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第十四話 奴隷がいると風呂にくつろぎはない

ケミィに言われるまま、筋トレを行うカール。

かいた汗を流しくつろげるはずの風呂も、ケミィがいるとくつろぎとは無縁になるのだった。


どうぞお楽しみください。

「……ぐぅ、だ、駄目だ! ここまでだ……!」

「腕立て五回でギブアップですか。想像以上ですね」

「仕方ないだろ! 身体を鍛えるなんて初めてなんだから!」


 へばりながら抗議するカールに、ケミィは優しく首を振る。


「いえ、想像以上というのは、五回もできると思ってなかったって事です」

「どこまで弱く見積もられてるの俺!?」

「二回目の途中で『もうむり〜』ってへたり込むくらいかと」

「女子か! しかも若干男の目を意識してる女子じゃんか! くそう、息を吐くようにコケにしやがって……」

「悔しいですか? そうしたら今鍛えた成果を私の身体に存分に叩き込んで」

「たった五回の腕立てで何の成果が現れるんだよ! お前ほんと隙あらば自分の趣味をぶち込んでくるなぁ!」


 起き上がったカールに、再び首を振るケミィ。


「趣味ではありません。ライフワークです」

「人様から後ろ指差されるようなもんをライフワークにすんな!」

「大丈夫ですよ。この場合、私よりご主人様の方が後ろ指差されますから」

「だから言ってんだよ! 俺と関わりのないところで思う存分後ろ指差されてくれ!」

「なら早く万能薬の製法を教えてください。早く早くー」

「さて風呂でも入るかー」

「むぅ、逃がしませんよ」


 立ち上がったカールの袖を、ケミィはきゅっと掴んで見上げる。


「は? お前何を?」

「一緒に入りましょ?」


 だがケミィに向けられたカールの視線は、冷たいものだった。


「断る」

「……まさか全く動揺もしないなんて……。ここは『な、お、お前何を言ってんだ……!』とあわあわするはずなのに……」

「俺の中のお前の認識が『手足の生えた喋る爆弾』だからな! ドキドキがあるとすれば、それは恐怖でしかないんだよ!」

「こんな可愛い女の子を爆弾呼ばわりだなんてひどいです」

「今までの行動振り返ってから言おうな?」

「まぁそれはさておき」

「さておくな!」


 袖から手を離し、カールの腕に絡み付くケミィ。


「男の人にとって、女の子に背中を流してもらえるって、結構ときめきません?」

「ご、語感だけで誤魔化そうとしても騙されんぞ!」

「肌と肌との触れ合い。お湯とは違う温もり、お互いが肌と共に欲望をさらけ出す瞬間……」

「そ、そんな事言っても、お、俺の考えは変わらん!」

「えー、血の処理とか楽なのにー」

「何させる気だお前!」


 その一言に、顔の赤さを照れから怒りに変えて、カールはケミィの手を振り解いた。

 ケミィはにっこり笑って手を広げる。


「どっちでもいいですよ? さぁ遠慮なくどうぞ!」

「くそう、言われなくても二パターンともわかる自分が悲しい!」

「成長しましたね」

「毒されてんだよ! どういう立場だお前! いいから俺は風呂に入る! 内側からつっかえ棒を入れるから、後から入ろうとしても無駄だからな!」

「反応が乙女ですね」

「うっさい!」

「じゃあ私はお掃除してますんで、ゆっくり入ってくださいね」


 にっこり微笑むケミィに、カールはジト目を向けた。


「……言っておくけど研究室には昼飯の前に鍵をつけたからな。工具は研究室にしまったし、鍵は風呂に持ち込むから、風呂の間に侵入を試みても無駄だぞ」

「ひどい!」

「ひどくない! 俺は身体洗ったらすぐ出るからな! もう本当にすぐ出るからな! 余計な事するなよ! いいな!」

読了ありがとうございます。


幼児の親より切迫したお風呂タイム。

おそろしく早いカラスの行水……。

俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。


次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 二人の掛け合いのテンポが凄くいいですね。 ただ、カールさん、ツッコミを入れ過ぎて喉がかれてしまわないか心配です(笑) それにしてもケミィちゃん、血の処理とか楽って本当に何をさせる気だったん…
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