第01話 転生して、拾われた。
新作です
他にも別作品を投稿していますのでそちらもお願いします
俺は日和見浩裕37歳男、フリーターをしている。
どうしてこの年でフリーターなのか、それは、数年前務めていた会社の上司が俺の何が気に入らなかったのか、ねちねちと嫌がらせをしてきた。
それは、周囲の同僚にまで感染し、いつしか俺の居場所がなくなった。
そのまま仕事を続けてもよかったんだが、そうすると、こっちの精神が持たない。というわけで、退職せざるを得なかった。
そのあと何度か面接を受けてもたが、ちっとも採用されない。まぁ、実際その前の会社も見つからなくてまぁ、ここでいいかと思った会社だったからな。
というわけで、現在しがないフリーターで生活をしているわけだ。
こういう時独身でよかったと思う。もし家族がいたら、こんな生活なんてできないからな。
言っておくが、負け惜しみではないぞ。
そんなわけで、今日もまたバイトに励もうと家を出た。
そうして、歩くこと数分、コンビニの近くに差し掛かった時だった。
突如古い車種の軽自動車が俺に向かった突っ込んできた。
「おいおい、まじかよ」
俺は焦った。
それでも何とかよけようとしたが、なぜか軽自動車は俺を追っているかのように向かってくる。俺が何をしたんだよ。
そう思って運転手を見た。すると、そこにいたのは、だいぶ年を取った老人、顔をみればかなりてんぱっている。
それを見て、すべてを理解した。
ああ、この老人、踏み間違えてやがる。
そう、最近はやりの年寄りの踏み間違いによる事故だ。
まさか、俺がその被害者になるとは思わなかった。
そして、軽自動車はさらに加速し、俺と激突。
そのままコンビニの壁まで連れていかれて、壁との間に挟まれた。
そんな中、俺は運転手の老人と目があった。
まぁ、気にすんな。すげぇ、痛いけどな。
俺はそんな言葉を目で訴えながら、絶命。
享年37歳であった。
次の瞬間俺はだだっ広い草原にいた。
あれ、俺って確か、死んだよな。ということはもしかして、ここがあの世か。
そう思った、しかし、どうやらちがいらしい、なぜなら、近くに乞われた馬車、見上げるほどにバカでかい熊、たぶん俺の知っているクマの大きさの倍ぐらいありそうだ。
そして、何より、俺を強く抱きしめている女性と、そんな俺たちをかばうように立ちふさがっている男性。
そう、俺は女性の腕の中に納まっている。つまり、赤ん坊ということだろう。
「あー、あうあー」
それしか言えないんだからな、でも、たぶん生まれたばかりではないだろう、たぶん1歳ぐらいじゃないだろうか。
というような状況から、おそらくは転生、したんだろうしかも異世界にと推測される。
しかし、そんなことは今はどうでもいい、この場をどうにかしないと、転生早々、バカでかい熊に殺されてしまう。
いくら何でも早すぎるだろ。神様、何とかしてくれ。
俺は、自身をこんな状況に転生させた神様に懇願した。
「くそっ、ここまでか」
「せめて、この子だけでも、スベン、この子を、お願い、安全なところまで」
おそらくは俺の両親であろう、2人がスベンという誰かにそう頼んだ。
いやいや、だったら、スベンも戦ったらどうだよ。
そう思った瞬間、不意に何かに襟首を銜えられてしまった。
なんだ、一体。
俺が振り向くと、そこには、何やらよくわからない生き物がいた。
えっ、なにこれ、その生き物は、前足が短く、まるで恐竜みたいでありながら、それ以外は馬に似ている。
「ヒヒーン」
泣き声まで馬、でも、2足歩行だった。
「行け、スベン」
そういわれた瞬間スベンは走り出した。
おいおい、いいのかよ。
両親と思われる2人置いてスベンと呼ばれた生き物は走り出した。
俺としては、両親と思われる2人を放っては置けない、でもこの生き物は止まらない。
ちょっと待ってくれ……。
俺は、そうこころで叫びながらその生き物を見た。そして、見てしまったのだ。
なんと、その生き物の目から涙のようなものがあふれてきている。
そうか、お前も、俺と同じなんだな。本当は助けたい、でも、俺はもちろん、こいつでも助けることができない。だから、こいつは、彼らの願いをかなえることにしたのか。
俺はそう思うと何も言えなくなった。
それから、しばらく俺を銜えたスベンは走りつづけた。
というか、この状況、ものすごく怖いんだが……。
なにせ、このスベン異様に速い、本当に2足歩行なのかと思えるほど速い、おかげで、その風をもろに顔面に受けて、目が開けていられないほどだ。
だが、そんな逃避行も前方に見える建物らしきもので終わりを遂げそうだった。
目の前に広がってきたのはいかにも、ファンタジー感丸出しである石造りの建物だ。
「ヒヒーン」
スベンが一鳴きした。
「あんだ、あん、なんだ、馬じゃねぇか、って、おい、その口にくわえているの、赤ん坊じゃなぇか、おーい、だれか、村長を呼んでくれ」
そういったのは簡素な村の入り口付近に立っていた1人の男だった。
そして、男は、スベンから俺を受け取ると大事そうに抱いてくれた。
ていうか、今、このおっさんスベンのこと、馬って言わなかったか、もしかして、これ、馬みたいじゃなくて、この世界の馬ということか。
俺は、改めてスベンを見てみた。
確かに、スベンは馬といわれれば毛並みといい鬣といい、顔といい確かに馬だ。でも、その頭はやたらとでかい、もしかしたら、この世界の馬は2足歩行になったことで人間が猿から進化したみたいに、脳がでかくなって頭もよくなっているのかもしれない。そう考えてみると、スベンが両親の言葉を理解し、俺をこの人里に運んできたのもうなづける。
「おお、よしよし」
別に泣いているわけではないが、おっさんは俺をあやし始めた。
仕方ない、サービスで笑ってみるか。
「おお、そうか、そうか」
何がそうかなのかわからないが、見たところかなりいいひとみたいだ。
「どうした、サップ……一体、何があった」
そこにやって来たのは1人の老人と、複数の人だった。
最初はなんで呼ばれたのかわかっていなかったようだが、俺を抱くおっさん、いやサップを見て顔色を変えた。
「わからなぇ、この馬が、この子を銜えてきたんだ」
「なんだって、一体、どこの子だ」
「何々、わぁ、かわいい」
老人は真っ青になり、隣にいた女性は俺に笑いかけてきた。
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