第十二話 プレイヤースキル
ご覧いただきありがとうございます!!
パーティーバトルってどう書けばいいかわからなくて難しいですね。
でも頑張りましたよー。
楽しく読んでいただければ幸いです!
私はヒポガントとの戦闘前に、パーティーメンバーに各種強化魔法をかけていた。
双剣使いのクロイス、斧使いの重戦士ロイド、そして盗賊マリには、力と俊敏の上昇を。
盾役の守護戦士ファイには力と耐久を、魔法術師のミランダには魔力と炎属性の能力値を3割ほどブーストさせた。
その気になれば2倍くらいまでブーストは出来たけど、パーティーの実力も見たかったので3割くらいで止める事にした。
まあ、普通に3割でもかなりの上昇具合だけど、ヒポガントとの実力差がわからないだけに、万が一の事を考えてそれ以下には出来なかった。
結局、それでも開幕の総攻撃でヒポガントのHPを2割程度しか減らせなかったところを見ると、やり過ぎだったという事はなさそうだ。
「色々聞きたい事はあるけど、まずはコイツを倒すぞ!」
「ええ!わかってるわ!」
「タゲは俺に任せろ!ロイドとミランダは全力で行け!」
「わかりましたっ!」
「了解!」
気を取り直し、すぐさま追撃にかかる一同。
ここからは各自、完全にアドリブの攻撃となるが、さすがというべきか、完璧に息の合った連携でヒポガントを圧倒していた。
へえ、思った以上に連携が取れてるね。
私がゲーム時代にやってたのよりも上かもしれない。
それでも、思ったようにヒポガントのHPを削る事は出来ず、長期戦の様相を呈して来た。
そんなパーティーの息の合った連携を乱さないよう、私は小刻みにヒールを放つ。
MP効率は悪いけど、下手にタゲを取らないようにするためには仕方がない。
そんな時、ヒポガントの視線が一瞬、私の方に向けられた気がした。
「え?」
いくらこのパーティーの火力が足りないにしても、この程度の回復量と回復頻度では私にタゲが来るはずがない。
私の目から見ても、ファイのヘイトコントロールは完璧に近かったはず。
しかし、その後ヒポガントが私に向かってくる事はなく、ただの気のせいかと思ったその瞬間、ヒポガントはその場で大音量の雄叫びをあげた。
グオオオオオオッ!!!!
「な、なんだ!?」
「馬鹿!止まるな!」
突然の雄叫びに一瞬動きを止めたロイド。
ヒポガントはその隙を見逃さず、ロイド目掛けて勢いよく突進してくるが、間一髪でファイが盾で受け止める。
「ぐうううっ!!」
「すまない!」
「いい!攻撃の手を休めるんじゃねぇ!」
さすがは古株の主要メンバーの一人だけあって、冷静で周りがよく見えてるし、判断力もある。
おそらくこの世界の死はゲームの時よりも重い分、プレイヤースキルは高いのかもしれない。
しかし、とっさにフォローに入ったためか、ファイのHPが大きく削られ、残り2割程度になっている。
ここで盾役のファイが落ちれば、パーティーはあっという間に崩壊し、全滅してしまう。
私はヘイト覚悟で強めのヒールを放つ。
「ヒール!」
「挑発!」
ファイは自分にヒールが来たと理解し、間髪入れずにヒポガントに挑発を発動させた。
うひゃー、凄いね。
ヒールが届くドンピシャのタイミングで挑発だよ。
しかも、私にタゲが向いてもいいように、私とヒポガントの直線上に位置取ってるし。
「この世界の冒険者もなかなかやるじゃない・・・って、えっ!?!?」
私はとっさに後ろに飛び退く。
「ナナさん!?」
私が飛び退いた先にいたのは驚いた表情のミランダ。
「ミランダ、私から離れちゃダメよ」
「え?は、はい。でも、アレは・・・」
そう言って、ついさっきまで私が立っていた場所を見つめるミランダ。
「私がバカだったよ。このパターンを想定してなかった。私は知ってたはずなのに。ヒポガントは一体だけじゃないって」
そこには、二体目のヒポガントがいた。
◆
「二体目!?!?無理だ!!」
「ナナ!ミランダ!逃げろ!!」
新たなヒポガントの出現に気がついたクロイスとファイが、戦闘を続けながら私達に撤退指示を出す。
「ミランダ、ナナちゃん、ここは私達が抑えるから早く逃げて!」
直後、私の前に突如マリが現れる。
「マリさん、いつのまに!?」
「いいから早く!」
なにこの判断の速さ。
もしかして、この人達は私よりも強い?
少なくとも、冒険者としては完全に私より上だ。
凄いよ、みんな。
私、ちょっと良い気になってたかも。
これはもう、実力を隠すとか言ってられないね。
私はメニュー画面を開き、ジョブを回復術士から魔法剣士に変更する。
「マリさん、ミランダちゃんをお願い。ちょっと私行ってくるよ」
「は?な、なに言ってるのナナちゃ・・・え?」
私はストレージから武具屋のおじいさんから借り受けた業物の剣を取り出し、魔力を込める。
「魔法剣・ファイア」
剣は次第に光を帯び、やがて炎で覆われていく。
「魔法剣?!?!」
「ナナさん?!」
私は驚く2人をそのままに、マリの横を駆け抜け、一気に2体目のヒポガントの前まで迫ると、ファイアの魔法を付与した業物の剣【蛮勇の剣】を真横に薙ぐ。
真っ赤に熱せられたその剣は、まるでバターを切るかのようにヒポガントの体を裂き、直後、剣を纏っていた炎は消え、ヒポガントがその炎に包み込まれた。
そして私はそのまま剣を振り上げ、ヒポガントの首目掛けて一気に振り下ろす。
グガガ!!!
ヒポガントは短く悲鳴をあげると、首から先を地面に落とし、体もその場で崩れ落ちた。
「マリさん、あとのフォローお願い!」
「え!?ちょっ・・・」
私は今倒したヒポガントの上を跳躍で飛び越え、クロイス達の元へと全力で走る。
元々、前衛と後衛はそれ程離れていたわけでは無いので、あっという間に最前線へと躍り出る。
「みんな!そこどいて!!」
私が近くまでやって来たのに気づいたクロイスは、私の右手に片手剣が握られているのを一目見た後、攻撃を続けていた手を止めて後ろに大きく飛び退いた。
「ロイド!退け!」
クロイスの声に、ロイドも攻撃を止めて後ろに飛び退く。
そして、その一連のやり取りを見ていたファイは、構えていた大楯をヒポガントの顔に強く叩きつけ、その反動で後ろに飛んで距離を取る。
「行け!!ナナ!!」
クロイスの叫び声と同時に私は足を強く踏み込み、ヒポガント目掛けて大きく跳躍した。
その刹那、前方の上空から激しい光が飛んできた。
「サンダーボルト!!」
それは、ミランダの放った稲妻の魔法だった。
それは見事にヒポガントの頭上へと直撃し、少しの間、その大きな体の動きが止まった。
そして、そんなヒポガントの上空へと跳躍していた私は、右手に握った業物の剣を、ギュッと強く握りしめた。
「魔法剣・フレイムバースト!!」
剣が光り、瞬く間にその表面が業火で覆われる。
私はその剣を両手で大きく振り上げ、上空から勢いよく斬りつけた。
ヒポガントの身体には大きな深い傷が出来上がり、それを確認した私は、地面を蹴って、その場から大きく距離を取る。
その瞬間、私の斬り付けた傷口から無数の爆発が起こり、ヒポガントはその場に崩れ落ちた。
グ、グガガ・・・!!ギャギャ!!
倒れたヒポガントは憎々しい声を出しながら起き上がろうとするが、すぐにクロイスとマリが飛び掛かり、そのままヒポガントの息の根を止めてしまった。
凄い。
ほとんどスタンドプレーの私の動きに、全員が見事に合わせてきた。
やっぱりこのパーティー、強い。
やっとナナちゃんが活躍しましたね!
書くのは難しかったけど楽しかった!
大体ばれちゃったので今後は自重なしでやり放題ですね!
今後ともお付き合いいただければ嬉しいです!