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第19話 経緯説明

 入学式でひと悶着を起こしてきたフェブロス侯爵の嫡男であったカルロ。

 そのカルロが突如魔人となり俺たちの前に現れた。

 俺としては、フェブロス侯爵とは今後も懇意にして行きたいし、カルロは一度とはいえ話をしたやつだ。そのため、何とかして殺さない方法でということで、母さんから教わった方法を試すことで、何とかカルロを無事魔人から人間に戻すことに成功した。

「まったく、お前ら、無茶にもほどがあるぞ」

 俺がこうして現実から離れて考えを巡らせていたのは、ヘーゲル先生から叱られているからだった。

 ちなみに、この時ばかりはヘーゲル先生も俺を侯爵としてではなく生徒として叱っている。

「いいか、今回は何とかなったようだが、次からは無茶をするんじゃないぞ」

「はい」

「すみません」

 こうして、解放されたわけだけど、次はエレンたちだった。

「テイル様、ご無事ですか?」

 エレンたちはかなり心配そうに尋ねてきた。

「ああ、大丈夫だ。魔人といっても、おそらくまだなったばかりのはずだし、俺たちはあれよりもっと強い人から鍛えられているからな」

「確かに、おばさんに比べたら、たいしたことねぇよな」

「言えてる」

 ダレスとウレサの言葉に俺としては乾いた笑いしか出ない。

 それほど、母さんからの戦闘訓練の方が苛烈だった。

「おい、お前ら、馬車に乗れ、帰るぞ」

 完全に意識を失ったカルロを念のために教師陣が乗っていた馬車に乗せ、何があってもいいようにヘーゲル先生と、3組の担任であり、魔法学の教師でもあるテーレル先生が同乗し、他の教師陣は別の馬車に乗り込んでの出発となった。


 結果から言うと、カルロは王都にたどり着くまで意識を取り戻すことはなかった。

 まぁ、俺としては予想通りなんだけどな。

 そして、学園で解散して、俺はその足でフェブロス侯爵の屋敷に赴くことになった。


「面会の約束もせずに訪問したことをお許しください。フェブロス殿」

「いえいえ、お気になさらずに、して、本日は、いかようなご訪問ですかな」

 屋敷を尋ねたのは、俺とテーレル先生の2人、俺はカルロから魔力を奪い、魔人化を解いたということで説明をするためだ。テーレル先生は、単純にカルロが1年の時の担任であり、魔法学の教師ということで俺が放った魔法に興味があるからだろう。

「まずは、見ていただいた方が早いでしょう」

 そういって、フェブロス侯爵に馬車の中を見るように促した。

「なんでしょう……!!!!」

 フェブロス侯爵は馬車の中を見て絶句した。

 それはそうだろう、昨日教会に送ったはずの息子が気を失った状態で帰ってきたのだからな。

「これは、いったい、どういうことでしょうか、なぜ、カルロが……」

 さすがのフェブロス侯爵も相当に動揺していた。

「それについては、少し込み入ったものとなりますので。ご子息を運んでからとしましょう」

「そ、そうですな。誰か、カルロを部屋に運んでくれ」

 それから、使用人が数ににやってきてカルロを丁寧に運んでいった。

 そんな使用人たちについてフェブロス侯爵が歩き、そのあとに俺たちが続いた。


 そうして、俺たちがやって来たのは、カルロの私室だ。ここで話をした方がいいだろうとフェブロス侯爵の判断だった。

「このような場所で申し訳ない。それで、一体、何があったのですかな」

 俺は勧められるままに部屋にあったソファに座った。

「まずは、経緯からお話いたします」

 そういったのはテレール先生だ。

「お願いします」

 テレール先生はカルロの担任だったこともありフェブロス侯爵とも顔見知りだ。

「私たちは士官学園の新入生恒例行事である親睦旅行に出かけていました」

 先生は静かに話し始めフェブロス侯爵はそれをうなずきながら聞いていた。

「……その帰り道のことです。走らせている馬車の前方に不穏な存在を感じ急遽止めたのですが……」

 テレール先生はここで言葉を切った。

「それが、カルロだったと」

「はい、カルロ君が1人立っておりました。我々も訳が分からなかったのですが、つい先日までは私の教え子です。そこで、私が話しかけたのですが、うつろな目をして、まったく話ができませんでした」

 そして、その雰囲気と様子から魔人化していることに気が付いてしまったという。

「魔人、だと、まさか、カルロが……」

 フェブロス侯爵が再び絶句した。

「はい、その様子から間違いありません」

 テレール先生がはっきりとそう断言した。

「そ、そうか、しかし、なぜ、カルロが……」

 フェブロス侯爵が再び絶句していると、その後ろでカルロに追いすがっていた女性もまた絶句していた。先ほどの説明でカルロの母親でフェブロス侯爵の奥方だそうだ。

「カルロ、どうして……」

 そんなことをつぶやいている奥方を横目で見つつフェブロス侯爵が俺を見た。

「しかし、カルロが、魔人化したというなら、なぜカルロはこのような状態なのでしょうか」

 濁しているが、これはなぜカルロが生きているのかということだろう。

 ここからは俺が説明する必要がある。

「それについては、私が、私も魔人が出現したと聞き駆け付けました。まさか、その魔人がご子息であるとは思いもしませんでしたが」

 本当に思わなかった。

「魔人が相手の場合、通常は決死の戦いとなります。ですが、私としても一度は言葉を交わした相手、それはできませんでした」

「それは、申し訳ありません」

 俺がそういうとフェブロス侯爵が察して頭を下げてきた。

「いえ、そこで、母から受け継いだある魔法を用いました」

「お母上から、確か、カペリオン殿のお母上は、元は冒険者であったと」

「はい、その母の一族に古くから受け継がれたものです。といってもこれはいまだ未完成だるために公表はされていません」

 それから、俺はマジックドレインについてある程度詳しく話した。

 これについては問題ない、話したところで使いどころが限られているし、何より使い勝手が悪すぎる。悪用のしようもないからな。

「……なるほど、そのような魔法で、それで、魔力をすべて失ったカルロは気を失っているということですか」

「はい、ですが、それだけではありません、やはり魔人化に伴う後遺症として、精神に多大なダメージを追っているものと推測されます。ですので、その、意識が戻ることは難しいと存じます」

「!!」

 俺の言葉にフェブロス夫妻が同時に絶句。

「つまり、カルロは生涯このままということですか」

 フェブロス侯爵は消え入りそうな声でそう聞いてきた。

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