決心
銃を頭に近づけるとき、テレパシーが使えるようになっていたことに気付いた。
女は承諾するが疑り半分、信用半分という感じだ。
男の考えも聞こえるため、眼を離すタイミングは掴みやすい。
二階へ上がると女の声は相変わらず変わらないが、
男の声が聞こえる頻度が格段に減少した。
〈どういうことだ?〉
〈基本的にテレパシーの距離は決まっている〉
敬之は女と会話しながら脳裏に、昨日の事を今の事を鮮明に思い出す。
そして、大男を倒すことが出来る解答を手に入れた。
〈これは作戦というには余りにもチャチなモノだ〉
〈こんなモノに命を懸けるのは馬鹿馬鹿しく思えてくる〉
まだ見えないが、階段を上がってくる音がする。
敬之は、震えた足を拳で叩き、無理やりに抑えた。
それでも冷や汗や心臓の爆音は一向に消えようとしない。
〈もしかしたら此処で死ぬかもしれない〉
〈こんな作戦、9割がた失敗に終わる〉
足音が近づく事にさえも心が焦る。
敬之は足元を滑らせた拍子に壁に軽く頭をぶつけた。
すると、死ぬ寸前でもないのに走馬燈の様に昔の思い出が頭の中に巡っていく。
それは風景の絵だけでなく、その時の心情も合わさっていた。
〈俺は平和な日常を退屈に思っていた筈だ〉
〈誰よりも、こんな世界で生き抜くことを望んでいた〉
心臓の爆音も空中に浮いているような感覚も少しずつ消え去っていく。
〈そうだ。死ぬことを恐れるな〉
〈死ぬ寸前の勝負こそが俺の望んだ世界だ〉
〈策を巡らせ、全てを賭けろ〉
〈そして、他者を殺して生きて行け〉
階段を上る足音が止まった。
敬之は口が勝手に、引きつったような笑みを浮かべる。
そして、女の方に振り返った。
「あいつを俺と一緒に倒さないか」
女は疑わしい目を向けながら、少しだけ後ろに下がる。
「あなたもゲームの参加者なんですか?」
「それは君もだろ。君を信用することはしないが、アイツは脅威でしかない」
「私はあなたを信用していいんですか?」
「君を殺してない。それだけで材料は十分だろ」
「それに、君もアイツは脅威なはずだ」
女は頭を縦に振って答える。
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