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第三十一話 奴隷が持って来た服を着たくない

服屋の女店員ドレシーが、男を女装させる楽しみに目覚めたと聞き、戦々恐々のカール。

しかし逃げたら逃げたで厄介な事になるのは確実なので、立ち向かうしか手はないのであった。


どうぞお楽しみください。

「ご主人様、起きてください」

「……んむ……。あとごふん……」

「駄目ですよ。昨日お伝えした通り、今日はお客様が来てるんですから」

「……おきゃく……?」

「そうですよ。メジクさんとドレシーさん、お待ちですよ」

「!」


 カールは凄まじい勢いで跳ね起きた。


「しまった! 早起きして対策をと思っていたのに! 何で寝る前の決意が維持できないんだ! くそう、布団に何か仕込まれてるんじゃないか!?」

「はいはい、言い訳はいいですから、早く着替えてください」

「って言うか、朝食前に集合とか、そもそもの約束がおかしいんだよ! 昼からでいいじゃんか!」

「いやー、メジクさんもドレシーさんも、できるだけ時間をかけたいと仰るので」

「何に!? 何にそんなに時間をかけるの!?」

「それはお楽しみですよ」

「全然楽しみじゃない! むしろ恐怖! 話聞いてからずっと続いてるんだよこれ!」

「すみません、ドレシーさんの話を内緒にしておいた方が、期待ができて良かったですね」

「期待が高まったところで女装の話をされたら、高低差で死ぬ! そういう意味では感謝するべきなんだろうけど! ……ん? ケミィお前……、何、持ってんの……?」


 カールはケミィが小脇に抱える見覚えのない色の布に、恐怖を覚える。


「俺ライトグリーンの服なんて持ってないはずなんだけど……」

「今日のご主人様の最初のお召し物です」

「最初のって何だよ! もう怖い! 今の時点で怖い! 聞きたくないけど聞かないと前に進めない! それってまさか……」

「ドレシーさんおすすめのゆったりふんわりワンピースです」

「いやぁ! それで朝を狙ってたのか! 寝ぼけて着るとでも思ったか!」

「ご主人様の寝起きの悪さならいけるかなーと。駄目ならドレシーさんが胸を寄せながら『お・ね・が・い』って言ったら着てくれますよね?」

「そんなわけないだろ! くそう、馬鹿にしやがって!」

「じゃあ試してみましょうか」

「いや待て落ち着け。……わかった。着ればいいんだろ! 着れば!」

「!」


 カールの諦め切った答えに、ケミィは目を丸くした。


「ど、どうしたんですか!? ご主人様なら豊満な胸を凝視できるチャンスを逃さないと思って、ドレシーさんには下話を通しておいたのに!」

「そんな仕込みまでしてたのお前!? 段々タチ悪くなってきてやがる!」

「強情なご主人様が顔を赤らめながら首を縦に振る様を見守るつもりでしたのに!」

「だと思ったからだよ! どっちにしても着るまで終わらないんだったら、被害を最小限にするまでだ!」

「男らしい発言ですけど、する事は女装、何だか面白いですね!」

「俺の人生はお前を楽しませるためにあるんじゃねぇからな! 勘違いするな!」

「ツンデレですか?」

「お前に対しては常にツンでいる事に決めた! 今決めた! とにかく服をよこせ!」

「はいどうぞ」


 差し出された服を広げ、


「うおぉ……」


 そのフリフリ感に絞り出すような声を上げるカール。

 しかし意を決して寝巻きを脱ごうとし、はたとケミィの視線に気がついた。


「お前いつまでいるんだ! 着替えるんだから出て行け!」

「ご主人様一人で着れないと思いましてお手伝いを」

「着た事ないけど頭と袖通すだけだろ! 馬鹿にしやがって! リビングで待ってろ! あ! メジクやドレシーさんに余計な事言うなよ! すぐ行くからな! いいな!」

読了ありがとうございます。


カールの長い一日が始まる……。

地獄の方が幾分かましに思える一日が……。


次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 嫌いなものから食べて好きなものをご褒美に残しておくように、苦手なことや嫌なことから先に片づけるのは正しいのですが、それが女装というのがなんとも締まらなくて良いですね。 男らしく潔く女装する…
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