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第23話 エンペリアドラゴン

「声って、何の声だよ」

「そんな、もの聞こえないわよ」

「不審者でしょうか」

 カルロ事件の現場検証が終わったところで、俺の耳に不思議な声が聞こえてきた。

 そういうとダレス、ウレサ、ミリエムの3人が不振がってそれぞれ構え始めた。

「わからない、ただ、邪悪ではない、それに助けを呼んでいるような声なんだ」

 そう、俺が聞いた声は弱々しく助けを呼んでいたのだ。

『こっちへ、頼む』

 そういう声が頭に響いている。

 俺はそんな声の主が気になって、その方へと歩き出した。

「テイル?」

「テイル様、危険です」

 ウレサが心配してきて、ミリエムが俺を止めようとしたが、構わず森の中を突き進んでいった。


 街道から外れ森の中を進んでいく。

 しばらく進んでいると、頭に響いている声もだんだんと大きくなってきた。

「近そうだな」

 そういいながら歩いていると、気に寄りかかるように座り込んだ1人の女性がいた。

「! あれは」

 その女性を見た瞬間ウレサが駆け寄った。

「あっ、ウレサ」

 それを見たミリエムもまたウレサを追いかけていったが、俺はそのままの速度で歩いている。

「俺を呼んだのは、あんたか」

「うむ、どうやら、聞こえていたようだな」

「大丈夫ですか、すぐに、治療をしないと、でも……」

 ウレサはそこで気が付いた、いや、それについては最初から気が付いていた。

 その女性がすでに手遅れ、助からないということに。

「ふむ、やさしい娘だねぇ」

 そんなウレサの戸惑いを見て女性は微笑みながらそういった。

「それで、どうして、こんなところにドラゴンがいるんだ」

 そう、ドラゴン、この女性一見普通の人間に見えるが、その内包する膨大な魔力と雰囲気から、どう見ても人化しているドラゴンだった。

「わかるかい」

 ドラゴンの女性は俺にそう尋ねてきた。

「まぁ、その魔力を感じれば誰でもわかる。種類まではわからないが」

 俺がそういうとウレサやダレス、ミリエムがうなずいた。

「そうかい、まぁ、そうだろうね。妾も隠すつもりはない。この姿をしないと周囲の森を傷つけてしまうからね」

 どうやら、このドラゴンは森を気遣って人化しているらしい。

「それは何より、それで、俺を呼んだ理由は? その傷の治療じゃないんだろ」

「うむ、見ての通り妾はもう助からないだろう、だからこの子を頼みたい」

 そういって、ドラゴンの女性が背中から大事そうに何かを取り出した。

「卵?」

 ダレスがそういった。

「それは?」

「妾が先日、産み落としたものだ。本来は里で産むのだが、つい産気づいてしまってね。それで、仕方なくここで産んだんだが……」

 どうやら、その直後に何かあったらしい、まぁ、いやな予感がするけどな。

「ドラゴンが唯一弱体化する瞬間っていうのがいつか知っているかい」

 そんなことを急に尋ねられた。と聞かれても、そんなことを知るわけがない、ドラゴンは高い山の頂上や絶海の孤島など、前人未踏の地などにいるために、俺たち人間とドラゴンはほとんどかかわることがないからだ。

「いや、聞いたことないが」

「それはね、卵を産む前後さ」

 これは驚いた、まさか最強種たるドラゴンにそんな弱点があったなんてな。

 とはいえ、それを知ったからといってどうすることもない、何せドラゴンは別に魔物ではなく、別の種族という存在で、その知力と魔力の高さから人間よりも上位種といわれているからだ。特に敵対しる理由はないし、むしろドラゴンから敵とされないように必死になりたいだろう。

「まさか!」

 それを聞いたウレサたちも気が付いた。

「そう、そのまさかさ、まさか、あのタイミングで魔人に襲われるなんてね。油断したよ」

 魔人、この辺りで目撃された魔人といえば、カルロしかいない。

「そなただろう、あの魔人を討伐したのは、それほどの強者なら妾の子も安心して預けることができる」

 ドラゴンの女性はそういった。それを聞いて少し考えてみる。

 ドラゴンであれ人であれ、母として我が子を人に預けるというのは相当な覚悟がいるだろう。できるなら自分で育て上げたいと思うのが人情というもの。しかし、それができない今、それを託す人間を探すしかない。

 それが俺だったということだそうだ。となれば、その覚悟に応える必要がある。

「……わかった、あなたの卵、このテイル・リップ・ドゥ・カペリオンが身命を賭して引き受けよう」

 覚悟を決めて貴族の礼をもって引き受けることを伝えた。

「そうか、助かる。ああ、せめて孵化するまでは見ていたかった……テイルといったな、エンペリアドラゴンたるルナピリスの子アルベイトを頼む」

 そういってルナピリスこと、エンペリアドラゴンはこの世を去った。

 って、ちょっと待て、今エンペリアドラゴンっていったか。

「エンペリアドラゴン!!」

 ウレサたちも驚愕した。

 それはそうだろうエンペリアドラゴンのエンペリアというのはエンペラー、つまり皇帝の意味だ。といっても、別にドラゴンたちの国があり、その帝位についているというわけではなく、数多くいるドラゴン種と比べてもずば抜けた最強種であるということと、ドラゴンの世界では強いものに弱いものが従うという不文律があるために、この名が付いたといわれている。

 それを踏まえると、いくら産卵直後の弱っている状態だったとは言え、あのカルロが致命傷を与えるとは思えない。何せ、カルロは確かに魔人化したことで飛躍的に身体能力も魔力も上がっていた。しかし、カルロは元々そこまで強くはなかったのだろう、それはウレサとダレスが戦っていたのを見ていたからわかる。本来魔人の相手をした場合、おそらく2人では持っても数分、俺もあそこまでのんびりと見ていられなかったと思う。にもかかわらず、2人はカルロを圧倒して見せた。ということはそういうことだろう。

 そんなカルロがエンペリアドラゴンであるルナピリスに致命傷を与えたという事実。これはドラゴンの産卵直後が俺が思っている以上に弱体化したということだろうか。

 と、まぁ、そんなことをつい考えてしまうが、今はとにかくこの卵だな。

「テイル様、ルナピリス殿はいかがいたしましょうか」

 ここでミリエムがルナピリスをどうするか聞いてきた。

「そうだな、このままというわけにはいかないよな」

 ルナピリスの遺体、つまりはドラゴンなの遺体なわけだが、これはこのまま放置というわけにはいかない。それというのも、ドラゴンの牙や爪、骨は武器の素材として有用だし、その肉や血は不老長寿の妙薬として知られている。

 そんなものを放置すれば間違いなく大変なことになろだろう。

「どうしたものかな」

 俺はルナピリスから預かた卵を抱えながら、頭を抱えることになったのだった。

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