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殿下と結婚したくないので男装して破滅ルート回避したい  作者: くるねこ
4、私は聖女にはならないし、私に黙って急な予定を立てないでほしい。
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7






 三日目にして、再びユッカ様と側妃様たちが来られた。


『元気になった?』


私はユッカ様がドラゴンの言葉が使えることに驚いている。

さらに言えば、いったいどこで言葉を覚えたのだろうか?

そして、言葉を覚えるのが早いのではないかと思ってしまう。

実家のバニラはまだワンワンやニャンニャンなどが言える程度、やりたくないときはイヤ、うれしい時は笑顔でうなずくなど、感情表現が泣く以外でできるようになってはいる。

さらに言えば幼児特融の宇宙語なんかも口にするため、私やバンダとはまた違う育ち方にお母様は嬉しそうにしている。


「おはようございます、ユッカ様。もうすっかり元気になりましたわ。」


 「本当にユッカはドラゴンの言葉を話すのね。」

「そうみたいですね。だた鳴いているだけだと思っていましたが、卵に二年も入っていた分、成長が早いのでしょうか?」

「そうかもしれないわね。そういえば、殿下も時々何か伝わっているように思えるときがあるわよね。子供同士だからだと思ったけど、もしかしたらあの子もドラゴンと話ができるかもしれないわね。」

「そうなりますと陛下にご報告しなくては」


三人で話をするならここではない場所でお願いしたい。

先触れでお父様とお母様が来ると連絡があったばかりなのだが、お母様はともかく、お父様は鉢合わせしても良い物だろうか?

そもそも、お父様はまだ仕事中の時間ではないだろうか?


「そうだわ。ずっとユッカの服を作っていなかったの。デンファレ様のところでベビー服お願いできるかしら?」

「もちろんですわ。ですが、王宮にも針子さんはおりますのに、今まで作られてなかったのですか?」


ドラゴンとは言え赤子の服なんて針子はまたとない経験、いくらでも作りそうなのだが


「お針子たちには産まれる前にはたくさん用意してもらっていたのだけど、産まれてみれば着られるサイズじゃないし、いざ採寸しようとしたら慣れない人には暴れてしまうの。お針子の多くが同じ血を継いでいるから、それを怖がっているのではと、陛下はおっしゃっていたのだけれど…」


王宮お抱えの針子は魔獣の血を引いている一族が担っている。

姿は針鼠に似ており、針が折れても自身の針で縫い続けられることから針子をはじめ、その腕前が認められたことで王宮お抱えの針子となった。


「では、採寸をさせていただいて、私で問題なければ、製作いたします。」

「よろしくお願いします。」


アイテムからメジャーを取り出し、ユッカ様の座高から図っていく。

嫌がる、怖がる様子なく、なんだったらすぐに抱っこをせがみに来る。


「少し大人しくしていてくださいね。」

『やだ』


座高をマジックペンでメモを取り、次に首回りを計ろうとすると抱き着かれた。

私の周りは甘えん坊が多いのだろうか。

バンダにエキナセアにユッカ様、バニラは年齢柄だろうか。


 サイズが図り終わり、それをローマンの元へ一言添えて送る。

手元の転送ボックスにはエキナセアからの報告書が送られて着ていたため、返信が来るまでに目を通す。


「あら、新たにトパーズの坑道が現れたそうですわ。とても色の濃いピンクトパーズということでもしかしたらユッカ様のお色に近いかもしれませんね。別の鉄の坑道近くでターコイズも出たそうですわ。」

「殿下の冠も用意してもらいましたが、弟殿下の冠もあるといいわね。」

「そうね。今後王女が産まれたときのことも考えていくつか用意してもらおうかしら」


 「では弟殿下分が三つ、王女の分を五つ用意してもらおう。陛下には私から話をしておく。」


突然の声に顔を上げるとそこには王妃様がおり、後ろにお母様がバニラを抱え、お父様とデンドロが現れたが、デンドロの顔には青あざがある。

どうしたのかとデンドロに目を向けるとお父様が背中を押し、私の隣に立たされたデンドロは何とも言えない顔でやってきた。


「如何されましたのお兄様?」

「バンダと剣の稽古をしていてやられた。魔獣と人間相手の力加減ができないんだ。」

「そうですね。魔獣相手の馬鹿力を人間の、同年代の子供相手に使うとなると青あざで済んでよかったですわ。」


痣のある顔に手を添えて治癒を使えばあっという間に色味は消える。


「痛みは残りますか?」

「いや、ありがとう。」


優しく笑うデンドロだが、その笑い方はぎこちない。

バンダとは剣の稽古をするほどの仲ならば、私にも同じように対応してほしいものだが、難しいのが人間か。


「殿下はご一緒ではないのですね。」

「今頃バンダとシンビジュウム領で取れたというトパーズを見ていると思うよ。連日デンファレに会うのはアマリリス嬢への建前もあるため今日は遠慮するということだった。チューベローズはバンダと同じで収集癖があるから話は合うのだろう。」

「そうですか……」


ますますバンダまで姫夫にならないか不安になっていく。


「バンダとも接点は持っているがチューベローズの中ではデンファレが一番だと思うよ。」

「いえ、その心配はしておりませんわ。」


きっぱり断ると転送ボックスから音がした。


 ボックスを開けるとユッカ様のサイズで作られた型紙が入っていたのとともに包み紙があった。

一言添えた中で宝石の現物が見たいと送ったためだろう。


「とてもきれいな色よね。バンダから見せてもらったわ。」


バニラを抱えたまま側妃様たちと座るお母様は先に現物を見ていたようだ。


「ピンクトパーズと言っても、発色はオレンジに近いお色見で、真っ赤なユッカ様の鱗と発色が近いですわね。ターコイズは思ったよりも模様がないようだわ。」


ターコイズと言えば独特な模様が他の鉱物には無いことから人気の物だと思っていたが想像よりも模様は無い。


 回しながら見ていると手元からターコイズが消える。


「こらユッカ!」


側妃様の声に近くに座っているユッカ様を見ると手元にターコイズを持っていた。


「ごめんなさいねデンファレ様。この前、これでクリナム様と喧嘩になっていたのに」

「お気になさらないでください。気に入られたのならユッカ様の物で構いませんわ。ですが少し角がありますから、研磨させてくださいね。」


大人しく手元の石を渡してくれたユッカ様の目の前でアイテムからダイヤモンドの破片と水の魔法で研磨を行う。

角が取れた石を受け取ったユッカ様は嬉しそうに小さな翼で飛んだと思ったら、そのままバニラの前に着地した。


「ユッカ様はバニラが大好きだからな。」


隣にいつの間にか座っていたデンドロに言われる。

話には聞いていたが二人がそろっているのはユッカ様が羽化したその時だけで、どの程度交流を重ね、仲が良いのかは知らなかった。


『見て見て』


なんて言って石を見せられてもバニラの反応は薄い。

おもちゃや食べ物という認識ではないからだろう。


 ほほえましく赤子たちを見ている母親たちとは違い、お父様は


「お前はいつまで神殿にいるんだ?」

「そういえば、いつまででしょうか? そろそろ確認書類も溜まっているでしょうから、ここでできることは終わらせるとしても、あまり長居するわけにはいきませんわ。」

「…聖女様より、お前に次期聖女としての教育を受けさせたいという申し出があった。陛下は渋ったが、王妃教育と並行して、教育を受けることでまとまった。良いな?」

「私は構いませんが、中々忙しくなりそうですわね。初等教育は後回しでもよろしいですわよね? もともと、十歳を予定されていますし」

「ああ、初等教育は十分終了していると聞いている。高等部は通うにしても、初等部は無しでも構わない。その代わり、バンダにはいかせる。」

「あの子はもう少し勉強に身を入れてもらいませんと、高等部の授業について行けなくなりますわ。」

「初等教育を始めるまであと半年、あいつが里帰りをするということでついて行かせることにした。」


あいつ、お母様のことだろう。

そこについて行かせるとなるとお爺様からみっちりと剣の稽古の他、家庭教師もつけられ勉強をすることになるだろう。

元総帥のお爺様の屋敷を今まで通りに抜け出すのは難しいのは間違いない。


「では、転移魔法付与のアイテムを回収せねばなりませんね。お父様はお屋敷が寂しくなりますが何かご予定でも?」

「殿下の頼み事を陛下経由で受けることになったため、そちらに専念する。なかなか変わった拾い物をしたな。」


私もかかわっている殿下の事案となると


「マロニエの家の方はどうなりましたか?」

「親は王家を騙した罪で斬首、子供はどうするかとなり、生き残るか野垂れ死ぬかは運次第だが、島流しとなった。」

「生きるも死ぬも、その先に待っているのは地獄ですわね。」

「全くだ。」


隣でデンドロが苦笑いをしている。

王家に逆らい、罪を償わずに死ぬことは地獄行を意味する。

女神信仰のこの国では死の間際に女神に会うと天国へ、狼に会うと地獄へ行くといわれている。

狼も女神の眷属で、地獄までの道のりを案内してくれるそう。

その道中は険しく、棘の道を進むため足は血だらけ、休めもしない細い吊り橋で、少しでも邪な気を起こし、上空に見える天国の光に向かおうとすれば橋から落とされ、地獄でも天国でもない、混とんへ落ちるといわれている。


 ユッカ様の体に型紙を合わせ、サイズに問題がないか確認し、デザインの話となった。


「色は赤よりも青や黄色の方がいいかしら? 緑も似合いそうね。」

「そうね。でもやっぱり王族と言えば紫もいいわね。」


側妃様たちはいくつか描いたデザインと布の見本を見比べ楽しそうに話が進んでいる。


 紫、それは王族の勲章の色であり、陛下や殿下が式典の際にたすきとしてかけている色である。

男性は正装が決まっているためたすきで喪や祭事を分けている。


 「バニラにも作ってもらおうかしら?」

「もちろんですわ。先日のドレスで採寸をされているでしょうから、デザインを考えましょうか。」

「昔デンファレに着せていたピンクのワンピースも可愛かったけど、あまり目にすることなく着られなくなってしまったのよね。バニラの方が成長が早いからもう着られないと思うの。サイズ直しをお願いできる?」

「解りましたわ。では、私の着ていた物のサイズ直しをいたしますわ。ほかにもバニラに着てほしいデザインがいくつかございますの。たくさん用意しますわね。」

「楽しみにしているわ。」


サイズ直しならここでもできる。

想像のスキルを使えば思い描いた物をアイテムから作ることは可能だ。

バンダに手紙を書き、アパレル工房に私のお古のドレスを運んでもらおう。




 それから数時間、女性たちは子供服からドレスの話題と変り、宝石の話に広がる。

男性二人は全く興味なく、先に陛下の元へ戻ると言って帰ってしまった。

赤子二人も私のベッドで熟睡だ。


「おや、もうこんな時間か。そろそろお暇するか。厄介者も来る。」


王妃様の言葉に皆すぐに帰り支度を始める。

厄介者とは誰なのかと思ったが、王妃様や側妃様たちにとって、聖女様は姑に当たる。

私の知らないところで何か面倒なことでもあったのだろうと、思っていると


「あら、もうおかえりになられるのですか?」


そう言って現れたのは姉王女様だった。

確かに厄介者だ。


「おやおや、まだ神殿に残っていたのか。そろそろ大叔父の元へ引っ込んではどうだ? どうせ聖女には慣れないのだからな。」

「あらあら、王妃という身分につく者が聖女を馬鹿にしたようなことを言っているわ。不敬よ。それに大叔父はもう長くないわ。殿下がお遊びで使っている領地なんかで暮せるわけないでしょ。いつ財政崩壊するがひやひやするわ。」


ああ、確かに厄介者だ。

それにしても、ずっと神殿にいる割に、外のことに詳しい。

だが、殿下の領地経営は順調で、崩壊の兆しは全くない。

私のことと言い、情報の偏りと言い、噂を信じるタイプだろうか。

特に、王族に近いものの、若い年齢の者が成功していることをひがむ傾向にある人物から聞いた噂と行ったところだろうか。


「結婚ができないからと弱い光属性で神殿に入った者が何も知らない外の話をするとは滑稽じゃな。」

「あんたの話も聞いているわよ。我が子ができないからって側妃をそそのかして罪をかぶせるなんて最低ね。」


王妃様と姉王女様は仲が悪いのだろう。

そうでないと古傷をえぐる言葉なんて出てこないはずだ。


 「王妃様と姉王女様は同級生で、姉王女様の王妃様のお兄様が婚約者様だったのだけど、王妃様が陛下に見初められたことで婚約は解消になったの。元からお兄様は婚約に乗り気ではなくて、姫夫の方が本命だったこともあって、噂が出回ってね。姫夫の方が庶民階級だったこともあって負け犬王女ってね。それ以来婚約の話は全く来なくなって、そのままあまりものになってしまって神殿に入ったのよ。」


珍しく、お母様から教えてもらった過激な内容に驚きつつ、それなら仲が悪いことはうなずけ、殿下への当たりが強いこと、殿下が対応になれていたことが解った。

王妃様の実家は辺境伯で軍事開発著しい帝国やクレソンの母の母国に面している。

隣はリーキとナスターシャム領、お爺様のアップル領にも接している。

それを考えると政略的な結婚だったのがよくわかるが姉王女様は本気で好きだったのだろう。


 バチバチと火花が飛ぶ間にいるのがいたたまれなくなり、


「失礼いたしますわ。私はいつまで神殿にいればいいのでしょうか?」

「知らないわ。聖女様にでも聞きなさい。会えるわけないけどね。」


捨て台詞を吐いて、肩にかかっていた髪を後ろに払いながら、姉王女様は帰っていった。

いったい、何をしに来たのだろうか?






 神殿を出られたのはそれから一週間というそこそこ長い日付をまたいだ後だった。

その間、数度にわたり、聖女様直々に聖女教育の内容説明や、神殿内の出来事を他言しないこと、外部の情報を持ち込まないことなど注意と始動を受けた。

それと並行し、今後行う王妃教育と聖女教育の日程調整が行われ、王妃教育は今まで通り週二日、聖女教育は週三日という話をお父様に頑張ってもらい、週一日となった。

そのためか、神殿にいる間、座学は問題ないからと実技から入り、結界の貼り方、衝撃を吸収・反発・受け流す方法など、今まで使ってきた内容について行い、王宮全体に結界を張る方法となったがそれも領地全体に貼っているため問題なく、ためになったのは今まで四角かった結界が丸やひし形も作れるようになったことだろうか。

王宮全体に貼った結界は半球の形であり、さらに王都全体も囲む方法もあるといわれるが、私の領地は円形都市ではないし、領地は王都よりも若干広いと思われるため、結界の初歩は終了といわれた。


 この結界というのは光属性でなくても作ることができる魔力の壁。

そのため、光属性持ちのみで王宮と王都に貼っているわけではなく、神官と呼ばれる者も混ざり、結界を張る。

はっきり言って、光属性をメイン属性にもてば、神殿に入れるがその能力はまちまち、強弱もある。

軍部の魔術師団だけで結界を張った方が強固なのだが、それでは人員が足りない。

結界は持続時間でMPを消費するため、無限の私のように一度張ったら永続的とはいかない。

陛下はHP、MP;無限を知っているが神殿までは話が届いていないようで良かったが、実技の授業となると不審な顔をされた。


 ちなみに、聖女は男女問われる象徴ではない。

それはこの国が異性愛も同性愛も認めていることも背景にあるが、聖女候補者はほとんどが女性、男性は神官見習いとなり、また違った教育を受ける。

ヒロインの義兄弟も幼いころから男爵家の生まれではあるが神官職に就くための教育を受けているという設定があった。


 聖女は男女問われないと公式にはされているものの、近代史に載っている聖女は皆女性で、男性だったのは中世でも前半、聖女が戦場に出て命を落とした際、その息子が強い光属性を持っていたことから一時的に聖女となったが、当時の王女との婚約と同時に別の女性が聖女となっている。

さらにその前には王子の中で聖女が生まれ、それにより、国を二分する戦争となった。

第一王子と第二王子の連合軍と聖女となった第三王子とそれを指示する平民の戦いとなり、勝利したのは連合軍、聖女であった第三王子はその後当時の神殿替わりの塔に幽閉され、民の幸せを願って死んでいったと手記が本になっていた。

これより前も調べれば出てくるのだろうが、実家の書庫には無かった。


 「長い間大変お世話になりましたわ。近いうちに寄付金を届けさせますので、お納めください。」

「お心遣い感謝いたします。聖女教育の日程に問題があれば、連絡をお願いしますね。」

「何かと体調の前後が激しく、仕事が詰まっていることもございますので、何かと連絡を寄越すことが増えるかと思いますが、よろしくお願いします。」


心にもない挨拶をかわし、神殿を後にした。


 王宮の私室に移動するとモルセラとフクシアの他、もう一人メイドが増えていた。

ネモフィラと名乗ったメイドは王妃様付きのメイドだった気がするが、どうして移動になったのか、聞いてもいいものかと、視線を向けると


「王妃様より仰せつかりました。これからは三人、デンファレ様の元を離れないようにとのご命令です。」

「私はタウンハウスと領の各地を転移術で移動しております。時間が惜しい時があるからです。そのため、四六時中となりますと少々難しいかと…」

「では、モルセラとフクシアはタウンハウスに、私一人でしたら転移魔法を付与した物をいただければそちらで移動します。」

「今あったばかりの者にそう簡単に私室に入ることもできるすべを渡したりはしませんよ。それが王妃様からの命令でも」

「浮浪者には渡すのにですか?」


カッチーンっと、きたが、ここは抑えよう。

怒鳴り散らせばゲームのデンファレと一緒だ。


「彼らが使っている転移術は別物ですし、私は彼らをあなた以上に信頼しております。そうでなければ私の代表的ブランドの原石を持ち歩かせません。しかも、多くが王家に納品されている物です。そんな物を預けている子たちをここの人以下の信頼しか寄せていないと思ったのですか? これから領地に来ようとしているのに浅はかではありませんか?」

「……失礼いたしました。」

「タウンハウスまでは問題ありません。領地は少々ごたついておりますので、用事がある際はローマンに連絡を、エキナセアは常時そちらにいらっしゃいますので、私宛の事柄はエキナセアを通してから連絡を、あの子にスケジュールなども任せておりますので」


では行きましょうか、と、転移術でタウンハウスへ移動する。




 「お帰りなさいませんデンファレ様。」

「ただいま、彼女たちもこれからここで働くから、アザレアはいろいろ教えてあげて」

「かしこまりました。」


アザレアについて行き、三人は屋敷の中を進んでいくため、その後ろ姿に


「ここにはここのルールがあるわ。よく聞いてね。」


そう言うとゆっくりとお辞儀するネモフィラにフクシアもモルセラも困った顔をしたままお辞儀した。

おそらく、フクシアとモルセラの上司に当たるだろうネモフィラの命令は聞かなくてはならない、機嫌を損ねられないというのが二人の様子から察することができる。

それでも二人は私寄りでいるつもりなのが雰囲気で解る。

これは何かのスキルだろうか。

あとでローマンに聞いてみよう。


 「エキナセア、ネモフィラのことをよく見ておいてね。あとの二人は問題ないから」

「かしこまりました。先ほどバンダ様が見えられ、領地へ向かわれました。なんでも、友人を招きたいから準備がしたいとのことです。」

「バンダの友人? クレソン以外にいるの?」


バンダの仲が良い相手なんてほとんどが年上でギルドの受付のお姉さんや木こりのコランダム、同年代となるとクレソンやエキナセア以外は知らない。


「貴族の方のようで、ローマンに相談すると急ぎで向かわれましたよ。」

「そう…? わかったわ。転送ボックスで届いた仕事以外で確認書類はある?」

「急ぎのものは今のところはございません。ローマンの元には少しあるようです。」

「領地に向かうわ。あとをよろしく。」








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