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第05話 反逆者

 テイルミットたちはテイルミットの妹という最悪の犠牲を出しながらもなんとか大魔獣を討伐、これで、ようやく世の中に平和が戻った。

 テイルミットたちはタミアの死に涙しながらも故郷に戻ることにした。

 故郷に戻ったテイルミットたちは当然大魔獣を討伐したとして凱旋と相成った。また、大魔獣を討伐した者には多額の報奨金と、戦死者がいれば弔慰金(ちょういきん)もでる上に栄誉として国王から勲章をもらえるという。テイルミットたちもそれが欲しくて頑張ったわけではない、しかし、もらえるのならありがたい。そんな風に思いながら、その知らせが来るのを待っていた。

 しかし、いつまでたってもその知らせが来るどころかなぜか三男がすでに叙勲され、伯爵に襲爵したという情報が入ってきた。

 どういうことかと思っているととんでもない情報がテイルミットたちの耳に入ってきた。

 なんでも、本来ならテイルミットが行くはずだった叙勲式の知らせをテイルミットたちにはせず、国王にも自分が代表できたといったそうだ。そうして、テイルミットたちに支払われるはずの報奨金と弔慰金を代わりに受け取り、なんと懐にしまっていた。

 それを知ったテイルミットたちは当然怒った。確かにテイルミットたちは金が欲しくて大魔獣を討伐したわけではない、世の中に平和をもたらしたいという思いから戦った。

 それを何もせず、邪魔ばかりしてきて、さらにタミアを死に追いやり、あまつさえその遺体を足蹴にしようとしたやつに、自分たちの報奨金だけならいざ知らず、タミアのために用意された弔慰金までかすめ取ったとなればこれをどうして許せよう。許せるはずがないだろう、俺だって、母さんから聞いていて怒りが込み上げてきた。

 だからこそ、テイルミットたちは当然領主と伯爵になっていたバカに金を返すように迫った。

 しかし、やつらはすでに払っただろうといってきた。もちろんこれはウソだ。

 テイルミットたちもふざけるなと文句を言った。

 しかし、その文句を言ったことでタラベロ侯爵たちは逆にテイルミットたちを強請(きょうせい)で訴えたのだ。

 さすがにこれにはテイルミットたちもキレた。

 裁判で(いわ)れなき罪状、挙句の果てにタミアがバカに迫って来ただの、ないことばかり、しかもご丁寧にメイドや執事たちにまでうその証言までさせていた。

 国としても侯爵という爵位、とその使用人たち、それに対して一冒険者。このどちらを信用するかということになり、連中は当然侯爵を信じた。

 それにより、テイルミットたちは有罪、投獄されることになった。

 さすがに穏やか性格のテイルミットたちもこればかりは許せなかった。怒りにくるってしまいそうになった。

 しかし、拘束されたテイルミットたちには魔法が使えないように専用の枷がはめられ、魔法は使えない。剣も手元にない、どうしようもない状況だった。

 まさにその時だった、テイルミットたちの目の前にバカがゲスた顔をしながら現れた。

 そこで、バカはバカらしくテイルミットたちを笑った。

 それを見たテイルミットはもはや、誰にも止められなかった。

 そう、たとえ両手両足拘束され、魔法が使えないように専用の枷をつけられていようとも、愛用の剣がなくとも、テイルミットは大魔獣を実際に倒した、この時代最強の存在。こんな枷で縛れるような男ではなかった。

 完全にキレたテイルミットはこころのどこかの枷を外して、まず目の前のバカを強大すぎる魔力で塵と化した。

 その後、バカを始末したことで多少正気を取り戻したテイルミットはほかの仲間を牢からだしともに脱獄。

 その足で自分たちをコケにした領主、その家族を皆殺しにした。

 そう、これが世に言うテイルミットの反逆となる。

 実はついこの間まではこの反逆部分しか世の中に知られていなかった。

 つまり、テイルミットとは、大魔獣を討伐した英雄の1人だが、領主から出された軍資金などを使い込み、英雄になってからも領主に金をせびりに行き、投獄されるもその力を使って善良な使用人たちもろとも侯爵家を皆殺しにした大犯罪者である。

 というのが、長い年月言われてきたことだった。

 ちなみに、テイルミットたちは、その後国が出した討伐隊の攻撃を受け死亡、故郷であったエルスペールも同罪として討伐されたそうだ。


「……えっと、テイルミットから、取りました」

 母さんは孫の名前だからと正直に言ったが、母さんも侯爵である貴族の爺さんに、孫の名前をそこからとったとは言いにくいんだろう。

 まぁ、最近テイルミットに関する調査書という書物が出て、ようやく真実が伝わり始めたらしいけど……さて、爺さんの反応は……。

「……うむ、テイルミットか、なるほど、よき名前じゃ」

 あれ、どうやら爺さんとしてはいいらしい。

「よ、よろしいのですか」

 母さんもびっくりしてそう尋ねるほどだ。

「構わぬ。まぁ、確かに、貴族の中にはいまだテイルミットは反逆者であると断じておるのもいるが、ワシは以前から違和感を覚えておったからの」

「違和感、ですか」

「うむ」

 爺さんによると、これまで英雄と呼ばれていた人物たちは、ただ大魔獣を討伐したというわけではない。当然ながらその人柄をも評価されていた。

 というのも、大魔獣の討伐というのは、並大抵の覚悟ではできない、古代の時代、まだ国も少なく土地が余っていたころなら、大魔獣を討伐し、その土地に国を作ることもできた、実際この国の建国王もその方法で国を作ったとされている。しかし、テイルミットの時代となればすでにすべての土地がどこかの国に属していた。そうなると貴族であったなら襲爵もあり得るが、テイルミットのような平民ではそれはなく、せいぜい報奨金と英雄としての称号ぐらいだろう。

 そのために時間をかけて行軍し、命を懸ける価値があるのかという疑問が残る。

「その価値はないであろうな、だが、それでもテイルミットたちは大魔獣を討伐した」

 そこに爺さんは違和感があるという、確かに、俺だったら相当考えるだろうな。となると、テイルミットたちは別の理由で戦ったということだろう。

 爺さんによると、そこが重要だという。

「はい、そうです、テイルミットたちは、大魔獣の脅威、それにさらされている人がいる。それを見過ごすことができなかったそうです」

 ここで母さんがそういった。

「そうであろうな。ワシも、あの調査書を読んでのぉ、その疑問が氷解したんじゃよ」

「えっ、侯爵様もお読みに」

「そうじゃ、あれを読んだ時不思議とそこに書かれている内容はすべて真実であると納得できたわ」

「あ、ありがとうございます」

 母さんが思わずお礼を言ってしまった。

「んっ、なぜ、そなたが礼を?」

 当然爺さんは疑問に思った。

「侯爵様でしたら、お話してもいいでしょう。実は、テイルミットには末裔がいるのです」

 そう、テイルミットには娘がいた。エルスペールに国の討伐隊が送られたとき、その娘は家族や村人とともに逃げ出しており、討伐隊がたどり着いた時すでに村はもぬけの殻だった。そして、その娘は父の汚名を返上するために家族とともに生涯をかけた。その思いは代々繋がれており、現在その最期の末裔が、実は、俺の母さんだったりする。

 ちなみに、テイルミット調査書を出したのは母さんの両親となる。

「まさか、そなたが、その」

「はい、私が、私だけが唯一の、テイルミットの末裔です」

 母さんが母さんだけといった理由は簡単だ、テイルミット以降、代々子供は一人しかいなかったらしい。そして、母さんは子供をまだ生んでいないからだ。

「なんとっ、そうであったか」

 爺さんもさすがにこれには驚いていた。

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