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深夜の出来事

「この椅子に掛けてください」

プロテクターに突き刺さったナイフを全て取った後、うつ伏せに寝かした。

「救急箱は何処にありますか?」

敬之は棚を指で差す。

「上から二番目の所に一式ある」

美優はガーゼなどを大量に取り出す。

一部を切って敬之の上半身を裸にした。

「敬之さん力を抜いてください。今から3秒後にナイフを抜きます」

「せーの」

「1」


3秒立たずにナイフが抜かれる。

傷口から大量の血が流れてくるが、美優は手慣れた手つきで血を処理していく。

血が一定量出た後に傷の周りを含めて消毒する。

「わたし、傷口に効く軟膏を持ってるんで傷に塗りますね」

敬之は消毒と軟膏の痛みに絶叫を上げる。

最後に、絆創膏とガーゼで傷口を押さえて応急処置は終わった。

着替えや道具の片付けが終わる頃には空を暗闇で満たしていた。

冷蔵庫を無断で開けて食品類を物色する。

「食材が余りないので、簡単なモノを作りますね」

「いや、平気だ」

「大したことない」

敬之は美優を帰らせようと布団から起き上がるが、痛みによって倒れる。

「そんなんじゃ、ご飯も真面に作れません」

「大したことあります」

それでも抵抗しようとする敬之を見て、美優は傷口を軽く叩いた。

絶叫を上げる敬之だが、彼女は止めようとしない。

「触るなー!」


痛みに暴れる敬之を尻目に、美優は謝れと迫ってくる。

「言ってください」

「はい、どうぞ」

「・・・」

「すみません。ここに居てください」

美優は満足そうに微笑む。

「仕方ないですね。敬之さんのお願いなので居てあげます」

美優はパンと敬之のナイフが刺さっていた腹部を叩いた。

それによって、敬之の悲鳴が家中に響いたことは言うまでもない。



湯気の満ちた洗面所には、火照った体をタオルで拭いている少女がいた。

彼女の髪から水滴が垂れると、あまり大きくない胸元の膨らみをなぞりながら

下へと落ちていく。


「すみません。私だけシャワー使わせてもらって」

美優はドアの向こうで寝転んでいるはずの敬之に話しかけた。

「怪我だからな」

「お前に非は無い」

「それでも、怪我をさせたことは謝らせてください」

「私の決意のために」

脱衣所から出て来た美優の姿は、ジャジにYシャツというカオスな恰好だ。

汚れた服の洗濯が終わるまで代わりを貸すことになった敬之だが、家にYシャツしか着れるモノが無かったためだ。


「少し苦しいですね」

ボタンを外しながら彼女は言った。

「あ、これ位で平気かな」

敬之は第二ボタンで手が止まったことに安堵する。

後1時間もすれば、衣服が乾くので彼女を家に帰すことが出来る。


「今日の奴らは何だったんだ」

「何がですか?」

「いや、ナイフが飛んで来るのが見えたんだが」

「地面と平行に飛んでいるように見えた」

「私、分かっちゃいました」

美優は得意げな顔をしている。


「何だよ」

「ふっふーん」

「敬之さん」

「それは、能力です」

言うのを勿体ぶった上、自慢げに言われたことに敬之はムカついた。

「分かってるわ!」

「どんな能力なのかを考えているんだ」

美優はキョトンとした。

「それは、念力じゃないんですか?」

敬之は顔に皺を寄せて尋ねる。

「今、何ていった」

「顔、怖いです」

「モノを飛ばせるなら念力じゃないんですか」

敬之は顎に手を当てて考える。


〈念力なんてモノが在るのか?〉

〈イヤ、テレパシーだって超能力だ〉


〈テレパシーは意思と意思の作用〉

〈それに比べて、念力は意思から物理現象に作用する〉

〈だが、今は脳波で機械を動かせる〉

〈なら、変哲もない物体を動かせる可能性はある〉


〈それに、物理の法則を無視している動きを見た〉

〈それは事実だ〉

〈事実は何よりも正しいはず〉


黙って考えていると、美優が痺れを切らして敬之に話しかける。

「どうですか。何かわかりましたか」

「ああ、俺も念力の可能性が高いと思う」

「ただ、敵対するには相手の能力が不明過ぎる」

唐突に、ピーという音が鳴って敬之たちに知らせた。

それは乾燥が終わった音である。


「まあ、こんな所だろう」

「夜が遅いんだから早く帰れ」

美優は乾燥機からスカートとインナーを持ってくる。

「私を心配してくれてるんですか」

〈さっさと帰れって事だよ〉


「初めて敬之さんのデレを見ました」

〈違げーよ!〉


敬之は口に出そうになったが傷の手当などの恩があるため、

奥歯を噛みしめながら黙ったままを貫いた。

その一方で美優は「あれもデレに入れてもいいんじゃ」と、

意味の分からない独り言を発しながら何かを数えている。

「おい、帰った方が」

敬之が言い終わる前に美優は話を遮りながら言う。

「大丈夫です」

「私、ここに泊まるんで」

「・ ・ ・」


敬之は何を言っているのか分からずに再度、聞いてしまう。

「何するって?」

「泊まります」

「誰が?」

「私が」

「何処に?」

「敬之さん家に」

敬之は話を飲み込めずにいる。

しかし、美優は畳みかけた。


「敬之さん怪我中だし」

「今、暗くて危ないし」

「仲間が近くに居た方が安全な状況だし」

敬之は頭に何も入ってこないが、自棄で了承した。



「敬之さん。電気消しますね」

「ああ」

「というか、その服のままで寝るのか?」

「着慣れると結構いいなと思いまして」

「そうかい」

「あ、豆電球の方がいいですか」

「いいから、消してくれ」

布団が小さな溝を挟んで横に二枚並んでいる


「おやすみなさい」

敬之はどうにか寝ようと励むが、男である敬之が

この状況下でゆっくりと寝れるはずもない。

暗い襖を眺めていると隣から布団と服の擦れる音が幾度と聞こえる。

幾らかの時間が経ったのだろうか。

実際には、数分しか経っていないのかもしれない。

幾つかの音の中に人の声が紛れているのに敬之は気づく。

「敬之さん。まだ、起きていますか?」

背中に視線を感じて答えずにはいられなかった。


「ああ、起きてるよ」

「色々あって、聞き忘れてたんですけど」

「どうして、美優って言ってくれたんですか」

「何を言ってるんだ?」

敬之は言葉の意味が分からずに、視線の方に体を向ける。

そこには、布団で口元まで隠している美優がいた。


「その、最初は笹木って呼んでたのに」

「途中から美優って呼んでくれるようになって」

美優は更に顔を布団で隠して、目元から上しか見えていない。

敬之は何故かドギマギしてしまう。


「それは、咄嗟だったから」

「それに下の名前で呼べと言ったのは、そっちだろうが」

「ありがとうございます」

美優は少しだけ顔を出して笑って見せる。

「そんな事に礼なんて言わんでいい」

「用が済んだんなら寝るぞ」

敬之は平常心を保とうと背中を向けた。

すると、暖かい布団の中に少し冷たい感覚を背後から感じる。

それと共に、服が引っ張られている感じがした。

敬之は服を引っ張る本人に何なのか聞こうと思った。

しかし、理由を聞くことも手を振りほどく気にも全くならない。

その状態のまま、意識は心の底へと落ちて行った。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

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