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桜の下で  作者: 海星
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桜花と蘇芳の再会3(蘇芳SIDE)

また中途半端ですみません。

よろしくお願いします。

「うるさい! わかったような口をきかないで! あんたなんか大っ嫌い! 死んで当然よ!」

「小夜!」


 感情的にまくし立てる小夜を諌めるように、蒼が小夜の元へ行き、その頬を叩く。叩かれた小夜は呆然と蒼を見ていたが、次第にその顔が怒りに染まる。


「蒼、どうして……? なんでそんな女の肩を持つのよ!」

「言い過ぎだ。冗談でも死んで当然なんて言うな。気分が悪い」

「何なの……何なのよ! どいつもこいつもその女の味方して! 蒼までわたしを裏切るの?」

「……小夜さん。あなた、甘えるのもいい加減にしたらどう? 自分の思い通りにならないからって喚き散らして、自分の行いを反省もしない。蒼はあなたを裏切ったんじゃなくて、叱ってくれているんでしょう? 大切な人を亡くした蒼の前で死んで当然なんて言って、蒼がどんな気持ちで聞いているか考えた?」

「あ……」


 小夜はようやく思い至ったのか、険しい表情の蒼を見て俯いた。小夜が落ち着いたのを確認して、桜花は小夜に頭を下げた。


「だけど、そこまで追い詰めた私が悪かったわ。ごめんなさい、小夜さん」

「……ごめんなさい、蒼……桜花、さんも……」


 最後の言葉は呟くように小さかったが、桜花には聞こえたようだ。桜花は笑って首を振った。


「やっぱり私はダメね。相手の気持ちも考えずにズケズケ言っちゃうから」

「それが桜花のいいところだと思うぞ」


 しばらく黙っていた蘇芳が真面目な顔でフォローした。桜花は苦笑して蘇芳の頭を撫でる。


「……ありがとうね、蘇芳」

「いいんだ」


 蘇芳はまるで褒められた子どものように誇らしげに笑った。それを蒼は訝る。


「……おい。お前たちは恋人じゃなかったのか?」

「ああ、そうだ。何でそんなことを聞くんだ?」

「いや、恋人っていうのはもっと、甘い雰囲気だろう。お前たちを見ていると、親子にしか見えないんだが……」

「親子だが、恋人だ。それが何だ?」


 蘇芳は蒼が何を言いたいのかわからず、首を傾げた。蒼は戸惑いの表情を浮かべ無言で桜花を見る。その視線に桜花は困ったように笑った。


「蘇芳はね、恋人が何なのかわかってないの。そもそも恋もわかってないし」

「何でそんなことに……」

「蘇芳には私しかいなかったから。初めての友だちに恋人はこういうものだって言われて間に受けちゃったのよ。それと、恋人ならずっと一緒にいられると思ったみたいで、恋人になりたいって言い出したの」

「……桜花も大変だな。じゃあ接吻もしてないのか?」

「ええ。教えてないし、草太って蘇芳の友だちにも、まだ教えないで欲しいってお願いしていたから、それも知らないと思う……」

「知っているぞ」


 蘇芳は平然と答える。桜花を探す数百年のうちに、何度も目にした行為だ。ただ、何のためにするのかは理解できなかったが。


「そんな……蘇芳がいつのまにか大人になって……」


 桜花は何故か衝撃を受けて、蘇芳の肩に手をかけて項垂れた。

 蒼がそんな桜花に突っ込む。


「桜花、違うだろう。蘇芳は大人だ。お前がそうやって子ども扱いするから、お前の前では大人になれなかったんじゃないか?」


 桜花はハッと顔を上げた。蘇芳の顔を見て、顔を歪める。


「……私のせいなのね。私があなたにちゃんと教えなかったから」

「桜花が何を言いたいのかわからないが、別に桜花のせいじゃないぞ。俺は人に見えないからそういう場面にたまたま遭遇して、それが接吻だと知っただけだ。ついでに性交も知ったぞ」


 あっけらかんと答える蘇芳に、桜花は目が点になっていた。その顔が面白くて、蘇芳は声を上げて笑った。

 蒼は気の毒そうに桜花を見る。


「……桜花、お前も苦労したんだな。こいつのこの情緒のなさ。直しようがないな」


 桜花は疲れたように笑う。


「私が育て方を間違えちゃったのよ……」

「そんなことはないぞ。桜花はいい母親だった」


 蘇芳がフォローするが、それに桜花と蒼が突っ込む。


「蘇芳が言うな」

「お前が言うな」


 そうして桜花と蘇芳は顔を見合わせて笑う。


「何だか昔に戻ったみたいね。草太ともこんなやり取りをした気がするわ」

「ああ、そうだな……」


 二人は目を細めて昔に想いを馳せる。

 草太を含めて三人で過ごしたかけがえのない日々。もう二度と戻れない大切な思い出だ。


 これまでずっと過去ばかり振り返っていた気がする。幸せだった過去に戻りたかったから蘇芳は桜花にこだわっていたのもあった。


 だからだろう。蘇芳は桜花に会えた後のことを考えていなかった。これからどうすればいいのか、それを桜花に教えて欲しかった。


「桜花。俺は桜花がいなくなって、桜花を探すことが生きる目的になっていた。だが、こうして目的を果たしたら、生きる目的が無くなってしまうんじゃないかと怖かった。俺はまだ生きていていいのか……?」

「それは私が決めることではないわ。誰かに決めてもらうのは楽でいいと思う。だけど、あなたはもう立派な大人でしょう? 自分で決めて歩いていかないといけないのよ。私はもうすぐ消えてしまうのだし……」


 桜花の最後の言葉に蘇芳が青ざめる。


「おい、桜花! どういうことだ! さっきは消えないって言っただろう!」

「消えないのは千恵の方。私は千恵の中に残る記憶の欠片にしか過ぎないの。言い方が悪かったわね。消えるというよりは、また千恵の中で眠る感じよ。この体は千恵のものだもの。私は千恵の人生を邪魔してはいけないのよ」

「そんなの……! 千恵に話して偶に出てくればいいだろう!」


 桜花から表情が消えた。蘇芳には心なしか空気の温度が下がったような気さえした。


 ──桜花は本気で怒っている。


「……蘇芳。いい加減にしなさい。どうしてそうやって生きている千恵の意思を無視するの。あなたが千恵を蔑ろにする限り、千恵はあなたを好きになんてならないでしょうね」

読んでいただき、ありがとうございました。

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