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第04話 テイルミット

 突然現れた謎の爺さん、しかしその爺さんはなんとこの国の貴族、しかも侯爵という大貴族で、なんと、俺の祖父でもあった。

 そんな衝撃を受けた俺だったが、さらに爺さんは俺を跡継ぎにといってきた。

 でも、聞けば俺の母は平民、その俺が貴族になれるのか、そんな疑問が出た。

 しかし、父の時はまだ次男である俺の叔父さんがいたが、俺の場合ほかに誰もいない状態だ。そうなれば特例として認められるだろうということだった。

 もちろん反対する貴族もいるだろうが、それらは覚悟しているという。

 まぁ、俺としては突然のことで今すぐ返事はできないだろうな。

「まぁ、今すぐに返事を出せとは言わぬ。少し時間を与える故。しばし考えてはくれんか」

 爺さんはそういった。ということで俺たちは考えて見ることにした。

 そうして、次の話題として俺の名についてとなった。

「ところで、テイルの名は、そなたがつけたのかな」

 そういって爺さんは母さんを見た。

「は、はい、そうです」

 母さんがいつになく緊張した。

 それもそのはず、テイルミットは英雄ではあるがただの英雄ではない、特に貴族や国側からしたらテイルミットは反逆者だからだ。

 どういうことかというと、俺は寝物語として母さんから聞いていた。


 それは、今から約5百年前この世界において、今のところ最後に大魔獣が出現したころの話。

 大魔獣とは、数百年に一度この世界に現れ、未曽有の大惨事をまき散らす存在だ。

 もちろんすべての大魔獣は別の個体で、以前のが復活しているわけではないし、その周期も何百年とあまり正確なものではないようだ。

 まぁ、とにかく最悪の出来事であった。しかし、そのたびに誰かが現れ何とかそれを討伐する。そして、倒したものは英雄と呼ばれのちの世に語り継がれているというわけだ。

 そうした中テイルミットもまた、これまでの英雄と同じく大魔獣を討伐することを誓った。

 テイルミットの旅は順調そのもであった。楽しく愉快でありながら頼もしすぎるぐらいに強く信頼できる仲間たち、話を聞き応援してくれる人々、まさに順調を絵にかいたような道中だった。

 しかし、それはあくまでもある国のある貴族のもとを訪れるまでだった。


 テイルミットたちは、その日故国でもあるクスマン王国のタラベロ領に存在している故郷エルスペールにいた。

 テイルミットたちは、そこでテイルミットの幼馴染や家族から激励を受けていた。

 まさにその時だった、突如領主であるタラベロ侯爵から屋敷に来るようにと通達があった。

 これまでもいくつかの領主からそんな声かけがあったことや、タラベロ侯爵は故郷の領主ということもあり、特に疑うこともなくその呼び出しに応じたのだった。

 だが、これが、すべての始まりだった。

 何せ、呼ばれて行ってみれば、いきなりテイルミットたちの旅に自分の息子を同道させろ言ってきたのだ。

 テイルミットたちは当然断りたかった。とはいえさすがに断れず、いかに危険な旅か、ちゃんと守れるかわからないと何度も何度も説明した。

 しかし、領主はそれを取り合わなかった、頑として息子を同道させるようにと、また、その息子を討伐隊の隊長にするように迫ってきた。

 ここまで領主がかたくなに要求したのにはある理由があった。

 その理由というのは、一言でいえば欲、彼らとしては大魔獣を討伐し英雄という称号が欲しかっただけだった。

 この英雄という称号は、かなりでかい、それというのも、かつてある国の侯爵の次男が大魔獣を討伐した際、国から叙勲されたうえで、伯爵に襲爵し死後その遺体は保存され英雄としてまつられている。いうなればタラベロ侯爵はそれを欲したのだった。

 もちろんテイルミットたちはそんなこと知るわけもないし、知ったことでもない。しかし、侯爵はテイルミットたちの故郷を盾にさらに迫った。さすがにこれ以上の悶着はやっていられない、そこで勝手にしろと言わんばかりに了承してしまった。


 そうして、タラベロ侯爵の三男を伴っての旅となったわけだけど、これがまたひどかった。何せ、この三男、戦闘能力は皆無、ブクブクと太ったその体は本当に意味が分からなかったし、テイルミットたちの足を大いに引っ張った。なんといっても、やれ、疲れただの、やれ、助けろなど、本当にひどかった。挙句の果てに、テイルミットたちの一行の紅一点であり、テイルミットの妹であったタミアに向かって夜の相手をしろと言ってきたそうだ。(ちなみにこの部分はさすがに母さんも言葉を濁していた。まぁ、6歳までの子供にいうことではないからな)もちろんテイルミットはこれを断った。その理由はもちろんタミアもまた貴重な戦力であるからということや、故郷に恋人を残しているという嘘をついてだった。それに、タミアが相手をしなくても三男は多くの、これまた役立たずのメイドを連れてきていたのでそっちにしろということで何とか回避。

 また、道中三男は贅沢三昧をし、本来テイルミットたちの旅の助けになるようにと与えられた軍資金(なぜか三男の執事が管理していた)にまで手を付けていた。

 そのためテイルミットたちはそれを使わせてもらえなかった、まぁ、それでもテイルミットたちはこれまでの稼ぎで十分賄っていたので問題なかったが、ついに三男は軍資金も自身の金もすべて使い果たし、テイルミットたち個人の金まで使うように迫ってきたのだ。

 もちろんこれは後で返してもらうということでテイルミットたちも面倒を避けるために貸したそうだ。

 こうして、散々な道中を越えていく中、ようやく大魔獣のもとにたどり着いた。

 テイルミットたちは、道中でいかに三男がだめか、その従者として連れてきているメイドや執事たちがいかに使えないかということを散々わかっていたこともあり、大魔獣をかろうじてみることができるような場所に置き、そこを絶対に動くなと言明、さすがに大魔獣を見た三男たちもこれに従った。

 そうして、始まった大魔獣とテイルミットたちの戦いは、まさに熾烈を極めた。

 その攻防は詳細はわかっていないが、とにかく激しいものだったとのちにテイルミットたちがこぼしていたそうだ。

 そして、ついにあと少しで大魔獣を討伐できる、まさにその時だった。もう虫の息となっていた大魔獣にとどめを刺そうと最後の技を繰り広げようとした。が、中止せざるをえない事態となった。それは、戦いに集中していたテイルミットたちも気が付かなかった。なにせ、三男が突如現れ大魔獣に剣を突き立てようとしていたからだ。

 テイルミットたちはあわてた。いくら虫の息でも大魔獣がひとなでしただけで普通の人間ならひとたまりもない、そんなひとなでが三男に振り下ろされようとしていた。

 テイルミットたちはやばいと思った。だが、その時、三男をかばった人物がいた。

 その人物は、テイルミット妹、タミアだった。

 三男をかばうようにしたタミア、タミアもまた激しい戦いで疲労困憊だった。そのため、それを受けたタミアは当然大ダメージを受け倒れた。

 それを目の当たりにしたテイルミットはすぐさま大魔獣にとどめを刺しタミアのもとに向かった。

 だが、仲間のヒーラーもまた力を使い果たしており、回復しきれなくなっていた。

 その結果、タミアはテイルミットの手の中、命を散らした。

 この戦いは、もしこのバカがいなければ誰一人死なずに済んだ戦いとなるはずだった。

 テイルミットたちはタミアの死に嘆き怒った。

 しかし、その時バカはというと、命を救ったタミアに対して、邪魔と言い放ち、とどめを横取りしたとテイルミットを非難してきた。

 そして、あろうことか、タミアの遺体に向かって足蹴にしようとしたのだ。

 さすがにこれには、何事にも怒らず冷静で穏やかだったテイルミットもキレた。

 だが、それも仲間たちによって何とか抑えらたという。

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