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殿下と結婚したくないので男装して破滅ルート回避したい  作者: くるねこ
3、領地拡大って簡単に言わないでください。しかもドラゴンまでいるなんて…
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4






 ダンジョンの捜査は単独行動で進めていたが、あまりにも広大な地形にプラスして、ボス魔獣を数体確認。

それにより、服従の首輪をつけて回り、マップの半分来たのかとどうかもわからない。

ラスボスがなかなか見つからない中、


「デンファレ様」


通信用のアイテムをもらい、耳に着けていたが、連絡なんて制限時間が来たという話以外では来ないと思っていた。

背中にはやした翅を止め、通信機に魔力で声を送る。


「何でしょう?」

「不可解な物を見つけました。転移魔法陣の設置が完了していますのでお戻りいただけますか?」

「解りました。」


地面におりて持ち物から一枚のラグを広げる。

陣を描く暇がない時に使う簡易的な魔法陣である。

そこから呼ばれた魔法陣まで飛ぶ。


 「何かございましたか?」


呼ばれたのは一匹目のボスを見つけた地から少し進んだ地点。

何か大きな遺跡があるな。

と、思い。

後援隊の一部に調査をさせていた。


「中に石板がございまして、魔術団長でも解読できないようなのです。」

「私でもわかるかどうか?」


日本語と少しだけ英語がわかぐらいで、この世界の古語は魔法文字しかわからない。

魔術騎士団長、通称魔術団長にわからないなら私にわかるわけがない。


「何でも、三種類の言語が混ざっているというところまで解読できたのですが、どれもこの国には存在せず、特に妙に密集している割に一文字らしいよくわからない文字がどうも解読の妨げで」

「密集した文字?」


なんだろう。

この国はローマ字のように簡単な文字で単語を作り、組み合わせで文章になる。

文法は日本語と同じ。

それ以外に勉強するのは帝国文字と隣国の言語を学ぶぐらいだろう。


 遺跡の中はまるで甲骨文字のような絵が並んでいる。

馬や魚、太陽に星、水、火などなど、昔の暮らしを現しているような絵もあれば意味があるのか解らない組み合わせも多い。


「こちらです。」


やっとたどり着いた遺跡の奥にはダンジョンには無い太陽光のような光が天井から降り注ぐ光に照らされた石板があった。

こんな遺跡の中にあるのだから石板も古びた石だろうと思っていたが目の前にあるのは半透明で私の背丈ほどで、横に長い長方形をしている。

その上面を観察している魔術団長の横に並ぶ。


「団長様がわからない物が私にわかるとは思えないのですが」

「同意見です。」


ことごとく喧嘩売ってくるな。

初期の対応から一変し、ダンジョンに入ってからはスカミゲラとして受けた態度と同じ物が帰ってくる。


 足元を浮遊魔法で浮かせ、石板をのぞき込む。


「ん?」


あれ。

おかしいな。

読めるぞ。



【ワレ、ここに眠りし者。ワレ、ここをせき止めし者。時の流れとは水と空気では違う。地上と地下では違う。進む生者と死を待つ者では時間が違う。時に終われることなかれ、さすれば沈む太陽よも破壊できる者なり】



どういうことだろう?


 読み上げ、腕を組む。

ほかに何もないかと石板を観察すると台座にも文字があった。



【赤き炎の玉も青き星の生命も白く濁った氷もまた一同に同じ物からできた分身。何にもカエラレず、何にも変化する。見た目にとらわれ落ちるのは黒く混沌とした光の世界】



これまたなんでだろう。

読める文字は日本語だ。

間違いない。

もともとこのゲームは日本人が作った物だから日本語でかかれてもおかしくはないのだろうがここでの登場は悪意しかないだろう。

あるはずのない七つ目のダンジョン。

時間の流れが違うことを示唆する内容の石板は日本語。

まるで、誰かが転生してくる前提なのではないだろうか。


 魔法ペンで内容をもう一度メモを取り、しばらく考える。

その隣で刺さるぐらい見下ろされているが特に声をかけるつもりはない。

そのためか、


「……もう一度読み上げてもらえますか?」


副団長がしびれを切らして声を出す。

意地悪をしているわけではないためもう一度読み上げた。


 「このダンジョンに太陽はない。」

「ですがなぜ昼間のように明るいのでしょう。照明があるわけでもございませんし、疑似的太陽も今のところありません。そもそも、どこに行っても影は私の真下にありますわ。」

「石板の時に終われない者だけが太陽を破壊できるとは、土台の文にもつながる部分がある。」

「赤き炎の玉。黒く混沌とした光の世界。」


太陽、黒点、太陽フレア。

こんなところだろうか。

この世界に太陽に黒点があり、その周りで太陽フレアが発生するという検証も研究もおこなわれていない。

知る者はいないだろう。

では、太陽と赤き炎の玉はイコールではないのだろうか。

わからない。


 「ここはお任せしてもよろしいでしょうか。もう皆さんが入ってから十二時間を過ぎました。できるだけ奥まで進み、ボス魔獣の確認がしたいですわ。」

「安全確認が優先です。お任せいただきましょう。」


魔術団長にニコリと返し、遺跡を出る。



 それから元の場所に戻り、ラグを回収がてら魔法陣を描き、飛び立つ。


 飛びながら地面を見れば私の影、でも、地下空間のダンジョンは天井に太陽などの灯りは無い。

太陽がない以上、遺跡の文面がなぞかけと思われるがあの頭の固そうな魔術団長様に解けるだろうか。

こういうのはバンダが得意だが今は謹慎中のため餌が与えられない。


 視線を遠くにむける。

向かっている先は薄暗いものの、進むにつれ明るくなっていく。

地形を見下ろし、魔獣を探すが見当たらないし気配感知にも引っかからない。

幾分この周辺は安全なゾーンなのだろう。

一端下に降りて、昼食でも取ろう。


 湖に川もある自然豊かな土地だが今立つ場所は砂漠のような砂の上。

こんなにも地形が変わるダンジョンは珍しい。

森なら森、迷路なら石造り、氷や火、雪、砂漠などなど、決まったテーマがある。

だが、ここはどうもそうとは思えない。

向かっている先には薄暗いものの、氷の城が見えている。

おそらくそこにラスボスがいるはずなのだが、まだまだたどり着かない。

一匹目のボスの家は今回近くで見た結果、氷やガラスではなく水晶だった。

ほかのボス級魔獣も鉱物の家を持っていたことから領地で鉱物資源が多いことあり、ダンジョンに反映しているのかもしれない。


 持ち物から椅子と机を出し、元は回復アイテムのバケットサンドも取り出し食べる。

この国には菓子パンはなく、丸パンやバケットが多い。

食パンもないため大きな丸いフランスパンの一種を薄切りにしてサンドウィッチが作られることもある。


 仮面を外して食べ始めると魔獣の子供か、小動物が集まり、おこぼれを欲しそうにしている。

いくらでも持っているため、鳩に餌やりの間隔で食べさせるがここで、


「動物にエサをあげてはいけません。とか、無いわよね?」


ついつい思い出す前世の害獣被害だが、ここはダンジョンだし、いるのは小型で冒険者もここまで深く来れば見向きもしないような小物、問題ないだろうと考えながら背中に赤黒いまだら模様の石の鱗を持つ蛇にゆで卵のスライスを上げる。


 皆食べ終わるとそそくさといなくなっていく。

私も食べ終わり、仮面を直すと机とイスをしまう。

しまって何もなくなった場所に残されたのは私と、先ほどの蛇だった。

なぜ戻ってきた?


 シャーシャー何か言っているようだが何分蛇語は話せない。

そこで、干支の使い魔の蛇を出し、二人で話をさせると二人そろって同じ方向に進むため、後を追うことにした。


 砂漠を抜けて、多肉植物の森へ入る。

湿度と熱気の吹きこむ先へ案内されるまま進むと


「赤き炎の玉……?」


そこにあったのは薄いガラスのような物に入った真っ赤に燃える炎。

なぜこんな場所にあるのか、そもそも、これをどうするのかと思っているとこれまた台座に


【赤き炎、ここに封印す】


と、ある。

つまり、壊していいのだろうか。

壊した瞬間に何が起こるかわからないため警戒するが使い魔じゃない方の蛇がガラス玉の上に乗るとスーッと中へ入っていった。

どういうこと? 

中で燃えることなくいる蛇は何なんだとまた考えてしまうが、


「よし、封印を壊そう。」


行きごみを口にする。


 魔術団長に報告すべきなのだろうがいけ好かないし面倒くさい。

アイテムからメリケンサックを取り出し


「はああぁーっ! ていや!」


特に意味のない声を出してこぶしをまっすぐ球体に向けて放つ。

球体は簡単に砕け、残ったのは依然燃える炎と



『時間の流れをダンジョンの外と統一しますか?

            はい

            いいえ  』



なんて画面が出る。

ひとまず、『はい』を選択すると急に体に重力がかかるような、一度融解して戻ったような、変な感覚がする。

これはやらかしたかと思い、仕方ないく、ラグを広げ、ダンジョンの入り口へ向かうことにした。



 「デンファレ様、丁度良かったです。急に時計が……」

「それ、私が原因なんですの。団長様お二人を呼び出していただけますか?」


自分で呼べばいいが絶対に二人とも来ないだろう。

代わりにバイオレット隊長だけが来そうだ。


 少しして時計の件で呼び出した二人に事情を説明する。


「なぜ単独行為をしたのですか。ここにいる全員の命にかかわることかもしれないのですよ。」

「申し訳ないわ。こちらも戦闘中で、まさか赤き炎の玉があんなもろいガラスの玉なんて思わなかったんですの。」


ここは六歳児(まだだけど)風に言うと怒ろうとした団長たちが止まる。


「まあ、何もなかったわけだ。次からは気を付けるように」

「ありがとうございますわ。念のため、一度外に出てみようと思うのですが」


外がどのぐらい進んだことになっているのか確認がしたいという意味だとはすぐに察知され、


「お任せします。」


とのこと、そのためすぐにダンジョンの出入り口へ転移した。



 外は夕暮れ、鉱山夫の声がする。

その方向へ行くと帰り道で猪を捕まえたようで上機嫌だった。


「みんな、お疲れ様。」

「あれ、お嬢さん。ダンジョンにいるんじゃ?」

「馬鹿言え、ずっと領地を離れたままにするわけないだろう。いったん戻ってきてくれたんだよ。」


ごめんね。

そんなつもりはないのよ。


「変わりはないかしら?」


仕方なく聞くが


「はい。ローマンさんとエキナセアが頑張ってますよ。」


と、言われる。

なんだ。

やっぱり私必要ないのか。

と、思ったら


「大きな決定をするのに呼び出し方がわからないっていってなかったか?」


奥からひょっこり顔を出した鉱山夫が言う。


「大きな決定?」

「はい。街のことで」


ここから見下ろす街はまだ木々が邪魔でよく見えないがきれいにレンガが敷かれ、建物がいくつか建てられる途中のようだ。

その一角が大きく開いている。ちょうど、中央に当たる位置だろう。


「屋敷に戻るわ。みんなも一緒に行きましょうか。」


この場の鉱山夫を連れて、屋敷に戻った。







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