第三話 冒険者ギルド
引き続き読んできただき感謝です!!
テンポよく話を進めていくってのはなかなか難しいですね。
まだまだつたない文章ですが、寛大な心で読んでいただければ幸いです!
そのうちうまくなります!たぶん!
門を通り、アヴァンツの中に入ると、私は衝撃を受けた。
「うわあ、凄い・・・・・」
目の前に広がる風景は、見覚えのある、それこそテンプレ的な町並みのそれだったが、そこを多くの人々が歩き、あるいは走り、様々な表情で、あちらこちらでは色んな会話の声が聞こえてくる。
まるで、私の知っているゲームの町に、魂が吹き込まれたような、そんな景色だった。
「町が生きてるみたい」
すっかり気分を良くした私は、田舎者丸出しの如く、キョロキョロと辺りを見回しながら、最初の目的として、冒険者ギルドへと向かうことにした。
本当は先に宿屋の確保をしたかったけど、身分証がないと色々詮索されそうな気がしたので、その前に冒険者登録をして、ギルドカードを作る事にした。
まあ、好奇心に負けたとも言うけどね。
「おおお!」
冒険者ギルドもやはり新鮮だった。
ゲームで画面越しに見るのと実際に目で見て触れるのとでは雲泥の差だ。
ここのギルドには受付カウンターが5つ並んであり、3つは冒険者用の窓口で、1つは依頼受付用の窓口。その隣にはすこし大きめの窓口があり、そこは素材買取用の窓口のようだ。
そしてそれらを横切って奥へ進むと、広い飲食スペースがあった。
ギルド内に併設されている酒場だ。
そろそろ日も落ちそうな時間帯なだけあって、次第に席は埋まり始めているようだった。
そんな、初めての冒険者ギルドに感動を覚えつつも、よく見ていると、ギルド内の様子が若干ピリピリしている事に気づく。
もちろん、この世界での冒険者ギルドはここが初めてなので、どこもこのくらいの雰囲気が普通なのかも知れないが、ギルドの職員らしき人たちは慌ただしくカウンター内を動き回り、ギルド内の冒険者らしき者たちもどこかソワソワとしているような気がした。
なんだろ?何かあったのかな?
ちょっと気になるかも。
とりあえず冒険者登録だけのつもりだったけど、登録ついでにギルドの人にそれとなく聞いてみようかな?
まあ、兎にも角にも、まずは冒険者登録だ。
あのカウンターの列に並べばいいのかな。
そんな事を考えながら、キョロキョロと周りを見回しながら受付カウンターへ向かおうとすると、突然、後ろの方から私を呼び止める声が聞こえて来た。
「ちょっとそこのお嬢ちゃん、そこは冒険者用の受付カウンターよ?依頼受付はあっち」
振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。
深い青色の瞳が特徴的で、長めの綺麗な金髪を頭の後ろで一つにまとめた、十代中盤から後半くらいの、ちょっと勝気っぽい雰囲気のある、活発系美人といった感じの女性だ。
そんな彼女が、私の方を向きながら、ギルドの依頼受付カウンターの方を指差して立っていた。
どうやら私の容姿から、冒険者ではなく依頼者だと思われたらしい。
まあ、ちっこい女の子だしね。
「いや、えーっと・・・」
「あれ?革の胸当てと腰に片手剣って事は、あなた、もしかして初心者冒険者さんかしら?」
私が返答に戸惑っていると、声をかけて来たその女性は私の装備を見て、さらにそう言葉をかけて来た。
「厳密にはまだ一般人ですけど。あなたは?」
「ああ、ごめんなさい。私はマリ。この町の冒険者よ」
「私はナナ。冒険者には今からなる予定なんだけど、受付はこの冒険者用の列でいいんでしょ?」
「ナナちゃんね。ナナちゃんはこれから冒険者になる予定なのね。ならこの窓口じゃないわ。あっちよ」
金髪ポニーテール冒険者のマリが指差すのは、先ほどと同じ依頼受付窓口。
どうやら冒険者登録は依頼受付窓口で行うらしい。
「そうなんだ。ありがとう。危なくすごい時間の無駄をするところだったよ」
「いえいえ、どういたしまして」
そう言ってニコリと微笑むマリ。
なんかめっちゃいい人っぽい。
せっかく親切にしてくれたし、その親切に甘えて彼女から色々と話を聞くのもいいかもしれない。
「そういえば、なんだか随分と騒がしいような気がするんだけど、何かあったの?」
「あー。なんか、町の近くでヒポガントが目撃されたらしいのよ。実際に被害者も出ていて、そのせいで別の魔物の討伐依頼を受けた冒険者が、その討伐に向かえなくて困っているらしいわ」
「ヒポガント・・・・・」
「そう。かなりヤバイ魔物よ。本来はこんな所に出没するような魔物じゃないはずなんだけどね」
それって、私がさっき倒したやつだよね。
もう倒しちゃったって教えてあげた方がいいのかな?
証拠ならストレージに入ってるし。
「でも、この町の冒険者のレベルじゃ討伐なんてとても無理。
それで、ギルドがこの町の領主様に派兵の依頼をするか、もしくは他の町から高ランク冒険者を呼ぶかで揉めてるらしいわ」
「へ、へぇ」
おっと、危ない。
そんな話を聞いたら気軽に「倒しましたよ」なんて言えないじゃない。
というか、この世界の冒険者はそんなに強くないのかな?それともこの町の冒険者が弱いとか?
ヒポガントはゲーム時代と比べて特別弱くも強くもなってなかったと思うんだけど。
「そんなに強いんだ?」
「まあ、力は強いけど動きはそんなに早くないから、数で押せば何とかならないわけでもないけどね」
そのかわり、被害もそれなりって事だね。
話を聞いた感じじゃ、ヒポガントを相手にした場合の被害って、死人が出るって感じだよね。
そりゃ誰も討伐に行きたがらないよね。
「私のいるパーティーにもその討伐依頼が打診されてたけど、リーダーが速攻で断ってたわ。まあ、私としてはちょっと戦ってみたかったんだけどね」
「あはは」
イタズラっ子みたいにそう言うマリに、おもわず笑いをこぼす私。
そんな微笑ましく会話する少女2人の元に、男が2人近寄って来た。
「おい、マリ。何を物騒な話をしてるんだ?」
「また面倒ごとを起こすのは勘弁だぜ?」
声をかけて来たのは、見た感じどちらもマリと同じ年齢くらいの10代半ばから後半くらいの、ベテラン冒険者っぽい風貌の男2人。
最初に話しかけて来た方の男は、髪は茶髪で一見チャラそうにも見えるが、どこか落ち着いた雰囲気で、下積みを積んだ売れない男性アイドルユニットにいそうな顔立ちをしている。
装備品は機動性重視の軽装で、腰の左右にシミターのような片手剣を一本づつ装備しているところから見て、ジョブは双剣使いあたりだろう。
もう1人の方は、明るめの赤髪が特徴的な、細マッチョ系の雰囲気イケメン。
さっきの男とは正反対に、割としっかりとした装備品を装備していて、背中には大きな盾を背負っている。
こちらのジョブは盾職の守護戦士で間違いない。
顔立ちは可もなく不可もなくと言った感じだが、どこか愛嬌があり、漫画やアニメで言うところの主人公の親友キャラによくいそうな感じだ。
「あら、クロイスとファイじゃない。こんなとこで何してんのよ。ナンパなら他を当たってもらえるかしら」
「しねーよ!ってかした事ねーよ!」
「あらそう」
どうやらマリとこの男性冒険者の2人は知り合いのようだ。
食い気味に反論して来たのは茶髪のチャラ男系双剣使い。
見た目に反してそこまでチャラくはないらしい。
その後もマリと2人の男性冒険者とで、レベルの低い、下らない言い合いが繰り広げられていたが、普通にマリの圧勝だった。
男ども、もっと頑張れ。
しかし、この2人の男性冒険者は、マリからの半分からかうような、わりと適当な扱いを受けても特に不快な表情をする事もなく、おそらくこれがいつものやり取りの内なんだろうと容易に想像ができた。
「あ、そうだわ。せっかくだからナナちゃんに2人を紹介しておくわね」
「あ、はい」
「そっちの茶色い方がクロイスで、隣の赤いのがファイよ」
さすがマリさん。説明が雑。
「なるほど。私はナナです。えーっと、髪、黒いです」
「いやいや!マリの紹介の仕方に合わせないでいいから!」
「色とかどーでもいいし!何紹介だよ!」
取り敢えずマリさんと同じように雑に自己紹介してみたけど、どうやら2人には不評だったみたい。
茶色いのと赤いのからクレームが殺到したので、渋々マリさんが説明をし直す事に。
「はいはい、わかったわよ。もう、ちゃんとやればいいんでしょ。
それじゃ、茶色いチャラ男の方がクロイスで、ウチのパーティーのリーダー。そして、赤の脳筋の方がファイで、ウチのパーティーのサブリーダーよ。以上」
「なるほど」
同じパーティーメンバーだったんだね。
通りでお互いに気安い感じだと思ったよ。
「おいコラ!もっとちゃんとやれ!誰がチャラ男だ!」
「てか、『なるほど』じゃねーから!」
またしても物言いを付ける2人。
でもいいなあ、このパーティー。凄く仲がいいのがよくわかる。
◆
「で、結局その子は誰なんだ?確か、ナナちゃんだっけ」
不毛なやり取りの応酬を一通りやり終え、茶髪チャラ男冒険者のクロイスが、マリさんに私の事を聞いて来た。
やっとかよ。
「なんか困ってるみたいだったから、ちょっと声をかけただけよ」
「ほう、何かあったのか?」
「別に。冒険者登録の受付場所がわからなかったみたいだから教えてあげただけよ」
「冒険者登録?」
「この嬢ちゃんがか?」
マリの回答に驚くクロイスとファイ。
やっぱりそんなリアクションになるのね。
見た目は十代半ばの美少女だし、普通に考えれば明らかに場違いだよね。
「確かに、よく見ると駆け出し冒険者っぽい装備をしているが・・・」
「なんで嬢ちゃんが冒険者に!?」
私が冒険者志望だと知ったクロイスとファイは、私に色々と質問をしてくるので、適当にそれっぽく答えていると、やがて二人はコソコソと相談をし始めた。
「・・・ファイ、どうするよ。さすがに放って置けないだろ」
「ああ。親もいないで嬢ちゃんはあの歳まで一人で頑張って来たんだろ?あの不思議な貫禄も納得だぜ」
「しかもあの容姿だ、絶対変な奴に目を付けられて、酷い目に遭わされてしまうぞ」
「わざわざこんな町まで来て冒険者になるって事は、嬢ちゃんが元いた町ではどーせ仕事で酷い目にあってたんだろ。だからそこから逃げて来て、しがらみのない冒険者になろうって事だろ?」
「苦労してるよな」
「ああ、あんな小さいのにな。健気すぎるぜ」
もしもーし。
聞こえてますよー。
てか、あんたらどんだけ想像力逞しいのよ。
確かに質問の途中で面倒臭くなって、親はいないって設定にして話を進めたけど、なんでそれだけでそこまでの妄想できるの?
もちろん現実世界では両親は健在だよ。
でも、そういえばしばらく実家に帰ってないな。
元気にしてるかなあ。
「なあ、ナナ」
「な、なに?」
「安心しろ、俺たちが面倒見てやる!」
「そうだ、嬢ちゃんをもう酷い目にはあわせたりしない!」
「いえ、結構です」
なんか勝手に熱くなってる。
別に悪い人たちじゃないんだろうけど、なんとなくこれ以上関わっちゃいけない気がする。
「ちょっとあんたら!まさか、ナナちゃんに手を出すつもりじゃ無いでしょうね」
「「出すか!」」
どうやらマリさんはクロイスとファイの妄想会議を聞いていなかったらしい。
うん。まあ、普通はあんな妄想話を聞く必要は無いよね。
「いいかマリ、よく聞け!ナナはこんな小さいのに親を亡くして、子供だからろくな仕事も見つからなくて、やっと見つけた仕事でも酷い目に遭わされて、それで着の身着のまま一人でこの町にやってきて、藁をも掴むおもいで冒険者になろうとしてるんだ!」
「そうだ!俺たちが嬢ちゃんを守ってやらなきゃどうすんだよ!」
いつのまにか色んな設定がさらに盛り盛り増し増しになっている。仕事で酷い目に遭わされたとか、どこから出て来たのよ。
「え!そうなの?!」
目を丸くして驚いたように私を見るマリ。
ちょっとマリさん、そんな与太話、なんであっさり信じちゃってるのかな?
あなた、そんなチョロいキャラじゃ無かったですよね?
「いいんだ、俺たちに気を使わなくても。苦労したんだろ」
「そりゃそうだろ、でなきゃこんな幼い嬢ちゃんがわざわざ冒険者になろうなんて思うかよ」
「そうなの?こんな可愛いのに健気なのね」
「・・・」
着々と事実が改変されていく。
どうすんのよこれ。
誰か助けて!
「やめんか、お前ら!」
「な!?ギルマス!?」
そんな私の心の叫びが届いたのか、突然私の後ろから迫力のある声が飛んで来た。
後ろを振り返ると、筋骨隆々な30~40代くらいのギルマスと呼ばれる男が立っていた。
この人がこの冒険者ギルドのギルドマスターのようだ。
ちょっと、序盤から登場人物多すぎない?
「全くお前らはいつもいつも騒々しい奴らだな」
「ギルマス!違うんだよ!俺たちはただこの健気で苦労人のナナをだな」
「うっさい!だいたい見てたからわかっとるわ!勝手に盛り上がって、有る事無い事でっちあげて、こんな小さな子供を困らせるんじゃない!」
「いやいや、別に俺たちは!ただ嬢ちゃんの為に、」
「いいから黙ってろ!ランク下げるぞゴルァ!」
「んな横暴な!」
さすがギルマス。凄い迫力だね。一刀両断だ。
でも、ランクを下げるのはどうかと思うよ。
「で、ナナ、だったか?お前は冒険者登録に来たんだろ?こいつらは俺が説教しとくから、お前は向こうでさっさと登録を済ませてくるといい」
「う、うん。ありがとう」
私はギルマスにお礼を言ってその場を離れる。
助かった。
異世界転生ものの小説なんかでは、最初のギルドで絡まれるみたいな話はよくあるけど、こういう絡まれ方じゃないと思うんだよね。
まあ、取り敢えず面倒ごとからは解放されたし、さっさと冒険者登録を済ませちゃおう。
まさかどうでもいいやり取りだけで一話を消費するとは思わなかった。(汗)
ギルドで一悶着ってお約束の流れをやりたかっただけなのに、どうしてこうなった。
でもとりあえずギルマスは登場できました。頑張った!ほめて!
次の話では多少物語も動くと思うので(たぶん)、今後もお付き合いいただければ嬉しいです!