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殿下と結婚したくないので男装して破滅ルート回避したい  作者: くるねこ
4、私は聖女にはならないし、私に黙って急な予定を立てないでほしい。
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カップを置く手をじっと見られているためどうしたのかと首を傾げて見せると


「二人きりなんだ。仮面を取ってはどうだ?」


少々命令口調にも聞こえる。

口答えせずに外すかと、仮面に手をかざし、ポケットへ仕舞う。

手をかざさずともしまえるが、どういう使用なのかと聞かれるのはもう面倒くさい。


「一昨日も思ったが、経過はあまり変わらないようだな。」

「ええ、まあ、そうですわね。リコリス前当主でも治せないケガは神殿でも難しいようですわ。」


適当に嘘をつく。

嘘でもないから何とも言えないのだが。


 聖女様のレベルは確かに高かった。

それでも八十にも到達しておらず、リコリス前当主が現在の私の偽造の二つ下、レベル七十七のため、変わらないのだ。

お父様やなぜかお母様のレベルが高いため遺伝と行ってしまえば十分立証できる範囲。

レベルだけで聖女に向いていると判断されていたら困るのだが、どうなのだろうか?


 「デンファレは、なぜスカミゲラを俺に合わせてくれないんだ?」


お泊り会が始まる前、殿下からスカミゲラもお泊り会へ参加できないかという手紙をスカミゲラの部屋で転送ボックスにて、受け取った。

約束では七歳になったらスカミゲラに聞いてみてはどうかと私が言ったためそのお伺いのようだったため、ギルドの派遣が忙しいためまたの機会にという返事をした。

それ以降はギルドへ出発したことにしていたため手紙が来ているのどうかは解らない。


「一日目にスカミゲラが顔を出したと聞いたのだが」

「はい。ですが、殿下はバンダのコレクションに夢中、それに比べ、ネリネ様とアマリリスは暇をしているようでしたし、マロニエは一度見ていますので、誘って時間つぶしの相手をお願いしました。」

「ネリネからもそう聞いている。」


 「殿下はなぜ、そんなにスカミゲラに会いたいのですか? 各家庭、貴族のつながり、家を継ぐことなどを考えるとネリネ様とアマリリスがいる以上、リコリス家が王家に近くなるのは宰相であるリコリス当主が実権を握るのも時間の問題ではないかと思われても仕方ないことですわ。オーキッド家についてもデンドロに私と来て、もしユッカ様の婚約者にバニラが付いた場合、財政管理の元軍人の当主と総帥の地位を持つ祖父、お父様の妹君も辺境伯に嫁いでおります。他国には軍事の強化、もしくは戦争の準備と思われる可能性もあります。」


ここまではっきりと言ったことはない気がする。

王妃教育で何度か王宮でお茶会をすることもあったが国の将来性ばかりで、現在の問題を口にしたのは初めてだ。


「そう、だな。陛下にはずいぶんと心労をかけているかもしれない。」


少し考えて出てきた言葉は現国王への謝罪といったところか。


「それでも、スカミゲラにお会いしたいですか? 年齢が違いますから学年も当然異なります。社交で会うとしても私の側近となるとあまり表には出てこなくなります。リコリス家をこれ以上王家に近いと認識させないためにも、つながりは適度に収めておくべきではありませんか?」

「ああ、わかっている。だが…」


だが、何だろうか?

こちらからするとこの話なら適当に終わらせ部屋に戻りたいのだが、


「だが、デンファレの近くにいるのなら気にならないわけがないだろ? 婚約者なんだから」


……。


婚約者だから近くにいる男は皆把握しておきたいということか?

横暴ではないか?

確かにこの国では適齢期の男女は婚約者がいる者と親しくしてはならないといった礼儀がある。

お互い嫉妬なんて醜いことはしたくないというのが本音ではあろうが、相手に婚約者がいれば、仲良くする上でその婚約者も同席しないとならない。

そう言った考えに至らないからこそ、ヒロインはいじめられるし、他の貴族とは違うと目を引くのだ。

だからってそれを七歳から発揮されるとは思わなかった。


「バンダと話ができたのも先日が初めてなんだ。ずっとデンドロ経由で話を聞いていたが、どうもデンファレとの距離が近すぎるのではないかと思って、気が気じゃなかった。同性愛も多いこの国では近親婚もある。養父と養女の結婚なんてよく聞く話だ。実の双子の姉弟でも、気になって仕方がないのに、ネリネに寄ればスカミゲラはデンファレからの信頼もあり、仕事のパートナーとしても優秀で、魔法も秀でている以外に、デンファレから多くの付与アイテムももらっているというじゃないか。これが気にならずにいられるか?」

「……解りました。殿下の言いたいことは解りましたので、なので少々落ち着いてください。冷たい飲み物を」


アイテムからレモネードを出し、殿下の前に置く。

酸っぱくはないが風味のあるものでいったん思考を止めてもらおう。

机を挟んで座っているにも関わらず、唾が飛んできそうな勢いと熱量に引く。


「これもうまいな。」


レモンが入っていても蜂蜜で甘い分のみ安井のだろう。

殿下がレモネードを飲み終わり、一息ついたところで


「確かにスカミゲラは近くに置いていますわ。ですがそれは身寄りのないあの子が私の巻き添えでケガを負ってしまったからです。それに現在従者ではありますがあの子の意志で別の道もあります。私はそれを引き留める気はありません。形式上、七歳になったので従者となったというだけで、正式な書類があるわけではないのです。それに、あの子はそろそろ初等教育も始まります。勉強がてら任せた仕事も区切りが良いですし、もともと、ギルドの出入りを好む子です。領地に縛らず、自由にさせています。ネリネ様が思うほど、あの子はここにはあまり戻っては来ませんよ。」


二人一役もなかなか面倒だ。

一人の意志を組んで動くよりも、バラバラの意志で動いているように見せた方が自然だ。

だが、ボロが出るリスクもある。

あまり多くの人と接触したくないのだが


「解った。すまなかった。勝手な勘繰りをしてしまい。」

「いいえ、誤解が解けたのならよかったですわ。ですが、もしも殿下以外に好いた殿方が現れた際はきちんと報告いたします。今後にかかわることですので」

「…そうだな。俺も三十人友達だけで埋められるとは限らない。利害の一致でも令嬢を迎え入れるとなると面倒ごとも増えるだろう。」

「そうですわね。面倒ごとが一番厄介ですわ。」


面倒が面倒だと言っているようなことを返し、紅茶に口を付ける。

飲み干して、もう一杯注ごうかと思ったらポットには二杯分しか用意していなかったようだ。

冷めてしまうのだから当たり前か。

魔石ポットをポケットから取り出し、水が入っているのを確認してからスイッチを押す。


「それは?」

「魔石ポットですわ。火の魔石の熱を利用して魔力がなくても、火を起こさずにお湯を沸かせます。」

「便利だな。」

「お一つ持って行かれますか?」

「いいのか?」

「私の立ち寄る先には必ず置いてある物ですので、お気になさらず、帰りのお土産の袋に入れて置きます。」

「ありがとう。デンファレの発想はユニークだな。お湯なんて火で簡単に沸かせるが、料理場や給湯室まで行かないといけないからな。一人の時は度々メイドを呼ぶのが申し訳なかったんだ。」

「お土産の中にはティーポットの保温カバーもお付けしてありますので、冷めにくくもなりますよ。」

「そうなると時間が経っても渋くならないお茶が欲しいな。」

「ふふふっ」


と、笑ってしまうと


「それも入っているのか?」

「それは帰られてからのお楽しみですわ。」


ここまで私の意図を組む人物は珍しい。

ローマンなんてほー、や、ふーんばかりだった。

もともと使用人ということもあり、主人が手を伸ばした際に熱々のお茶が必ず手元にあるように心がけていないと一流の使用人とは言えない。

その手間を減らしてしまう私の発想には反応が薄いことが多い。


 「あと、マロニエの領保証人になってくれるそうだな。」

「ええ、何かあればいくらでも手を貸すことになっていますわ。……、殿下まさかと思いますがマロニエを王宮に置くとおっしゃったのは…」

「ああ、嫉妬だ。一週間もデンファレの近くにいると聞けば気にもなる。会ってみれば見込みがありそうだったからな。腐った貴族の掃除もできる。俺の駒も増える。一石二鳥だった。」


駒。

そこはやはり王家、もしくは継承教育の賜物か。

人は決して駒ではなく、仲間である。

それは私の持論であり、王家の教育ではない。

だか、ゲームでの殿下は駒と決して仲間を呼ばなかった。

これからだろうか。

十分やさしさはあるが、人間関係に区切りを付けているようにも思える今現在。


「…そうでしたか。私としてはマロニエも手身近なところに置きたかったのですが、残念です。」

「デンファレの姫夫にするつもりだったのか?」

「将来的にはその一人に据える予定でおりました。バンダも結婚には興味がないということだったため、婚約者候補の話が出ていますし、お父様にも近々相談し、姫夫ということにしようかと思っていたところです。」


殿下に渡さない。

その前に自分の手中に収めてしまおうと思っている。


「バンダは…まあ、仕方ないとして、マロニエは利点があるのか?」


殿下の中ではあまりマロニエ本人は重要ではなく、うまくことを運び、候補に入れたいと行ったところだろうか。


「東の領地には親戚が少なく情報があまり入ってきませんので、利点と言えば利点でしょうか。現在ですと王宮にいることから殿下のお話も聞けますし」

「俺の話を聞きたいのなら、直接話がしたい物だ。全く合わずに一か月が過ぎることも多い。」

「プレゼントなど、直接聞けないことも多いので」


と、いうことにして、笑ってごまかす。

忘れていたが、時々顔の幻覚の上から気にしています風に触っていく。

冒頭で顔のことには触れているため素振りだけ見せれば、話がこれに伸びることは少ないだろう。


 「そういえば、王妃教育がずいぶんと進んでいるようだな。俺が勉強している範囲を有に越していると聞いたが」

「そうなのですか。知りませんでした。先生と一対一ですので、進みが早いとは思いませんでしたわ。」


嘘です。

先生に質問ばかりをして一つ二つ時代をかっ飛ばして終わらせた。

これは歴史の話で、算術語学に関しては勉強の必要なしという判断だった。

少々古典文学や歌劇といった分野で躓きそうになったが、教科書すべてを丸暗記し、気になった部分はローマンや使用人、学校に添えている教師に聞きに行けばすぐに終わる。

それらすべてスキルにより記憶にしっかりと残っているのだからチートはやばい。


「このまま順調に行くと高等教育に入る前に終わる予定らしい。歴代でも群を抜いて早いと王妃も言っていた。」

「アマリリスも今後教育に加わるそうですから歩みはゆっくりになると思いますが…」

「ああ、そのことだが、アマリリス嬢とは別で受けてもらうことになった。彼女には妃としての教育の他、クレソンを見てもらうことになっているからな。」


少し憐れんだ顔をしつつ、殿下はその場に自分がいないことに安堵しているようだった。


 そろそろいい時間かと時計を開く。


「もう間もなく夕食ですわ。」

「もうそんな時間か。長居してしまったな。」


別れの挨拶を終え、やっと解放された。

アマリリスやほかの令息がいないことを確認し、思いっきり背伸びをしてから自室に戻った。


 今日で折り返しともいえるお泊り会。

殿下の中ではまだ言いたいことは残っている様子もあったが、ここはやんわり受け流してしまいたい。


「お帰りなさいデンファレ、殿下の御用は終わりましたの?」

「ええ、スカミゲラの件だったわ。」

「殿下にはまだ会わせないの?」

「リコリス家とほか貴族のパワーバランスの話をして、何とか納得していただいたって感じかしら」

「その言い方ですと、殿下はまだあきらめてはいらっしゃらないようですわね。」

「表向きの納得をいただいたと行ったところね。」


疲れたとソファーに座り込む。

アマリリスは何をして時間をつぶしていたのかと思ったら私のデザイン画集を見ていたようだ。

お風呂に入っているほんの十分ほどでも暇にさせてしまうため渡していた物だった。


 「何か気にいる物はありましたか?」

「この服は乗馬に向いていそうね。淑女だからと乗馬もスカートなんて時代遅れよね。」


そうなのだ。

令嬢のたしなみとして身に着けなくてはならない乗馬だが、だいたいがボリュームの無いスカートの下にズボンを履き行う。

そのため鞍に座るだけでも一苦労。

結婚式ではウェディングドレスを着て、さらに横乗りをしないとならないため、これまた一苦労。

遠乗りに行くのも男性は誘いにくいというのが現状だろう。


「明日はダンジョンにも入りますし、できている物もあるので、着てみます?」

「いいの?」

「もちろん。」


デザインは男性用のズボンとは異なり、腰回りに余裕を持たせ、足首に向かってボタンを閉めるため細身になる作りをしている。

長めのシャツにコルセットベストを着るため上半身のラインはすっきりと、シャツで腰回りは見えにくい。

この国ならば、この程度までなら許されるだろうかという服である。

ちなみに、軍部には女性はいないが騎士には数名在籍がある。

その女性たちはロングジャケットにズボンを履いているが、そのズボンもロングブーツの中にしまっているためほぼ見えない。

ジャケットの下には邪魔にならない程度のボリュームを出すスカートを履いているらしく、こちらも上半身はすっきりと、下半身にボリュームを持たせてある。

とはいえ、数少ない女性騎士たちは女を捨てているとまで言われるため、髪は短く、筋肉もしっかりついているため、少々アンバランスではある。


 アマリリスに試着をしてもらうとなかなか体のラインがはっきりと出ることを恥ずかしがった。

そこで、急遽ベストの裾の後ろ半分に布を縫い付け、前は開いているが、後ろにはしっかりとボリュームを持たせた。


「これなら馬に乗るときに、馬にスカートが引っかかることも、靴に引っ掛けることもないわ。」

「気に入っていただけたのでしたら他のデザインも考えますわ。」

「商品化するのを楽しみにしているわ。」


 夕食の時間だとアザレアに呼ばれ、アマリリスは急いで着替える。






 お泊り会五日目。

深夜までアマリリスとデザインの話をしていたため朝は少し眠たかったが、ダンジョンに行く今日、お弁当を手作りするのだが、


「おはようございますデンファレ様、食材の準備は終わっております。」

「そう、ネモフィラたちはこれと、それをみじん切りにして、私はパンを焼くわ。」

「かしこまりました。」


なぜか今日はネモフィラの監視の元、朝食とお弁当の準備となった。

丸パンを成形し、鉄板に並べていく。

その間に玉葱のみじん切りが終わり、料理人により炒め始められ、他にみじん切りしてもらったキャベツやニンジンやハムを特製マヨネーズでざっくり混ぜて、塩コショウで味を調えるように伝える。


「味付けはこれだけですか?」

「ええ、そうよ。何かご不満?」


ネモフィラも昨日似たような物を食べている。

その際はポテトサラダだったが今日は強い酸味が苦手な殿下に合わせてコールスロー風のマヨネーズ和えだ。


「いいえ、次は何をいたしましょう。」

「パンにはさむレタスとトマトを切って頂戴。トマトは少し厚切りで」

「かしこまりました。」


なんだかいつもと違うがどうしたのだろうか。

日中はコテージの清掃、夜は夕食の給仕をお願いしているが何かあったのだろうか。

玉ねぎを炒めてもらっている間にひき肉をこねてもらっているフクシアの元へ向かい、ちょっと聞いて見た。


「ネモフィラは何かあったの?」

「詳しくは解らないのですが、夕食後に殿下の元へ呼ばれたようでして、それからはなんだか言いたいことを言えずにいるといったところでしょうか。元からなんでも口に出すタイプの方ですから言いたいことというのも彼女の目に留まった王宮との違いといったところでしょう。」


昨日の殿下の話といい、その後の殿下がネモフィラを呼び出した件といい、殿下が動いているのは間違いない。

それがどういった意図なのかは解らないが妙に好かれていることから考えて私の不利益になることはないだろう。

殿下に会うこと自体が心労につながるといつか気付いてくれるといいのだが


「デンファレ様、こねるのはこのぐらいでよろしいですか?」

「もう少し、白く粘りが出るまでお願い。」

「この人数分はなかなか一苦労ですね。」

「お泊り会が終わったらまとまったお休みが取れるように伝えておくわ。それまで我慢してね。」

「お気遣いありがとうございます。ですがデンファレ様の方こそお疲れではありませんか?」


殿下とあまり顔を合わせにくいから王妃教育の日程調整をしてほしいとやんわりと伝えたのは私だ。

やはりフクシアには仮面を付けていても疲れていることがばれてしまった。

朝一でアザレアや影にも言われている以上、顔や態度に出ているのかもしれない。

気を付けなくてはばれてしまう。


 しばらくして丸パンが焼き上がり、手分けをして上下半分に切り、レタスとトマト、焼き上げたハンバーグにチーズを乗せて、特製ソースをかけ、上のパンも乗っければ完成である。


「デンファレ様のところのサンドイッチは厚めの物が多いですね。」

「日中は肉体労働者が多いからがっつり食べて午後も頑張ってもらわないとね。」

「あとは紙で包むのでしたね。」

「ええ、一人一つバスケットを用意したからそこに素揚げの野菜や唐揚げ、サラダにデザートのアップルパイを入れて、完成よ。」


サラダにはタコさんウィンナーも添えて、厚焼き玉子も入ったおかずエリアはハムを花型や蝶に型抜き、なんとも可愛らしい。

キャラ弁感覚だ。

朝食の準備も並行へ行っていたためあわただしかった朝がようやく一段落となり、先に検疫が終わったと渡された緑茶を入れて、一息つくことにした。


「お茶でしたら私どもで」

「入れ方わかる?」


嫌味ではない。

おいしい緑茶が飲みたいのだ。

なので、頭上に視線を向けると一人の影が下りてくる。


「教えてあげて」

「御意」


少し温めのお湯で湯飲みを温め、その間に急須に茶葉を入れる。

湯飲みのお湯を急須に移し、そのまましばらく待つ。

茶葉が開くまでの間待つのはどのお茶も同じだろう。

湯飲みは今回五つ用意した。

それに合わせて急須も大きめのため、扱うのが少し大変そうだ。

しっかり茶葉が開いたところでゆすらないように少しずつ、五つの湯飲みに注ぎ、一巡したら二巡目、濃さを均等にしてもらう。


 ネモフィラはまじまじと紅茶とは違う緑茶の作法を脳にインプットしているように見える。

影はお茶が入れ終わると早々に持ち場に戻ってしまった。

一緒に飲もうと思っていたため、一つ余ってしまった。


「時間が経つと雑味が出るわ。おいしいうちに飲んでみて」

「いただきます。」


持ち手のない湯飲みが少し熱かったようで、一度持ったは良いが、すぐに机に戻ってきた。

それを見て、片手で持ちあげ、もう片手を湯飲みの底に沿え、口で少し冷ましてから口に沿える。


「少々お行儀悪いのでは?」

「こうやって飲んでいい物なのだから大丈夫よ。極東の国では飲み物も食べ物も風味を大事にしているの。なんだったら音を立ててすすって、鼻を抜ける香りを楽しむのよ。」

「……、博識のデンファレ様でもそんなお行儀の悪い飲み方をされるのですね。」


軽蔑します。

なんて言いたげにネモフィラは言うが、本当にそうなのだから何がおかしいと言ってやりたいところをこらえる。

向こうは勝ち誇り、きっと王妃様に報告する良い材料が手に入ったと思っているのだろう。


 だが、









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