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殿下と結婚したくないので男装して破滅ルート回避したい  作者: くるねこ
2、お兄様には関わりを持ちたくありませんので領地経営に専念します。
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 「二人ともどうでもいいって顔してないで後を追うよ! さすがに幼体みたいだから食べられたりはしないだろうけど」


この世界の雷獣もゾウと同じぐらいと想定される。

今回見かけたのは虎ぐらいだろうか。

ゾウサイズの虎は生で見るとすごい迫力だろうなと思ってしまう。


 竜を出し、背中に乗って空から追う。


「クリス、ダイヤ、精霊たちに人間の子供が魔獣に攫われたって、三歳の男の子!」

「はーい」

「伝えて着てやんよ!」


そう言って一瞬で姿は消えた。


 少しして森の一角がキラキラ光り始める。


「あそこだ。」

「ねえ」


私の後ろに座るバンダが腹部に回された手を強く締めながら聞いてくる。


「高いところ怖かったっけ?」

「そうじゃない。そのしゃべり方、僕といるときは何とかならないの?」

「姿の切り替えで分けているから無理、混合すると間違えそう。」


最近やっと慣れてきたんだ。

あまりデンファレに戻りたくない。

バンダの抱きしめる力が強くなり


「ぐえぇ…」


苦しい。

甘えん坊だなもう。

バンダはあとで構えばいい。

何より優先はクレソンだ。


 キラキラ上空まで来た。

旋回して様子を見ていると


「デンファレ様!」


地上から光の柱が上がってきた。

当たれば感電すること間違いなしの雷だ。

絶対痛いだろうが僕の出す稲妻の方が威力はある。

僕より弱いのは確実だ。

鑑定でクレソンを確認したいがこの距離では情報が遠い。

その時、急に視界がズームされ


「うぇっ!」

「何急に?」


こっちが聞きたい。

もう一度鑑定を使いながら一点に集中するとズームされる。

なんだろうこれは? 

こんな能力ゲームであっただろうか? 

まあいい、雷獣は子供が十二匹、親はいない。

ちょうどいい。

今のうちに奪還しよう。


 「二人はここで待っていなさい!」


そう言ってバンダの手をほどき、竜から飛び降りる。


「お嬢様!」

「ええぇ!」


エキナセアとバンダの声なんて聞かず、地上目掛けて落ちる。


 あ、思い出した。

あれはズームではなく、千里眼だ。

望遠機能のように使っていた気がするが遠くの魔獣の姿を確認するのに使える。

クエストクリアで会得したスキルだ。

その後すぐに会得したスキルに動物変身があった。

さてどうすればいいか。

だいたい、こういう時はイメージだ。

あと、強く念じること、そうすれば姿が猫に変わった。

着地の重力も猫の体ならうまく吸収される。

ここって本当に、ゲームの世界で、想像の範囲内のことしか起こらない。

前世の小説やゲームの内容の範囲内だ。

記憶とは有り難い。

もう少しステータスも念入りに確認するべきだろう。


 姿を戻し、雷獣の巣へ入る。

ツタを編んでできた巣と呼ばれる場所で暮らしている。


「クレソン!」

「スカミゲラ!」


巣の中央でいまだに雷獣に咥えられているクレソンだが、もう泣いていなかった。


「怪我ないか?」

「だ、大丈夫です!」

「じゃあ、もうしばらく待っていてくれ!」


アイテムから雷撃吸収効果のある鞭を出す。

それを振り回し、次々と子供の雷獣を仕留めていく。

途中でクレソンを咥えていた雷獣が襲ってきたためクレソンを回収しがてら鞭を揮う。


「スカミゲラ!」


クレソンが僕の服をつかんだ。


「もう少し待ってて、すぐ終わらせる。」

「うん」


とはいってもクレソンがくっつくから動きにくい。

誤ってクレソンに鞭が当たらないように雷獣を仕留め、ポケットにしまっていく。


 「スカミゲラ! 上だ!」


バンダの声に上空を見る。

竜が二人を乗せて離れていく。

木々の間から見える空は一瞬で暗雲に替わり、雷がとどろく。


「クレソン、すぐにここから離れるんだ。」

「でも…」

「お前がいたら戦いにくい。」

「僕も手伝う!」


急にどうしたのか。

その顔を見ると真剣そのもので、変化に驚いていると竜は迂回し、バンダとエキナセアが来た。


「なんで結界内に入れるんだ? 今まで雷獣の姿なんてなかった。」

「エキナセアは念のため鉱山夫に避難指示を、領館なら結界を強固にしてあるから雷獣ぐらいの電撃なら防げる。全員中へ入るように伝えてくれ。」

「はい!」


再び竜に乗ったエキナセアが通り抜けるスピードで木々が倒れる。


 「バンダはクレソンを守れ。結界で封じ込めて撃ち殺す。」

「結界は外から干渉できないんじゃないの?」


その通り。

この世界の結界は排除対象を中へ入れないための物であり、攻撃はまず受け付けない。

だから僕のレーザーも同じく攻撃なため干渉できない。

だから


「囲って、動きを止める。魔獣拘束具はいくらでもある!」


僕は走り出し、二人から距離を取る。

結界を張るのに木々は障害であり、結界自体が弱くなってしまうためできるだけ上空で何の妨げの無い状態で結界を張りたい。


 「鳥!」


干支の鳥はここでは鶏ではない。

見た目は鳳凰に似た孔雀のような鳥を拡大し、その背に乗った。

空へ飛び出したその時、目の前が真っ白な光に包まれた。

僕目掛け雷が落ちてきたんだとスローモーションな視界で判断するが身を守る前に下にいるバンダとクレソン、領館に集まっていっているだろう鉱山夫やその家族に万が一があってはいけない。

幸い、僕は全属性魔法回避がある。

物理攻撃以外でケガすることはない。


 一気に魔力を練り上げ、地上半径数十キロに結界を張った。

そのため、


ドンっ! 


と、いう音が聞こえたのは耳元でそれと同時に鼓膜が破裂したようにも思えるが自動回復が発動し、痛みは無くなっていく。

だが、あの衝撃で鳥は消えてしまった。


 落下する。

そう思ったが僕の体が宙に寝そべっている。

これはどういうことかと手をつくと結界だった。

結界の上って立てるんだ。

そうだよね。

侵入できないんだから上に乗ることぐらいできるよね。

だいたい中に入るか、敵を囲むかしていた結界が何だか本当に結界なのか怪しくなってきた。


 まあ、そのあたりはあとで考え、応用をしようと足場として結界で階段を作り、雷獣に近づく。

先ほどの鞭に強化魔法をかけ、雷獣目掛けて揮う。

足場を移動しつつ、何度も何度も鞭を揮い、追い込んだ時にはもうすっかり太陽は真上に来ていた。

そして、雷獣も結界の足場を円筒形のらせん状に伸ばしていったことで動けるスペースは減り、足場の間から逃げようにも大きな体は通ることができない。


 そこに、一本の光の柱が上がる。

これは雷じゃない。

領館の方からだった。

エキナセアの避難完了の合図だろう。

では、問答無用で行かせてもらおう。


 雷獣系魔獣Lv,255。

常人ならはまず戦おうなんて思わない伝説レベルの魔獣だ。

この国にこんなレベルの魔獣を倒せる冒険者はいるだろうか。

マスターのレベルならいけるのだろうか。

なんて思いつつ、再び魔力を練り、エフェクトから魔獣の首輪と捕らわれの囚人の檻を選択、首輪は大きく、遠心力を使い、雷獣に向かって投げた。

暴れる雷獣の後をしつこく追い回す首輪、その間に檻を展開しつつ、練り上げた魔力で最大火力を用意する。


 雷獣の首に首輪がかかった瞬間、持っていた鎖を引く。

そして檻まで誘導し、中へ押し込んだ。

普通の魔獣ならこれでいいだろうがこの雷獣はそうは行かないため、檻に鍵をしっかりかけたところで魔法の火柱が檻を包んだ。

ここまでしなくてもといわれるかもしれないが今レベルの魔獣が王都へなんて行ってしまったら一大事だ。

僕の安全な未来どころか国が無くなってストーリーも始まらず消化しきれない気持ちになるだろう。


 火柱は数秒で停止させた。

あまり焼いてしまうと売れなくなる。

雷獣は珍味として有名で全身余すことなく食べられる高級食材だ。

今日の夕食も雷獣の子供だなと思いながら檻の中で死んでいることを確認し、地上へ降りる。






 昨日の魔獣退治はさすがに疲れた。

体力も魔力も∞なはずだが疲れを感じるこの体に疑問を持つが解決してくれる人がいないためそういうものなのだろうとしておく。

あれ以来、クレソンは数時間、いや、十数分置きに


「僕も魔獣退治したい!」


と、バンダにせがみ、バンダが困った顔をしていたため、鉱山の勉強なんて全く進まないまま、魔獣討伐へ出ることになった。

さらに、


「あの鞭僕も使いたい!」


好奇心旺盛はいいが泣き虫はどこに置いてきたのだろうと思うぐらい。

下級の魔獣へ勇みよく攻めていく。

この姿アマリリスにも見せてやりたいものだ。


 そんなわけで、鉱山の勉強目的で来ているため午前は勉強、午後は自由時間にすると言ったら真面目に座学を聞いてくれる。

内容は三歳でもわかる程度でなぜ、一つの鉱山で多彩色の石が出るのか、加工の工程などは省き、簡単に坑道の安全や働き手についての話がほとんどで二日もすれば座学は終了、僕と精霊でまだ掘り進めていない坑道について相談し、ダイナマイト係をクレソンにお願いすることにした。


 「ここでいいの?」

「そうそう、いい感じ」


背中には小ぶりながらクレソンが持つと大きくも見える剣と腰には鞭を付け、鉱山に入る格好ではなく、完全にモンスターをハントしに行く恰好だ。

斜め掛けのバックには応急処置の道具と簡易宿泊キット、緊急連絡花火、そして獲得アイテム捕獲用にデンファレのポケットに近い性能の巾着を渡した。

ステータスには出てこないため荷物は自己管理。

だから、バックの荷物は巾着に入れないように、すぐに取り出せるようにと言っておいた。


 導火線に火を点け、数十秒で爆破する。

大きくえぐれた穴をさらにスコップやクワで掘っていき、入り口が崩れないように補強、掘り進め、道中の落盤を防ぐために補強、そういったことを繰り返して数時間。

掘り進めるとあっけなく出てくるのは虹色の輝き








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