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殿下と結婚したくないので男装して破滅ルート回避したい  作者: くるねこ
1、悪役令嬢に転生したけど、私のスキルがチートすぎてやばい……
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 売った宝石だが、早いことに一つ商品ができたといわれ、早めに領地から王都に戻り、店へ寄ったのは数日前のこと。

ダイヤモンドのドロップペンダントで細かいカットがされている。

魔法があるからこその加工だろう。

カットをよく見るとデンファレの花の形を思わせる柄があった。


「きれいね。」

「旦那様より、チェーンだけ渡したと聞きまして、いやはや」


迷惑をかけたようだ。

お母様とお揃いのドロップペンダントは大振りだがシンプルである。

飾り気がない分存在感もある。


 「きれいね。」


私と同じことをいうお母様に見せられたのは今日。

体調が悪く、部屋へ入れなかった。







「デンファレの頑張りをこうして手にできてうれしいわ。」

「私もお母様に付けていただけでうれしいわ。これを付けて元気になってね。」


言葉は可愛らしい子供っぽく言ってみたが、渡した物は大粒のダイヤモンド。

しかも精霊の祝福付き。


「ブランド名は決まったの?」

「いいえ、まだですの。精霊からの贈り物ですから何か素敵な名前にしたいのですが思いつかなくて、お母様ならなんて名前にしますか?」

「そうね……ファレノプシス。あなたたちの名前と同じ蘭の花よ。蝶の形をしているから『あなたのもとへ飛んでいく』『幸せの羽ばたき』といった花言葉があるそうよ。精霊の羽根も蝶の様だと聞くし、どうかしら?」


お母様らしい。

なぜ蘭にこだわるのかわからないがオーキッド家の宿命なのだろうから仕方ない。


「では、ファレノプシスダイヤとして売りましょう。我が家の採掘品と解りやすいですし」


そういうと急に母も顔が曇った。


「オーキッドの物だと解りやすすぎるとデンファレの功績がかすんでしまうわ。やっぱり違う物に」

「いいえ、私はまだまだやることがたくさんありますので名前負けなんてしている場合じゃありませんわ。」


 夜の挨拶をして、自室に戻る。

そこではバンダが幼児教育のパズルをしていた。


「デンファレ、ここから先に進めない。」


床に広がるいくつかのパーツから指定されたルートにボールを通してゴールさせる子供にはぴったりのおもちゃ。

空間把握能力が養われるため貴族の家には必ずあり、特に爵位を継ぐ嫡男は念入りに遊ばされる。

現在、一部ルートは出来上がっているが間抜けている道をつなげる作業を一日中やっているバンダだが全く進んでいない。


「こんなの、ここをこうして、ここにこれを入れて、こっちにこれを置いて、ここはこっちのパーツでしょ。それからこれをここに設置すればはい完成。」


ボールを流せばあっという間にゴールだ。


「なんでできるの?」

「今採掘場の安全のために空間ばっかり見ているからね。」


明日から採掘がはじまる。

念入りに検証しないといけない。





 バンダは宿題が一人でできなかったからと教育係に捕まりお留守番。

私一人領地につくと朝の準備体操中だった。

朝会も兼ねて、採掘前に行い、出欠、休み、担当採掘場の確認をする。


「おはようみんな。持ち物は大丈夫かしら?」


この世界、ヘルメットという物はないが私のアバターにはある。

なので全員に配り、安全な服装での作業をしてもらう。


「今日から採掘作業開始です。未知の領域ですから安全に気を配り、命を大切に作業しましょう。休憩時間を守り、水分補給を忘れずに、疲れたら交代。みんなを過労死させたいわけじゃ無いから無理なく作業してください。では、まず第一班から私に付いてきて、ほかの班は採掘場前で待機!」

「はい!」


野太い声がそろう。

昨日来たばかりの男たちはおかしな場所に来てしまったと思っているだろうがしっかり働いてもらう。


 一つ目の採掘場はアメジストの大きな原石を取り出した場所で、中に詰めたがれきを取り除く。

結界で安全にはしてあるが口で説明してあった壁や天井の補強を伝え、ダイナマイトで少しだけ爆発させるとすぐに水晶が出てきた。


「ありゃ、透明じゃないや」


茶色っぽいが水晶で間違いない。


「問題ないわ。不純物で水晶は色が変わるの。アメジストも紫色の水晶なのよ。主に溶岩などに含まれる物質が混ざることで紫になるのだけど、加熱処理をすると黄色に変わるのよ。おそらく鉱物としての形を成す際に何等かの熱が加わったのね。茶色でも価値はあるわ。捨てないでね。」


皆に聞こえるように説明する。

原石はできるだけ大きな形で取ってほしいと説明してから次の採掘場へ向かう。


 次はダイヤモンドの岩盤のある山頂付近から隣の山へかけて下りる。

現実的にはあり得ないだろうが山の表と裏で取れる宝石が違う。

予定ではルビーやサファイヤが出てくるはずだ。

どうもダイヤモンドの方が多そうで、ルビーたちの採掘量はあまり見込めないが希少価値が出る。

事前にダイナマイトで開けた穴に先ほどと同じように補強の仕方を説明して任せる。


 そんでもって反対隣りの山へ行く。

金の洞窟の他、銀やアルミニウムが採掘される予定でいる。

アルミがあれば加工もしやすく、食器も木製の物から金属製に替えられる。


 さらに、鉄が眠る山と緑柱石・ベリルの眠る山もある。

ベリルは不純物でアクアマリンやエメラルドになる。

ファンタジー様様に期待している。


 すべての採掘場を回り、屋敷へ戻る。

どう考えても人数が足りない。

農作業の人手を割くわけにもいかないため王都の浮浪者集め以外にも他領からも集めよう。


 ローマンの執務室には私の机もあるためそこで手紙を数通したためる。

お父様のつながりのある領やお母様の実家アップル領のおじい様にも手紙を出す。






 それから数日、採掘が順調で、徐々に原石が出てくるようになり、思いのほかルビーが多くて喜んだ。


「お嬢様の瞳の色のようでお美しいわ。」


スターチスの妻に言われる。


「ですがサファイヤの青も将来美しくお育ちになられたお嬢様が身に着けると映える色ですよ。」


スターチスの弟の妻が言う。


 私、将来美人なことはゲームで見ているため確定事項、そんなデンファレが宝石をこれ見よがしに付けていたのも記憶にある。

そうはなりたくない。


「まだまだ先の話ね。今はここの増築と加工場も含めての領民の引き入れを考えないとね。」

「ですがあたしたちだけでも食料がぎりぎり、調達の人数を増やすとお嬢様に負担が…」

「そういうことは気にしなくていいのよ。ここはそういう領地、農作物で利益を出すのではなくて、鉱物資源で稼いでいるから手が回らないのよ。女性だけで農作業をさせて申し訳ないけれどもう少し我慢してね。」


私がそういうと皆困ったように笑う。

それもそうだ。

三歳児だもん。

困るよな。


 手紙の返事はいくつか来ている。

特におじい様からは早く、求職者も踏まえ、後二~三日での到着予定。

さらに、王都では殿下に手紙を出した。

あまり頼りたくはないが背に腹は代えられないし、王都の治安問題も解決する。

これに関してはお父様から国王陛下の許可ももらったということで憲兵に寄る一斉摘発が行われるという。

あまりに抵抗する者は送らず、話を聞く意識の有る者から順次来るという。


 なので、鉱山夫の住まいが平屋なのを三階建てへ増築する必要がある。

今でもまだまだ余裕があるが手狭な部屋にぎゅうぎゅうに暮らしてほしくないため数日かけて木々を集めた。

ひっこ抜いた場所にはコランダムが植樹と木属性魔法、さらに精霊の力で自然環境を悪化させないように配慮した。

森が鬱蒼としていたので間引きの効果もあり、キノコや山菜が良く取れるようになったと子供たちに言われる分、人の手があるからか野生動物の姿が減ったという。

鹿や兎の肉は肉体労働には大事な栄養だ。

森の調査ももっと進めなくてはならない。


 「それは僕がやるよ。」


いろいろメモ開いて考えているとバンダの声がすぐ横から聞こえてくる。

これぐらいでは驚かない。

もう慣れた。


「何をやるの?」

「森の調査」

「じゃあ、お願い。」


寅を召喚してバンダを背に乗せて出ていくのを見送る。


 「珍しいですね。バンダ様が自分から行動される何て」

「そうね。」


ローマンも不思議そうだ。


 まあ、いい。

任せてほしいというのなら報告をまとう。

最近魔獣討伐クエストも受けていないため楽しみがないのかもしれない。

勉強も嫌々だし


 ほかの領からは捕まえる手立てがないからや、そんなことに時間を使うだけ無駄だという返事だった。

そんな奴には夜会でファレノプシスブランドの宝石を付ける自分の妻や姫夫達を見て唖然させてやる。


 ライト氏の宝石商へ原石をおろし、加工し、商品ができたという知らせを受けたのは昨夜。

今日の夕方に見に行くことになってはいるがここ二十年ほどの流行りはごてごて、じゃらじゃらしたデザインでいかにも貴族が好きそうなカラフルな物が多い。

でも、私の感覚では目が痛いと思っているし、夫人は自慢げだが隣に立つ夫は少し引いているようにも思える。

年々派手になっていくのは仕方なく、競い合いたいのだろうがそろそろ、大人しいデザインでもいいのではないかとライト氏に相談。

売れないかもしれないといわれたが付加価値である精霊の祝福のある宝石だ。

シンプルに付けてこそ、本来の美しさが出てくるという説明をさせる予定を組んでいる。

その第一号が王妃様だ。

ライト氏は王室御用達の宝石商の一つだ。

売り込むにしても殿下に原石を渡していることで話が行っているかもしれないし、お母様とも交流のあるお方。

むげにはされないだろう。


 「デンファレ様、そろそろご準備を」

「そうね。デザイン画をもう少し増やしたかったのだけど」


落書きの途中の考え事ですっかり手が止まっていた。

私の机には無数のデザイン画という落書きがある。

それをまとめてポケットにしまう。


 少しだけ着飾り、ローマンと宝石商へ向かう。




 噴水広場へつくと王家のお達しというだけで浮浪者の摘発は順調のようだ。

今まで本腰を入れてこなかった理由を聞きたいぐらいサクサク進んでいるように見える。


「どれだけ集まるかしら? 増築をもっとしないといけなくなるぐらいが良いわ。」

「教育も必要です。教える側になれる人材が欲しいですね。」


街の様子を見ながら宝石商へ入る。


 「ごきげんよう。」

「ごきげんようデンファレお嬢様。ちょうど今、王家への訪問日が決まったところなのです。」

「あら、いつになったの?」


ローマンに椅子を引いてもらい座る。


「はい、来週の頭にぜひ来てほしいと王妃様も心待ちのご様子です。」


来週の頭、もう一週間の中頃のためすぐだ。

良く時間が取れたものだと思ってしまう。







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