囮作戦
「君はコレを持って大柄の男の前に出て行けば良い」
そう言うと、手に握りしめていた拳銃を手渡した。
女は少し躊躇しながらも拳銃を受け取り、その重さを確かめている。
「あいつは、俺らが二階に上がる時には薬を飲んでいた。」
「それじゃあ、彼方の作戦も見破られているんじゃ!」
女は少し焦った表情を見せるが、
敬之が動じていないことに気付くと直ぐに冷静さを取り戻した。
〈こいつ。見た目はポワポワした感じで頭悪そうだけど〉
〈意外と冷静さを持ってるな〉
「それについては策がある」
「君はある地点まで何も悟られずに連れてきてくれ」
「でも如何すれば?」
「正確には、目的地まで逃げてくれれば良い」
「そしたら、俺が後ろから取り押さえる」
その後は男についての情報を聞き、会議は3分も経たずに終わった。
「あそこにある梯子を使えば下に降りれる」
「誘導が完了したら作戦開始の合図として発砲してくれ。」
女は梯子で1階まで降りて行き、作戦のポイントまで素早く移動する。
「急いでポイント地点まで行かないと」
部屋を次々に過ぎていく。
その中に一つだけ暗い影が差している部屋があることに気付いた。
後ろを恐る恐る振り向くと、目の前がいきなり歪んで見えた。
女は壁へと激突し、咳き込みながら体を九の字に体を曲げる。
男は女の襟首を掴みながら窓から外へと投げ飛ばした。
女は受け身を取って勢いを殺すと、立ち上がって目的地の場所へと走り出した。
「おいおい、逃げたって無駄だぜ」
男はゆっくりと女の逃げて行った曲がり角へと歩いて行く。
角を曲がると銃口が男の方へと向けられていた。
「銃なんて持ってたのかよ」
「でもよ。お前は人を殺せるのか?」
そして、男はゆっくりと歩き出す。
余裕な態度をとりながら周囲への警戒は怠らない。
回らを見ながら考えをまとめていく。
〈後ろに、誰かが隠れて挟み撃ちなら、あの扉付近に居るはずだ〉
〈銃声と共に振り返り際、ナイフで切り付けてやる〉
扉付近に差し掛かり、更に女の方へと近づく。
「狙いが定まらないだろうから近づいてやったぜ!」
「さっさと撃ってみろよ」
男は自分の胸元に親指を立てて挑発する。
その瞬間、鉄の筒から火が噴いた。
反動によって銃口が持ち上がり明後日の所に弾は流れる。
〔今がチャンスだ〕
男の声が頭に流れてくるのと同時に叫び声をあげる。
「全部、聞こえてるんだよ!」
そして、男は後ろにいる誰かに向かって切りつけた。
しかし、刃は何の感触も無く。
そこには男の姿どころか誰もいない。
振り返ると女の方も状況が掴めていない様だ。
すると突然、頭を勢いよく殴られたような衝撃が走った。
頭から全身にかけて痛みが広がっていく。
目の前が真っ赤な世界に変わっていくのを呆然と見ているしかない。
「何が起きた」
意識が混沌として体に力が入らない。
頭部に腕が触れると液体が触れるのが分かった。
そして、倒れながら薄れていく意識の中で石粒の雨を見た。
突然、石つぶてが降ってきたことに驚く。
見上げると敬之の姿が半壊している断崖の屋根にあった。
「そんなところで、何してるんですかー!」
女は怒りながら、降りてくるように腕を振り回す。
「後ろから取り押さえるっていう作戦は何だったんですか!」
敬之は今から降りると合図している。
「まだ、怒ってるの?」
女は地団駄を踏んで叫ぶ。
「当たり前ですよ。私、囮なのに何も聞いてないんですよ」
「話したらテレパシーで悟られるだろ」
女はキョトンして尋ねる。
「まさか、それが策って奴だったんですか?」
敬之は頷きながら説明を続ける。
「それで、あの屋上まで大量の石をクライミングしながら運んで落としたってこと」
「でも、その策は何でバレなかったんですか?」
「テレパシーには有効範囲があって、縦方向は極端にそれが短かったんだ」
「二階に上げれば、ほとんど届かないほどに」
「だから、完全に届くことのない三階に登った」
女は頷きながら説明を理解しようとしている。
敬之は一瞥し、それを無視して帰路へ足を進めると後ろから声がした。
「私は笹木 美優と言います」
「お互い生きて会えたら、また助けて下さい」
敬之は後ろを振り返らずに、口を開いた。
「こんな殺し合い、さっさと抜け出した方が良い」
夕焼けの中で美優は少し苦笑いしながら敬之を見送った。
最後まで読んでくれて、ありがとうございます。
ななんと!
既に10章だというのにコメントが来ません。(´;ω;`)
誰かコメントや感想をください。
僕は「なろう」でイジメに遭っている。
「なろう」で一番可哀想な奴なんだ。( ;∀;)ハ~




