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殿下と結婚したくないので男装して破滅ルート回避したい  作者: くるねこ
1、悪役令嬢に転生したけど、私のスキルがチートすぎてやばい……
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「なんだ? 今のは?」


魔法になれていないとこんな物かと、反応が薄いことにがっかりする。


 逃げられないように結界を張ると


「とっとと金寄越せ!」


と、走ってきたため覇気で動きを止める。

魔力が少しでもあれば止まるなり気絶するなりする。

バタバタと倒れる仲間に焦る男だが懐からナイフを取り出した。

それを持って私に迫ってくるため土の属性魔法で地面に大きな穴をあけてやった。


「うをっ!」


あ、私と同じ声出しているよ。

バンダに変な突っ込み入れられるぞ。


 意気揚々、男八人をアイテムにあった縄で縛り、領地へ戻る。


「ここはどこだ!」

「檻に一生入るか、肉体労働三食食事つき風呂アリ寝床アリならどっちを選ぶ?」

「給金も出ます。」


領館の玄関ホールでそんな話をする。

お昼ご飯を作り終わっていたコランダムが私に山菜と川魚のほぐし身の入ったサラダと骨で出汁をとったスープを出してくれる。

少し遅れて昨日取った鹿肉を挟んだサンドイッチも出てくるため男たちは生唾を飲んでいる。


「どういうつもりだ!」


主犯格の男、鑑定により名前が明らかになったスターチス、前職農夫。

肉体労働に向いている体つきで連れている仲間もいい体格だ。

ステータスには妻子ありとある。


「あなた、家族はどうしたの?」


サンドイッチの咀嚼が終わってから聞く。

ローマンの目が光っているのだからお嬢様らしくしていないといけない。


「そんなこといいだろ! 俺を脅す気か!」


この状況にどうも気が立っているようで


「本題を話すわ。大人しく聞いていなさい。」


なんて三歳児に言われても怖いだけだろう。

現に後ろに固まる少し弱気な二人は見た目に似合わず真っ青な顔で震えている。


「買い取ったばかりのこの領地にはたくさんの鉱物が見つかったわ。でも、採掘する人間がいないの。労働者として雇いたい。もちろん家族も一緒に住める。そう言ったらあなたたちはどう返事をしてくれる?」

「脅しじゃねえか!」

「どう取ろうと勝手よ。給金の出る仕事を提供しているの。もちろん家族にはこの屋敷で働いてもらうし、もし逃げればそれなりの報復処置もある。なにもなければ一般の貴族屋敷で務める使用人と同じ給金を出すわ。功績によってはボーナスも昇進もある。悪い話ではないはずよ。」

「兄ちゃん…」


スターチスの後ろで男が声をかける兄ちゃんということは兄弟だろうが顔の傷のせいで解りにくいし、傷により顔も変形している。

魔獣に襲われたのだろう。

よく見ればスターチスの腕にも、ほかの男たちにも傷がある。

もうふさがってはいるが痛々しい。

そう思い、治癒魔法を発動する。


 「……すげぇ…」


他の男が声を出す。

足運びがおかしかった男は膝の傷が消えたことに驚き立ち上がると


「歩ける!」


と、歓喜する。


「どういうつもりだ?」


やっと落ちついて話を聞いてくれるようだ。


 縄をほどき、鉱山夫がたくさんほしいというと村の仲間を集めればいいという。

ほかにも浮浪者で仲良くなった者がいるということでその伝手を借りて人手を集めることにした。


「村で何があったの?」


ダイニングというよりも食堂だが、そこに移動し、鹿肉をただ焼いただけのものを出すとかじりついている。


「三か月前、魔獣に襲われた。しかも水蛇とキマイラ系の二体が同時に来たんだ。村は全壊。畑なんて何も残らなかった。」

「目的は?」


魔獣も安易に人間を襲いに来ることはない。

何かと理由はあるが人間と知能も思考も違う。

倫理や概念は規格外だ。


「水蛇は花嫁探しだ。村の娘が一人攫われて、行方不明になった。キマイラ系は水蛇が気に食わなくて村の上で争っていただけみたいだった。」

「はた迷惑ね。村のみんなの居場所は解っているの?」

「ああ、王都の空き家でいくつかに分かれてこの一か月過ごしているからな。」


三か月か。

精神的疲労ピークに近いころだろうか。


 「これから買い物で戻るわ。スターチスは同行、ほかのみんなは仲間がここに来たときの説明をコランダムといてあげて」

「いいのかよ。本当に村一つなんて言うが俺たちの村はそこそこ大きかった。」

「問題ないわ。」


食堂をでて、マナーハウスも出る。

目の前に広がるは広大に広がる土地と山、山、山、間に川となぜかレンガの土地。

これに関しての説明は仕事をはじめてからだ。


 王都へ戻る。

一日に往復する回数が決まっていなくてよかった。

魔力の消費がないのはありがたい。


「こっちだ。」


裏路地を進む。

ローマンがいた悪質な環境ではなく、人の姿もまばらな路地から急に子供の笑い声が聞こえてきた。


 「あ、父ちゃんだ!」


男の子が一人駆け寄ってくる。


「この人誰?」


男の子よりも年上の女の子が私のことを怪訝な顔で見る。

男の子も年上ではある。


「雇い主だ。みんなに住む場所も提供してくれる。」

「あんた⁉」


産まれてあまり日も立っていなさそうな赤子を抱えた女性が来る。

女の子と顔が似ている。

スターチスの妻だろう。


「ちょっと来な!」


これが疑われているな。

こんな子供が雇い主な訳がないと周りの眼も刺さる。


 「あんた誰?」


スターチスの息子が聞いてくる。


「私はデンファレ、領地で鉱山夫や農作物を作る人手が欲しくてお父さんに声をかけたの。」


実際はゆすられたのだが返り討ちにしたなんて言えない。


「仕事見つかったの?」


戻ってきたスターチスに娘が聞く。


「ああ、住み込みでたくさん人手が欲しいらしい。村のみんな全員雇ってくれるって話だ。悪くないだろ?」


私を見る村人にスターチスが聞くが皆疑いの眼をやめることはない。


「鉱山なんて、俺たちは畑を耕すぐらいしかしたことない。」


若い男が言う。


「そうだ。魔獣に襲われたケガもあって、動けないやつも多い。」


年配の男が腕をさすりながら家の奥を見る。

奥には数人が寝ている。

動ける体ではないのだろう。


『いいわよね。』

『信頼を得るためにはパフォーマンスも必要です。』


なんだかローマンが腹黒いと思いながら私ひとり家の中へ入っていくとスターチスが付いてくる。


 「こいつを見てほしい。」


腕一つないのは十代後半と思われる女の子でもう虫の息と言ってもいい。

傷口付近の変色している。

つばを飲み込み、唇を噛んでしまうと


「無理にとは――」

「完治するかはこの子の生命力次第よ。」


手をかざす。

小さな手から金色のキラキラとしたエフェクトが出る。

こんなところに必要かと思いながら手のひらに魔力を集中させる。




 どのくらいたっただろうか。

女の子が目を覚ますまで、私と同じぐらいの年の子に魔法を見せていた。


「……お父ちゃん…?」


女の子の近くにいた父親が歓喜の声を上げ


「よかった! よかった‼」


起き上がるほど気力の戻った女の子を抱きしめていた。


 「デンファレ様はお疲れではありませんか?」


頭上からローマンの声がするため見上げる。


「問題ないわ。買い物は終わった?」


彼にはペンキと足りないだろう食品の買い出しに行ってもらっていた。

この場にいる人数分の食事となると足りるか不安もあるが私は立ち上がる。


「じゃあみんな、荷物をまとめて頂戴。日が暮れてきたわ。」


遠くの太陽の赤い色が室内を差している。


 ほかの家にいた村人も含め皆の治癒ができている。

歓喜と興奮で騒がしい皆にてきぱき動くように指示を出す。

さすがにこの人数を一気に移動させるのはリスクがある。

転移魔法は自身の魔力内で移動距離、移動人数が決まる。

∞とはいっても大人数で転移をし、途中ではぐれれば次元の狭間に閉じ込められる。

リスクは少なく、二十人単位で数回に分けて移動を行った。

そのたびに大量の布団をアイテムから出して運ぶように言ったり、お風呂を沸かすように言ったり、夕食の準備をするように言ったりとバタバタ。

子供たちは初めての環境に興奮気味だ。






 翌朝、自室のベッドにはたくさんの子供たちがいる。

お風呂へ押し込んだ際に着ていた服は洗濯へ回し、全員私が出した服を着ている。

子供たちはスモックのような簡単な作りの服、キャンパス生地でできており、確かヒロインの洋服コレクションガチャで子供のころの服だったと思われる。

女性陣も同じ生地のワンピースにエプロンを支給、男性陣には動きやすい服を出す。

これは兄デンドロの子供のころの服と名前が付いていた。

それぞれの体格に合わせての伸縮に半年前の私と同じ反応をみんながしていた。

これはあくまでパジャマや部屋着。

女性陣は料理や洗濯をしてもらったためエプロンを渡したが仕事着はどうしようかとアバターをあさる。

ひとまずは農作業をしてもらわないといけないし、その後の採掘でも丈夫な服が欲しい。

数点見繕い、色を変更して用意していると


「お嬢様、朝食ですよ。」


と、スターチスの妻ピレアが声をかけてくれた。


「今行くわ。」


大人数の食事は楽しい。

ワイワイ、がっちゃがっちゃしているが家の静かな食事よりもおいしく感じる。








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