第十三話 奴隷がいるとふて寝する暇もない
ほのかな恋心を寄せた服屋の女店員・ドレシーが彼氏持ちと知り、落ち込むカール。
しかし失意のふて寝はケミィによって、当然のように阻まれるのであった。
どうぞお楽しみください。
「ごちそうさま」
「お粗末様でした」
「……お前本当に料理うまいな……。この、鶏肉の、プルプルしてるやつ……」
「水晶鶏です」
「水晶鶏って言うのか。さっぱりしているけどパサパサしてないし、甘辛いタレと絡んですごく美味かった」
「それは良かったです。タンパク質が豊富なので、身体にも良いんですよ」
「そんな事まで考えて作ってくれてるのか……」
ほんのり温かい気持ちが胸に広がるカール。
「攻撃力と持久力を高めるには、筋力アップが一番ですから!」
「学習しねぇなぁ俺も!」
ケミィの満面の笑みに、カールは食べた貝に砂が入っていた時のような微妙な表情を浮かべる。
「さぁタンパク質を摂ったら筋トレです! 筋肉がご主人様に痛めつけられるのを待っていますよ!」
「言い方ぁ! 俺の筋肉にまでお前の趣味嗜好を押し付けるな!」
「だって筋肉は傷ついて強くなるんですよ?」
「それはそうだけどよ……」
「今のご主人様の心みたいに!」
「俺が傷ついてるって自覚あるなら、もうちょい思いやりのかけ方とかあるんじゃねぇかなぁ!」
「だからこうして励ましてるじゃないですか」
「励ましてるつもりだったの!? 反撃を期待して殴ってるとしか思えなかったんだけど!」
「……ご主人様、エスパー?」
「くそう、正解かよ! 外れていてほしかった!」
悔しがるカールに、ケミィはにっこり微笑む。
「じゃあ筋トレしましょうか」
「流れも何もあったもんじゃねぇな! やるかこの流れで! そもそも俺はさっき昼寝するって言ってたよな!?」
「フラれたからふて寝するんでしたっけ」
「ダウンしてる相手に躊躇なく追撃をぶち込むな! 気付いていても言わない優しさってのを学べ!」
「でも筋肉ついたら骸骨呼ばわりされなくなって、彼女ができるかもしれませんよ?」
途端に勢いが弱まるカール。
「……そ、そんな言葉に騙される俺だと……」
「ぐらんぐらんに揺れてますね。まぁ私としては、朝食がそろそろ効いてくる頃だと思うので、、ご主人様の獣化を待つのもいいですけどね」
「食べてすぐ寝るのは身体に悪いしな! 少し運動したい気持ちになってきたぞ!」
「わーい! ご主人様チョロ格好良い!」
「挑発してんだか褒めてんだかわからん呼称をやめろ! で、何からやればいいんだ!?」
怒りながらも素直に教えを乞うカールに、ケミィは指を立てて答える。
「パンチ力を高めるなら腕立て伏せと背筋、キック力を高めるならスクワットですかね」
「芽生えかけたやる気を刈り取ろうとするな! とりあえず上半身を鍛えて貧弱なイメージを変えていく事にする!」
「パンチ力アップですね!」
「違う! 期待に満ちた目でシャドーボクシングをするな! ……えっと、腕立てのやり方ってこうだっけ? よし! 始めるぞ! ……だからシャドーをやめろって!」
読了ありがとうございます。
本来は食事直後の運動は、消化に悪影響があるのでお勧めしません。
タンパク質は運動後に摂りましょう。
筋肉との約束だ!
次話もよろしくお願いいたします。





