カールの声にいつもの勢いが戻った。


「やっぱりお前かケミィ! いくらドレシーさんが男を女装させるのに目覚めたからって、俺のところにすぐ話が来たのがおかしいと思っていたんだよ!」

「お褒めに預かり光栄です」

「褒めてねぇ! 全っ然褒めてねぇ! 俺をいじって遊ぶのもいい加減にしろ!」

「遊んでなんかいないですよ。師匠のハーレム完成のために、いつだって真剣です」

「キメ顔やめろ! めちゃくちゃ腹立つ!」

「か、カール先生……?」

「!」


 おずおずとかけられたドレシーの声に、我に返るカール。


(しまった! ついいつもの勢いで声を荒げちまった! 普段穏やかな印象の俺が怒鳴ってる姿なんて見せたら……!)


「素敵……!」

「はい?」

「可愛らしい服で打ち消されがちな男らしさが見えて、とても素敵なバランスです!」

「え、あ、はぁ……、ありがとう、ございます……?」

「いつもの物静かな感じより、その方が服も映えます! 是非次の服もその男らしい口調と態度でお願いします!」

「……もう好きにしてください……」


 何もかもを諦めた顔で項垂れるカール。

 その様子にメジクとケミィが目を輝かせる。


「おぉ! いい感じにげっそりしているなカール殿! 『それでも耐えなければ……!』という悲痛な顔をこちらに向けてくれ!」

「うっせぇ! 万能薬は市販用には作っていません報告は以上です帰れ!」

「かなりストレスが溜まってますね。これは今夜あたりいよいよ……?」

「期待しても無駄だ! 暴力になんか屈しないからな! もうとにかく早く終わらせたい! 何でも着るから早く持って来い!」

読了ありがとうございます。


ん? 今何でも着るって言ったよね?

カールの地獄はまだ続きます。


次話もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
a6im8fdy9bt88cc85r5bj40wcgbw_slv_go_b4_24jw.png
― 新着の感想 ―
[一言] そして、変な服を持ってくると。
[良い点] 暴力になんか屈しない、これほどこの言葉が真逆の意味で使われたことがあったでしょうか。 何でも……カールさん、ムダ毛のないつるつるの脚イメージなので、脚が出るデザインの服とかいいかも知れな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ