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第03話 俺の祖父

 突然謎の爺さんに抱き着かれた。

 でも、何か悪い気はしない。なんだ、これは?

 俺は頭の中が疑問符でいっぱいとなった。

「旦那様、テイル様が困惑しておいでです」

 執事風の男が爺さんにそういった。

「おお、済まぬ、済まぬ。つい浮かれてしまったわい」

「えっと?」

 俺は母さんを見た。

「テイル、大切な話があるの」

「う、うん」

 なんだか母さんが真剣な顔をしたので俺も同じく真剣な顔をしてみた。

「驚くかもしれないけど、実はね、お母さんと、テイルは本当の親子ではないの」

 神妙な面持ちでそういったが、もともと知っていた俺としてはきょとんとしていた。

「え、えっと、うん、知ってる、けど」

「えっ、知ってるって、どういうこと」

 俺の答えに母さんの方が驚いている。

「もしかして、誰かに聞いたの」

 そういって、母さんは村長を見つめた。

「い、いや、話していないぞ」

「じゃ、じゃぁ、一体だれが、テイル誰に聞いたの」

 母さんがそういって聞いてきた。

「誰にも聞いてないよ。覚えているだけ」

 俺はそう答えてから、少ししまったと思った。

 今こうして書いている言葉と、セリフの口調などがあっていないと感じたと思うが、実は俺の現在の精神は体の年齢である6歳に引っ張られている。

 そのためついついこのように正直に言ってしまう。

「覚えている。まさか、本当なの」

 ほら、母さんも驚愕している。それはそうだろう、あの時俺はまだ1歳になる直前だった。まだ言葉も話せない赤ん坊の時の記憶をいくら6歳でも普通は持っていないだろう。

「テイルよ、それは本当か」

「うん」

 俺はその後、あの時の記憶を話した。両親が俺をスベンを使って逃がしてくれたこと、そのあと母さんが俺を引き取ったことなどだ。

「そっか、そういえば、スベンの名前、テイルは言葉を話せるようになったころから、いつの間にかそう呼んでいたわね」

「うむ、我々もテイルがつけたものだと思っていたが、まさか、覚えていたとは」

「ええ、でも、そうなると、テイル」

 そういって母さんは俺を抱きしめた。

「であるな。テイルは、ずっと知っておったのじゃな、スタンリー達の最期をのぉ」

 スタンリー? だれだろうか。

「誰?」

 俺は、思わずそう尋ねていた。

「おお、そうであったな。まだワシの名も教えていなかったな。ワシの名は、シルベスタ・エッペルファング・ドゥ・カペリオン侯爵というものじゃ」

 侯爵、それって確か、大貴族のことだよな。えっと、確か、王様、その一族が公爵で、そのしたが侯爵だったはずだ。つまり王様の一族ではない貴族では最高爵位だったと思った。

「そして、スタンリーはワシの息子で嫡男であり、お主の父でもある」

 なるほど、俺の父ね……って、えっ、今、俺の父って言ったか、それって、父親ってことだよな。

「!!!!?」

 俺は驚いた。つまり、どれって、どういうことだ、この目の前の爺さんは侯爵で、その息子のスタンリーっていう人が俺の父親ってことは、えっと、というと、それって、もしかして。

「そうよ、テイル、この方は、あなたのおじいさんよ。これは、私も鑑定魔法で確かめてあるわ」

 母さんがそういった、鑑定魔法、それは物事の真偽を確認するものだが、人に使えば血縁などもわかるようになる。ちなみに、俺の年齢もその鑑定魔法で判明しているらしい。

「じゃぁ、本当に、僕のおじいちゃん」

「おお、そうじゃ、おじいちゃんじゃよ、孫よ」

 そういって侯爵、もとい爺さんが俺を抱きしめてきた。

 なるほど、それで、この爺さんに抱きしめられても悪い気がしなかったのか。

 俺は妙に納得してしまった。

 となると、どうして、侯爵の嫡男があんなところで魔熊に襲われたのかが気になった。

「どうやら、スタンリーのことが気になっているようだな」

 爺さんの言葉に俺はうなずいた。

「うむ、話そう」

 それから爺さんが話してくれた内容は、驚くものだった。

 俺の父、スタンリーには恋人がいた。爺さんもばあさんも親としては、その2人の結婚を祝福したかった。しかし、侯爵という立場がそれを許さなかった。

 そう、その父の恋人は平民だったのだ。

 この世界でもそうだが貴族と平民が結婚することは普通出来ない。したとしても周囲がそれを許さない、そのためどうあがいてもその2人は幸せになれないだろう。

 それを考え爺さんも反対せざるを得なかった。

 そこで、苦肉の策として、貴族の名を捨てることだった。

 つまり、俺の父は貴族の名を捨てて母と結婚、そして俺が生まれたわけだ。

 そして、新天地を求めて旅をしている最中にあの魔熊に襲われたというわけらしい。

 ちなみにスベンは、この爺さんが選別として父に与えた馬だったらしい。

「あやつは、スベンをかわいがっていたからな」

 そういって爺さんは涙を流した。

「そうだったんだ」

「お辛いでしょうな」

「お気持ち、察します」

 村長や母さんもそんな爺さんに同情している。

「うむ、しかし、スタンリーはお主を残してくれた」

 そういって爺さんは俺の頭を撫でた。

「うん」

「しかし、侯爵様、なぜ、テイルを……」

 そう、俺も気になった。すでに廃嫡した息子の息子であり俺になぜ会いに来たのだろうか。

「うむ、それがのぉ」

 その後爺さんが話した内容によると。どうも、俺の父を廃嫡した後、次男を跡継ぎにとしたそうだが、つい3年前、その次男がはやり病で急死したそうだ。そして、次男はまだ結婚していなかったから当然跡継ぎはいないし、他に家を継げる者がいないという状況となった。

 そこで、すでに廃嫡した父をもう一度貴族に戻せないかと考え探していたそうだ。

 その結果、俺にたどり着いたということらしい。

「ということは、その、もしかして、テイルを、世継ぎに、ということでしょうか」

 母さんが代表してい聞いた。

「できれば、そうしてくれると、ありがたい」

「しかし、テイルは、その」

 そう、爺さんの話からすると、俺の母は平民となる。

「確かに、テイルの母は平民だ。しかし、テイルしかいないのも確かなのだ」

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