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第14話 初めての旅行

 入学早々、いきなり俺と同じ爵位であるフェブロス侯爵の嫡男のカルロから身分のわかっていない挨拶を受けた。俺としては、別に学内でのことで気にはしていない、しかしその後カルロは注意しに行ったカテリーナ先輩に対して、大問題となる発言をした。

 そして、その日の夜俺たちの入学祝の会でカルロの父親であるフェブロス侯爵からの謝罪を受けることとなった。

 そんなカルロの処遇についてだけど、フェブロス侯爵によるとカルロは学園を退学し、廃嫡となり、今後は教会に送ることになるということだ。

 俺もカテリーナ先輩もそれについては妥当だということで了承している。まぁ、残念ではあるが、こればっかりは仕方ないだろう。それから、問題なのはカルロとともにいた平民の少女たちの処遇だろう。当然、フェブロス侯爵は彼女たちとその家族を不敬罪として断罪するつもりであった。しかし、俺もだけどウレサも彼女たちを見ていた。それによると彼女たち、カルロが俺にあいさつに来た時も真っ青になっていたし、あの発言の時も真っ青を通り越して真っ白になっていた。つまり、彼女たちはちゃんとカルロが俺に無礼を働いていること、あの発言が相当やばいことを理解していたということだ。

 俺とウレサでフェブロス侯爵にそう説明したが、ともにいたという事実は覆せない、そこでフェブロス侯爵としては、カルロを裁き彼女たちを裁かないというわけにはいかない。

 俺自身侯爵であることから、それについてはよくわかる。フェブロス侯爵としても断腸の思いであるだろう。そこで、俺とウレサの提案、彼女たちとその家族をリップ村で引き取れないかというものだ。

 それというのも、フェブロス侯爵に裁かれた彼らがそのままフェブロス侯爵の領地に居座るということはやはり無理がある。その点リップ村は俺の領地だし、何より俺の故郷でもあり、あの村の住人は優しいし、あまり細かいことは気にしない。またみんな俺に対しては幼いころのままの対応をしてくれているという、ちょっと特殊な環境でもある。

 そんな場所だから、彼らも問題なく受け入れてくれるとのことを伝えたのだ。

 まぁ、何より、あそこの村長はウレサの父親であるガレウスおじさんだからな、ウレサが受け入れると判断したら、全く問題ないだろう。

 というわけで、彼らは現在リップ村に向かっていることだろう。


 そんな騒動があった次の日は学園生活初日、この日は特に何があったというわけではなく、上級生の授業風景の見学や、学内の案内などの説明を受けて行った。

 そうして、その次の日である今日はというと、新入生恒例行事となっている1泊2日の親睦旅行となる。

 この親睦旅行というものは、文字通り、貴族生徒と平民生徒という垣根を超えて友情をはぐくむようにという学校側の配慮ということだ。実際この旅行を通じて両者の間では友情をはぐくむ者たちがいる一方で、逆に亀裂が入ることもあるが、まぁ、その方が少数だ。

 というわけで、今いくつかの馬車に乗り込むことになった。

 俺が乗った馬車は、10人乗りで俺とエレンをはじめとした上位10名がとなる。

「旅行、楽しみですね。テイル様」

 そういったのはエレンだ。

「ああ、俺としては、この旅行でみんなと普通に話せるようになるといいんだけどな」

 俺はそういって、周囲を見て苦笑した。

 そう、エレンはあれ以来普通に話しかけてくれるが、他のクラスメイトにはやはり距離を置かれている。まぁ、普通といってもエレンは様付けで敬語だけどな。

「……」

 俺とエレンが話す中もやはりほかの連中は無言であった。

「何度も言うようだけど、本当に普通に話してくれて構わないぞ。ほら、ダレスを思い出してみてくれ。あそこまでとは言わないまでも、ほんとに気さくに話してくれていいからな」

 俺は一応これまでも何度か言ったようなことをもう一度エレン以外の8人にそういった。

「……え、えっと、その、侯爵様」

 すると、俺の向かいに座っている平民生徒であるケイト・イートがようやっと話しかけてくれた。

「なんだ、テイルでいいぞ」

「あ、はい、その、テイル様、その、私は、その、平民ですから、その、貴族様とお話をしたことがなくて、その」

 ケイトは、しどろもどろとなりながらそういった。

「ああ、まぁ、確かに、そうだろうな。でも、みんなも知っていると思うけど、俺の母は平民だし、5歳まで平民としてリップ村って言う小さな村で育っている。よく教室にやってくるダレスと同じ村だよ」

「確か、生徒会長も、ですよね」

 そういったのは、ケイトの隣に座る、同じく平民生徒のバルド・サップだ。

「そうそう、ウレサは俺とダレスにとって、姉さんみたいなものだからな」

「お姉さま、ですか」

 それに反応したのは、また別の者、彼女は貴族生徒で、ソニヤータ・タラップラー・ドゥ・トレイル男爵の娘だ。

「ウレサのあの振る舞いは、俺と一緒に育ったからなんだよ」

「「ああ」」

 俺がそういうと、馬車に乗ったもの全員が納得した声をあげた。

 やはりみんなにとってウレサのあの貴族令嬢然とした振る舞いを疑問に思っていたらしい。

「ウレサは、なぜか、礼儀作法が気に入ったらしいからな」

「変わった、方ですわね」

 そういたのはエレンだ。

 しかし、ウレサのおかげで、馬車内の10人だけとは言え、少しは俺に対する緊張がほどけたようでよかった。

 その後は、さすがに気さくとまではいかないまでも話が弾んだのではないかと思う。


 そんな道中を抜けて、ようやく俺たちは目的地である、王領内にある小さな湖の湖畔にある施設にたどり着いた。

 この施設は士官学園がこういった行事を行うために建てたもので、この親睦旅行以外でもいくつかの行事で使用するらしい。

 それで、この施設に来て俺たちが何をするかというと、別に湖畔だからといって湖で泳ぐというわけではない、何せ、今は春先異世界といってもこの辺りの気候は日本に似ており、今の時期はいまだ肌寒さが残る。そんな中で泳いだら間違いなく風邪をひくことになるだろう。それに入学早々いきなり水着姿はない。

 というわけで、主に周囲の森の散策となる。

「新入生の皆さん、この辺り魔物はいませんが、動物は見かけることがあります。十分気を付けつつ、班ごとに楽しんでください」

 という注意をウレサが行い、俺たちは班ごとに分かれて周囲の散策となった。

 俺の班は、俺とエレン、ケイト、バルド、ソニヤータとルミーナ・カペリル・ドゥ・メイケルとなった。

「よろしく」

「よろしくお願いします」

 散策開始である。


 とはいったものの、さて、何をするかだよな。

 俺はそう思いながら周囲を見て周っていった。

 と、そこに薬草を1つ見つけた。

「んっ、ヒエル草か」

「なんですか、それは、草のようですが」

 エレンをはじめ、みんな首をかしげていた。

「これは、ヒエル草といってポーションの原料の1つだよ」

「ポーション、ですか」

「こんな、草が原料何ですか」

 みんな知らないらしい、まぁ、それもそうか、これは元冒険者である母さんだからこそ知っていたものだからな。

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